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第一章
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最後に来たのは大きな建物だ。
ここに近づいた辺りからアースたちの機嫌が悪い。
仕方無いのだが、居心地も悪い。
「空気が重い」
『何故ここに来たのだ?』
『本当です。こんな所に何の用があると言うのですか?』
『この様な所に貸しがあると言うのか?』
『まさか、手を貸したのですか?』
「…………そんなことはしてない」
そう、アースたちがここまで機嫌を悪くし、言葉に棘があるのはこの商会が悪い方で有名だからだ。
ここはザンザビール商会、奴隷や魔獣に魔物等を売買している所だ。
俺がここに貸しがあるのは事実だ。
偶然、助けた相手がここの商会長だっただけだ。
ここは大手でもあるので貸しを全部返して貰っても危なくはない。
危ないのはファルス商会のような中堅辺りのところや中途半端なところだ。
いつまでも気にしても仕方ないので進むことにした。
店の中に入ると俺は受付に向かい、許可証を見せた。
受付の者はそれを確認するとすぐに商会長を呼んだ。
「これは、これは、旦那様。いらっしゃいませ」
「ああ」
「本日は商売ですね」
「ああ。見繕って欲しい人材がいる」
「はい、勿論です。こちらへどうぞ」
俺はザンザビール商会の商会長であるザマス・ザンザビールについて応接室に通された。
こことは早目に手を切っておかないとアースたちの心証がよくない。
「では、どのような人材を?」
「建築関係に強い者が数名欲しい。あと、聞いたぞ。亜人族を手にしたそうだな」
「はい。偶然、機会に恵まれまして」
「そちらも見せて欲しい」
「了解しました」
ザマスは常に笑顔を張り付けており、本心を見抜くことができない。
鉄壁過ぎるのだ。
しかし、それがどの客に対してもなのである意味公平なのだ。
ザマスが連れてきたのは体格の良い人族の男が二人、ドワーフ族の男が三人、獣人族の男が三人、エルフ族の男女が四人だ。
俺はピクッと眉が一瞬上がった。
人族の男たちは建築関係に強いのだろう、それは希望通りだ。
わりと希望の職業に関係した者がいることは少ない。
その場合は入り次第、連絡をくれたりもする。
次に亜人であるドワーフ族は建築に限らず生産系に強い、獣人族は人族より身体能力に優れているのである意味希望通りだ。
だが、ここで問題なのはエルフ族だ。
男二人に女が二人なのだが……いや、正確には男の子が二人に女の子が二人だ。
建築どころか違法性を感じる。
これは、エルフ族に関しての頼み事だな。
貸しを返してもらおうとしてるんだが、相変わらずザマスは俺との縁を切る気がなさそうだ。
俺としては早々に切りたいのに。
「これはどういうつもりだ?」
「おや?旦那様にしては珍しいご質問ですね」
「はぁ~。ザマス、どこで手にした」
「他の奴隷商会です」
「…………つまり、このエルフの子供たちを保護しろと言うことか?お前に対しての貸しが増えるだけだぞ?」
「ええ、分かっています。ですが、こればかりは信頼できる方でないと」
「俺は慈善事業をしているわけではないのだが?」
「そちらも重々理解しているつもりです」
ザマスは俺に頭を下げた。
ザマスは胡散臭い張り付けた笑顔を消した。
つまり、本当の交渉はこれからだ。
「エルフ族の彼らは見ての通り違法奴隷です。彼らを捕まえていた奴隷商は既に捕縛、罰しました」
「そうか」
「他の奴隷たちはうちをはじめとした各奴隷商会に振り分けています。各々適正価格に変更し、既に完済された者などは訓練所に入りました」
「なるほど」
完済された借金奴隷は今後のために訓練所に入ってある程度生活できるようにしてから表に戻すことになっている。
勿論、買われて行った先なら継続雇用か、購入者が世話をすることになっている。
しかし、ここにいるエルフ族の子たちは意味が違う。
彼らは不当に連れ去られ、奴隷にされた子たちだ。
この場合は住んでいた所に返すのだが、それすら分からなかったのだろう。
もしくは一部のエルフ族にある外部に出たら帰還することが許されない掟もある。
「彼らは以前暮らしていた場所が判明しませんでした。それに森の奥にいたらしく里にはもう帰れないと言っているのです」
「両方か。なら、無理に里を探しても駄目か」
「はい、その可能性が高いでしょう。彼らに関しての書類にはターバナル大森林と書かれていました」
「その森林に住むエルフ族は排他的だ。森から出たらいかなる理由でも里に戻ることが許されていない」
最近のエルフ族は他者も受け入れているので、街中でエルフ族を見ることも多い。
あまり血が近すぎると良くないことが判明しているからだ。
まぁ、排他的な里のエルフ族でも他里のエルフを数年に何回か迎える風習もあるからその辺の問題は少ないのかもしれないが。
「分かった、彼らは保護しよう」
「よろしくお願い致します」
