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第一章
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しおりを挟むこういう経緯があって俺は転生した。
特に不満もなかったので大人しく成長していた。
アルフェルトとアナスタシアが産まれてからは可愛い彼らの世話に明け暮れた。
そして、偶然の成り行きで今の愛馬たちを手にしているのだ。
実際、こんな馬たちを持っていると謀反を起こすのではないかと心配されるところだが、俺は自国の第一王子であるクラウドと幼馴染でしっかりとした信頼関係を築いている。
むしろ、子供時代にクラウドと共に過ごしていたので王様や王妃様にも子供のように思われている。
クラウドと一緒にイタズラをして叱られたり、冒険と称して駆けずり回って呆れられたり、剣術や魔術など勉強して褒められたり、たまに失敗して大目玉食らったり……何でだろう?泣けてきたぞ?
まぁ、そういう下地があるからこそ我が家というか俺は許されている。
実際、愛馬たちなんてカワイイものだ。
今向かっている僻地である魔の森は俺個人が国王様より頂いて所有している。
何せ、そこには俺の可愛いペットたちがいるんだ。
「カイト様」
「どうした?」
「アルフェルト様が…」
俺がアルフェルトを抱いている侍女の方を見ると目を覚ましたようで困惑した様子だ。
それもそうだろ。
屋敷で眠っていたのに目を覚ませば、林の中を突っ切っているのだから。
「アル」
「にいしゃま?」
「おいで、アル」
「あい」
俺は同乗していた使用人に手綱を渡し、アルフェルトを侍女から受け取った。
アルフェルトは俺に抱かれると不思議そうにしていた。
「にいしゃま、じょこかいきゅの?」
「ああ、兄様の森の家にね」
「もりのおうち?にゃんじぇ?」
したったらずな喋り方可愛すぎる!!
アルフェルトの可愛さにさっそく俺が悶えていると周りから生暖かいけどどこか呆れた様な、射す様な視線を複数感じた。
うん、現状アルフェルトの可愛さに悶えている場合ではない。
俺はアルフェルトの頭を撫でながらどう言うべきか考えた。
まだ幼いアルフェルトには絶縁された叔父に襲撃を受け、家と領地を乗っ取られようとしているなど分かるはずがない。
しかし、帰れない以上遊びに行くというのも違う。
第一、『遊びに行く』のなら急に決まったからと言ってアルフェルトやアナスタシアに何も言わずに強行するのもおかしい話だ。
両親がいないのも辻褄が合わない。
そうだ、両親が亡くなったことも説明しなくてはいけない。
情報量が多すぎる。
それにまだ屋敷の異変に気付いた叔父が追い付ける位置にいるのでアルフェルトに泣かれると居場所を知られてしまう。
「にいしゃま?」
「アル、今はまだ言えないけど落ち着いたら説明する。いい子だから寝ていような。まだ夜中だよ」
「……あい」
「いい子だ」
アルフェルトは不思議がりながらも言いつけを守るように眠りについた。
早急に魔の森に向かわなければいけない。
魔の森は基本的に誰も寄り付かない。
いや、寄り付けないのだ。
たとえ、俺たちがいると分かっていても踏み込める領域ではない。
それが俺が国王様から頂いた『魔の森』だ。
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