家族と婚約者に冷遇された令嬢は……でした

桜月雪兎

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国王陛下が謝っている相手は一体誰でしょう?
いえ、名前は分かっています、先程国王陛下が「ヴォルグレット・マンサール卿」と仰っていましたから。

しかし、何でしょう?
マンサール卿は私の事を「エリアンティーヌ」と言いましたよね?
お母様の事も「マリリン」と言いましたよね?

国王陛下が謝罪をされるような方に私たち母娘おやこが敬称をつけて呼ばれるような事など思い至りません。

私とフォルクスはアイザック様とフレデリック様の背に庇われながら様子を見ています。
大きな安心感を得たことで私は周りを観察し、考察する余裕ができました。

落ち着いて周りを見ますと上位貴族、それも王城内で働かれるような方々ほど顔色がよろしくありませんね。

マンサール卿は厳しい表情をされています。
マンサール卿の服装は騎士服、軍服のようですし、幾つかの勲章も付けられていますから軍事関係の方なのでしょうがそれだけでは我が国の国王陛下が謝罪するのはあまり普通ではありませんよね?

いえ、他国の軍事関係、それも上位の方ならあり得ますね。
それも我が国より上位の国になれば尚更。
また、「マンサール」と呼ばれていますから上位貴族でもあるのでしょう。
そうなれば尚更国王陛下の対応に納得できます。

……ん?
では、マンサール卿が私たち母娘おやこを敬称で呼ぶのは何故でしょう?
そこまで考えると自然と導き出された答えはお母様が他国の大商会の娘と言うのが偽りという事です。

お母様は他国の方、その他国が我が国より上位の国なのでしょう。
そして、どういう訳か身分を大商会の娘、平民と偽ったのでしょう。
確かに大商会の娘というわりにお母様は貴族のマナーや口調等もしっかりとされていましたし、何より様々な学問に精通され領地経営などもされていました。
勿論、暖簾分けされた商会のお仕事もされていたようです。
現在、その商会は私が引き継いでいます。
だから、私はお母様が大商会の娘と言うのに疑問を持っていなかったのです。

ですが、考えてみればお母様や私の面倒を見て下さっている侍女や従者たちを20年近く雇い続けれるものでしょうか?
いくら大商会と言えど。
それにその数は伯爵家の半数です。
侍女に御者、庭師など貴族屋敷で雇われる一通りの方々が揃っています。
誰一人欠けることなく、20年近くです。
正直無理だと思います。
商会で働く方々とは別にですし、そういう方は貴族家の出身の方もいますので。
そうなれば雇われている貴族家出身の方より上位でなければその家の恥になります。
それにマンサール卿の言葉から予測されるのはマンサール卿と同等か上位の貴族家の出身となります。

そんな事があり得るのでしょうか?
私が貴族子女が通う王立サファイア学園や王子妃教育で学んだ事を照らし合わせますと「ヴォルグレット・マンサール卿」は隣国、それも海を隔てた隣の大陸唯一の国である統一国家ドラゴニス王国の上位貴族「マンサール侯爵家」の次期侯爵でドラゴニス王国が誇る竜騎士団に所属される方であった筈です。

そういえば、我が国にはドラゴニス王国から竜騎士団を借り受けていると習いましたね。
所属事態はドラゴニス王国で派遣されていると。
マンサール卿はその竜騎士団を預かる方なのかもしれません。
ですので、このパーティーは正装である騎士服を着ているのでしょう。

そこまで考えるとマンサール卿がこちらを向きまして目が合いました。
マンサール卿はまっすぐと私たちの方に向かってこられました。
い、一体どうしたのでしょうか?
何があるというのですか?!

私は怖くなってついアイザック様の服の裾を掴んでしまいました。
反対の手はフォルクスと相変わらず繋いでいます。

アイザック様は私を安心させるようにアイザック様の服の裾を掴んでいる手を軽く握ってくださいました。
フレデリック様は更に私たちを守るように立ち位置を変えられました。

私たちの(一番前にいるフレデリック様のですが)一歩前まで来たマンサール卿は形の良い片眉を上げましたが、私が怯えているのを理解されたようでふっと苦笑されてから片膝を着かれて臣下の礼をとられました。

って、ええええーーーーー?!!

な、何故、臣下の礼をとるのですか?!
これ、アイザック様やフレデリック様にではないですよね?!

だって、国王陛下にあれだけ厳しい表情と態度をしていましたのにそのご子息であるアイザック様やフレデリック様にとるとは思えませんもの。
アイザック様もフレデリック様も困惑しています。
フォルクスはキョトンとしていますね。
可愛らしくて少し和み、落ち着きました。

「エリアンティーヌ様、お久しゅうございます。と言いましてもお会いしましたのはお産まれになられた時ですのでご記憶にはないかもしれませんが」
「は、はい。すみません、マンサール様」
「いえ、仕方ないことです。それと、エリアンティーヌ様は私たちの仕えるべき、お守りするべきお方。そのように畏まらないで下さい」
「いえ、私はしがない伯爵令嬢です。只今、婚約破棄を宣言された」
「「「「「「「っ!」」」」」」」
「「「「「……?」」」」」
「「「「…………」」」」
「…………」
「え?」

何でしょう?
一部の上位貴族の方々は更に青ざめ、いえ、白くなられている方もいますね。
その他の貴族の方は現在の状況が理解できないようで困惑していますね、私もです。
ご子息やご令嬢は展開が二転三転しているのでついていけたないのか不思議そうです、フォルクスもそんな感じです。
国王陛下と王妃陛下にアイザック様やフレデリック様は冷や汗をかいています、何故でしょうか?

ちなみにアバント伯爵とナディア様は私を睨んでいます、何故睨まれないといけないのでしょうか?
第一王子様とサリフィア様は開いたお口が塞がらないようですが、見苦しいので閉じてください、本当に。

第一王子様は同じ王族ですのに違う反応ですけど?
先程、国王陛下に説明されていると言われていましたのに私同様理解していないようですけど、大丈夫でしょうか?

あ、ああ、マンサール様のお顔が怖いです。

な、何だが悪寒と危機感と恐怖を感じます。
フォルクスは私が守りませんと!
で、でも、やはり怖いです……アイザック様、フレデリック様、お母様、どうすれば良いのでしょう。











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