113 / 118
番外
ジルフォードの恋⑤
しおりを挟む
その晩、ジルフォードに屋敷時運ばれたリリアはマリアと屋敷の侍女たちによって身を清められ、マリアの部屋で休んだ。その頃にはだいぶ落ち着いて、マリアと話ができていた。
クレアはすぐにアリシアとルドワードの元に向かい、事情を話した。
二人とも驚いていたがリリアが無事なのを知って少し安心した。
「では、リリアはマリアと一緒にいるんですね」
「はい」
「そうか。それで加害者は?」
「それは…うちの次男ですか?それとも捕えた男たちですか?」
「捕えた方だ。ジルフォードは過剰防衛になるかもしれんが守った方だからな」
「はい。捕えた者たちはうちの座敷牢にいます」
「分かった。明日、リリアとは時間を分けて護送しろ」
「はい」
「クレア、お願いします」
「ジルフォードに話も聞きたい。連れてくるように」
「はい」
クレアは一礼して退出した。
翌日、リリアはマリアとジルフォードと一緒に城に戻った。
三人はアリシアたちが待つ竜王・竜王妃の自室に向かった。門前にジャックスが待っており、案内されたのだ。
室内に入るとルドワードにアリシア、エレナにミナが待っていた。リリアはアリシア、エレナ、ミナの顔を見て駆け寄った。アリシアがリリアを抱きしめた。
「アリシア様~」
「リリア、もう大丈夫ですよ」
「はい」
「エレナ、ミナ、リリアを向こうで休ませてあげて下さい」
「「はい」」
「二人はそのまま付き添ってあげて」
「「はい」」
エレナとミナはリリアの手を取りながら侍女たちの部屋に行った。
そこに残ったアリシアとルドワード、マリアにジルフォードはリリアたちがいなくなったのを確認してから話し始めた。
「まずはジルフォードさん、リリアを助けて下さりありがとうございます」
「いえ。リリアさんが名代で残られていたのは知っていましたのに、一人で返してしまったこちらのミスです」
「いいえ、リリアのことです。迷惑をかけないようにと一人先に出たのでしょう」
「……」
「ジルフォード。お前が気付かなければリリアはもっとひどい目に合っていただろう。まずはそうならなかったことを良しとしろ」
「……はい」
ジルフォードは得心がいかなかったが自国の王に言われれば受け入れるしかない。
そんなジルフォードの姿にアリシアは苦笑した。
二人はクレアに大体の話は聞いていた。それでも二人は唯一リリアの声に気付いた時のことが知りたいのだ。
「ジルフォード」
「はい」
「大体の話はクレアから聞いている」
「はい」
「ですが、リリアが襲われたところから公園までは距離があると聞きました。どうして気づいたのですか?」
「……なんだか、リリアさんの声が聞こえた気がしたんです」
「リリアの声が?」
「はい。それで、なんだか胸騒ぎがして」
「向かったのですね」
「はい」
ジルフォードは悔しそうな顔をした。
アリシアはそんなジルフォードを見てなんとなく思った。そしてそのまま口にしてしまった。
「ジルフォードさんはリリアのことが好きなんですか?」
「っっ!!」
「え?そうなの?ジル兄」
「そうなのか?」
「……はい」
ジルフォードはアリシアとルドワードに聞かれ、早々に観念して肯定した。
「最初は普通に本の貸し借りや話をするのが楽しかったんです」
「はい」
「リリアさんのように飽きずに話をしてくれる人はいなかったので」
「そうか」
「気持ちに気づいたのはそれこそ、リリアさんを助けに行ったときでした」
「え?」
「頭に血が昇って、真っ白になって、あいつらを殺したくなった、リリアさんを守れなかった自分が許せない。そして気づいた、リリアさんのことが好きだって、ちゃんと守りたかったて」
「そうですか」
「はい」
「今はムリでしょうがリリアが落ち着いたら、その気持ちを伝えてあげてください」
「アリシア様?」
「リリアは私でもマリアでもジャックス隊長でも、誰でもなくあなたに助けを求めました」
「…………」
「だから、その気持ちを伝えて下さい」
「はい」
「ありがとうございます」
アリシアはジルフォードにお願いした。
アリシアにはなんとなく今回の事で二人が自身の想いに気付いたと思った。辛い思いをしたからこそ幸せになって欲しいという気持ちが強くなった。
ジルフォードならリリアを大切にしてくれる気がしたのだ。
アリシアの思いを受けてジルフォードは頷いた。
大分時間がたって、クレアに護送された男たちは謁見の間でルドワードと対面した。
この場にアリシアがいないのは大事をとってという意味もあるが、アリシアも過去に同じような思いをしているのでルドワードが立ち会わせたくなかったのだ。
アリシアはそんなルドワードの気持ちを嬉しく思い、リリアと一緒にいることにした。
ジルフォードは当事者の代表として立ち会った。クレアというストッパー付きで。
「……それではお前たちは偶然見かけた侍女を狙ったと」
「はい」
「それにしては用意周到だな」
「といいますと?」
「なぜ、魔力封じのブレスレットがあるのだ?」
「それは……」
「誰の差し金だ?このブレスレットは相当の財力がないと手に入らない」
「…っ!」
「すぐに調べはつくんだぞ」
「っ!…実は……」