とりあえず、アルフェルトとアナスタシアの遊び相手にでもするか。
その後はまた考えよう。
ここに近づいた辺りからアースたちの機嫌が悪い。
仕方無いのだが、居心地も悪い。
「空気が重い」
『何故ここに来たのだ?』
『本当です。こんな所に何の用があると言うのですか?』
『この様な所に貸しがあると言うのか?』
『まさか、手を貸したのですか?』
「…………そんなことはしてない」
そう、アースたちがここまで機嫌を悪くし、言葉に棘があるのはこの商会が悪い方で有名だからだ。
ここはザンザビール商会、奴隷や魔獣に魔物等を売買している所だ。
俺がここに貸しがあるのは事実だ。
偶然、助けた相手がここの商会長だっただけだ。
ここは大手でもあるので貸しを全部返して貰っても危なくはない。
危ないのはファルス商会のような中堅辺りのところや中途半端なところだ。
いつまでも気にしても仕方ないので進むことにした。
店の中に入ると俺は受付に向かい、許可証を見せた。
受付の者はそれを確認するとすぐに商会長を呼んだ。
「これは、これは、旦那様。いらっしゃいませ」
「ああ」
「本日は商売ですね」
「ああ。見繕って欲しい人材がいる」
「はい、勿論です。こちらへどうぞ」
俺はザンザビール商会の商会長であるザマス・ザンザビールについて応接室に通された。
こことは早目に手を切っておかないとアースたちの心証がよくない。
「では、どのような人材を?」
「建築関係に強い者が数名欲しい。あと、聞いたぞ。亜人族を手にしたそうだな」
「はい。偶然、機会に恵まれまして」
「そちらも見せて欲しい」
「了解しました」
ザマスは常に笑顔を張り付けており、本心を見抜くことができない。
鉄壁過ぎるのだ。
しかし、それがどの客に対してもなのである意味公平なのだ。
ザマスが連れてきたのは体格の良い人族の男が二人、ドワーフ族の男が三人、獣人族の男が三人、エルフ族の男女が四人だ。
俺はピクッと眉が一瞬上がった。
人族の男たちは建築関係に強いのだろう、それは希望通りだ。
わりと希望の職業に関係した者がいることは少ない。
その場合は入り次第、連絡をくれたりもする。
次に亜人であるドワーフ族は建築に限らず生産系に強い、獣人族は人族より身体能力に優れているのである意味希望通りだ。
だが、ここで問題なのはエルフ族だ。
男二人に女が二人なのだが……いや、正確には男の子が二人に女の子が二人だ。
建築どころか違法性を感じる。
これは、エルフ族に関しての頼み事だな。
貸しを返してもらおうとしてるんだが、相変わらずザマスは俺との縁を切る気がなさそうだ。
俺としては早々に切りたいのに。
「これはどういうつもりだ?」
「おや?旦那様にしては珍しいご質問ですね」
「はぁ~。ザマス、どこで手にした」
「他の奴隷商会です」
「…………つまり、このエルフの子供たちを保護しろと言うことか?お前に対しての貸しが増えるだけだぞ?」
「ええ、分かっています。ですが、こればかりは信頼できる方でないと」
「俺は慈善事業をしているわけではないのだが?」
「そちらも重々理解しているつもりです」
ザマスは俺に頭を下げた。
ザマスは胡散臭い張り付けた笑顔を消した。
つまり、本当の交渉はこれからだ。
「エルフ族の彼らは見ての通り違法奴隷です。彼らを捕まえていた奴隷商は既に捕縛、罰しました」
「そうか」
「他の奴隷たちはうちをはじめとした各奴隷商会に振り分けています。各々適正価格に変更し、既に完済された者などは訓練所に入りました」
「なるほど」
完済された借金奴隷は今後のために訓練所に入ってある程度生活できるようにしてから表に戻すことになっている。
勿論、買われて行った先なら継続雇用か、購入者が世話をすることになっている。
しかし、ここにいるエルフ族の子たちは意味が違う。
彼らは不当に連れ去られ、奴隷にされた子たちだ。
この場合は住んでいた所に返すのだが、それすら分からなかったのだろう。
もしくは一部のエルフ族にある外部に出たら帰還することが許されない掟もある。
「彼らは以前暮らしていた場所が判明しませんでした。それに森の奥にいたらしく里にはもう帰れないと言っているのです」
「両方か。なら、無理に里を探しても駄目か」
「はい、その可能性が高いでしょう。彼らに関しての書類にはターバナル大森林と書かれていました」
「その森林に住むエルフ族は排他的だ。森から出たらいかなる理由でも里に戻ることが許されていない」
最近のエルフ族は他者も受け入れているので、街中でエルフ族を見ることも多い。
あまり血が近すぎると良くないことが判明しているからだ。
まぁ、排他的な里のエルフ族でも他里のエルフを数年に何回か迎える風習もあるからその辺の問題は少ないのかもしれないが。
「分かった、彼らは保護しよう」
「よろしくお願い致します」
とりあえず、アルフェルトとアナスタシアの遊び相手にでもするか。
その後はまた考えよう。
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