男たちは自分たちの首謀者を告げた。
クレアはすぐにアリシアとルドワードの元に向かい、事情を話した。
二人とも驚いていたがリリアが無事なのを知って少し安心した。
「では、リリアはマリアと一緒にいるんですね」
「はい」
「そうか。それで加害者は?」
「それは…うちの次男ですか?それとも捕えた男たちですか?」
「捕えた方だ。ジルフォードは過剰防衛になるかもしれんが守った方だからな」
「はい。捕えた者たちはうちの座敷牢にいます」
「分かった。明日、リリアとは時間を分けて護送しろ」
「はい」
「クレア、お願いします」
「ジルフォードに話も聞きたい。連れてくるように」
「はい」
クレアは一礼して退出した。
翌日、リリアはマリアとジルフォードと一緒に城に戻った。
三人はアリシアたちが待つ竜王・竜王妃の自室に向かった。門前にジャックスが待っており、案内されたのだ。
室内に入るとルドワードにアリシア、エレナにミナが待っていた。リリアはアリシア、エレナ、ミナの顔を見て駆け寄った。アリシアがリリアを抱きしめた。
「アリシア様~」
「リリア、もう大丈夫ですよ」
「はい」
「エレナ、ミナ、リリアを向こうで休ませてあげて下さい」
「「はい」」
「二人はそのまま付き添ってあげて」
「「はい」」
エレナとミナはリリアの手を取りながら侍女たちの部屋に行った。
そこに残ったアリシアとルドワード、マリアにジルフォードはリリアたちがいなくなったのを確認してから話し始めた。
「まずはジルフォードさん、リリアを助けて下さりありがとうございます」
「いえ。リリアさんが名代で残られていたのは知っていましたのに、一人で返してしまったこちらのミスです」
「いいえ、リリアのことです。迷惑をかけないようにと一人先に出たのでしょう」
「……」
「ジルフォード。お前が気付かなければリリアはもっとひどい目に合っていただろう。まずはそうならなかったことを良しとしろ」
「……はい」
ジルフォードは得心がいかなかったが自国の王に言われれば受け入れるしかない。
そんなジルフォードの姿にアリシアは苦笑した。
二人はクレアに大体の話は聞いていた。それでも二人は唯一リリアの声に気付いた時のことが知りたいのだ。
「ジルフォード」
「はい」
「大体の話はクレアから聞いている」
「はい」
「ですが、リリアが襲われたところから公園までは距離があると聞きました。どうして気づいたのですか?」
「……なんだか、リリアさんの声が聞こえた気がしたんです」
「リリアの声が?」
「はい。それで、なんだか胸騒ぎがして」
「向かったのですね」
「はい」
ジルフォードは悔しそうな顔をした。
アリシアはそんなジルフォードを見てなんとなく思った。そしてそのまま口にしてしまった。
「ジルフォードさんはリリアのことが好きなんですか?」
「っっ!!」
「え?そうなの?ジル兄」
「そうなのか?」
「……はい」
ジルフォードはアリシアとルドワードに聞かれ、早々に観念して肯定した。
「最初は普通に本の貸し借りや話をするのが楽しかったんです」
「はい」
「リリアさんのように飽きずに話をしてくれる人はいなかったので」
「そうか」
「気持ちに気づいたのはそれこそ、リリアさんを助けに行ったときでした」
「え?」
「頭に血が昇って、真っ白になって、あいつらを殺したくなった、リリアさんを守れなかった自分が許せない。そして気づいた、リリアさんのことが好きだって、ちゃんと守りたかったて」
「そうですか」
「はい」
「今はムリでしょうがリリアが落ち着いたら、その気持ちを伝えてあげてください」
「アリシア様?」
「リリアは私でもマリアでもジャックス隊長でも、誰でもなくあなたに助けを求めました」
「…………」
「だから、その気持ちを伝えて下さい」
「はい」
「ありがとうございます」
アリシアはジルフォードにお願いした。
アリシアにはなんとなく今回の事で二人が自身の想いに気付いたと思った。辛い思いをしたからこそ幸せになって欲しいという気持ちが強くなった。
ジルフォードならリリアを大切にしてくれる気がしたのだ。
アリシアの思いを受けてジルフォードは頷いた。
大分時間がたって、クレアに護送された男たちは謁見の間でルドワードと対面した。
この場にアリシアがいないのは大事をとってという意味もあるが、アリシアも過去に同じような思いをしているのでルドワードが立ち会わせたくなかったのだ。
アリシアはそんなルドワードの気持ちを嬉しく思い、リリアと一緒にいることにした。
ジルフォードは当事者の代表として立ち会った。クレアというストッパー付きで。
「……それではお前たちは偶然見かけた侍女を狙ったと」
「はい」
「それにしては用意周到だな」
「といいますと?」
「なぜ、魔力封じのブレスレットがあるのだ?」
「それは……」
「誰の差し金だ?このブレスレットは相当の財力がないと手に入らない」
「…っ!」
「すぐに調べはつくんだぞ」
「っ!…実は……」
男たちは自分たちの首謀者を告げた。
12
あなたにおすすめの小説
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる