竜王の花嫁

桜月雪兎

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番外

ジルフォードの恋⑤

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 その晩、ジルフォードに屋敷時運ばれたリリアはマリアと屋敷の侍女たちによって身を清められ、マリアの部屋で休んだ。その頃にはだいぶ落ち着いて、マリアと話ができていた。
 クレアはすぐにアリシアとルドワードの元に向かい、事情を話した。
 二人とも驚いていたがリリアが無事なのを知って少し安心した。
「では、リリアはマリアと一緒にいるんですね」
「はい」
「そうか。それで加害者は?」
「それは…うちの次男ですか?それとも捕えた男たちですか?」
「捕えた方だ。ジルフォードは過剰防衛になるかもしれんが守った方だからな」
「はい。捕えた者たちはうちの座敷牢にいます」
「分かった。明日、リリアとは時間を分けて護送しろ」
「はい」
「クレア、お願いします」
「ジルフォードに話も聞きたい。連れてくるように」
「はい」
 クレアは一礼して退出した。

 翌日、リリアはマリアとジルフォードと一緒に城に戻った。
 三人はアリシアたちが待つ竜王・竜王妃の自室に向かった。門前にジャックスが待っており、案内されたのだ。
 室内に入るとルドワードにアリシア、エレナにミナが待っていた。リリアはアリシア、エレナ、ミナの顔を見て駆け寄った。アリシアがリリアを抱きしめた。
「アリシア様~」
「リリア、もう大丈夫ですよ」
「はい」
「エレナ、ミナ、リリアを向こうで休ませてあげて下さい」
「「はい」」
「二人はそのまま付き添ってあげて」
「「はい」」
 エレナとミナはリリアの手を取りながら侍女たちの部屋に行った。
 そこに残ったアリシアとルドワード、マリアにジルフォードはリリアたちがいなくなったのを確認してから話し始めた。
「まずはジルフォードさん、リリアを助けて下さりありがとうございます」
「いえ。リリアさんが名代で残られていたのは知っていましたのに、一人で返してしまったこちらのミスです」
「いいえ、リリアのことです。迷惑をかけないようにと一人先に出たのでしょう」
「……」
「ジルフォード。お前が気付かなければリリアはもっとひどい目に合っていただろう。まずはそうならなかったことを良しとしろ」
「……はい」
 ジルフォードは得心がいかなかったが自国の王に言われれば受け入れるしかない。
 そんなジルフォードの姿にアリシアは苦笑した。
 二人はクレアに大体の話は聞いていた。それでも二人は唯一リリアの声に気付いた時のことが知りたいのだ。
「ジルフォード」
「はい」
「大体の話はクレアから聞いている」
「はい」
「ですが、リリアが襲われたところから公園までは距離があると聞きました。どうして気づいたのですか?」
「……なんだか、リリアさんの声が聞こえた気がしたんです」
「リリアの声が?」
「はい。それで、なんだか胸騒ぎがして」
「向かったのですね」
「はい」
 ジルフォードは悔しそうな顔をした。
 アリシアはそんなジルフォードを見てなんとなく思った。そしてそのまま口にしてしまった。
「ジルフォードさんはリリアのことが好きなんですか?」
「っっ!!」
「え?そうなの?ジル兄」
「そうなのか?」
「……はい」
 ジルフォードはアリシアとルドワードに聞かれ、早々に観念して肯定した。
「最初は普通に本の貸し借りや話をするのが楽しかったんです」
「はい」
「リリアさんのように飽きずに話をしてくれる人はいなかったので」
「そうか」
「気持ちに気づいたのはそれこそ、リリアさんを助けに行ったときでした」
「え?」
「頭に血が昇って、真っ白になって、あいつらを殺したくなった、リリアさんを守れなかった自分が許せない。そして気づいた、リリアさんのことが好きだって、ちゃんと守りたかったて」
「そうですか」
「はい」
「今はムリでしょうがリリアが落ち着いたら、その気持ちを伝えてあげてください」
「アリシア様?」
「リリアは私でもマリアでもジャックス隊長でも、誰でもなくあなたに助けを求めました」
「…………」
「だから、その気持ちを伝えて下さい」
「はい」
「ありがとうございます」
 アリシアはジルフォードにお願いした。
 アリシアにはなんとなく今回の事で二人が自身の想いに気付いたと思った。辛い思いをしたからこそ幸せになって欲しいという気持ちが強くなった。
 ジルフォードならリリアを大切にしてくれる気がしたのだ。
 アリシアの思いを受けてジルフォードは頷いた。

 大分時間がたって、クレアに護送された男たちは謁見の間でルドワードと対面した。
 この場にアリシアがいないのは大事をとってという意味もあるが、アリシアも過去に同じような思いをしているのでルドワードが立ち会わせたくなかったのだ。
 アリシアはそんなルドワードの気持ちを嬉しく思い、リリアと一緒にいることにした。
 ジルフォードは当事者の代表として立ち会った。クレアというストッパー付きで。
「……それではお前たちは偶然見かけた侍女を狙ったと」
「はい」
「それにしては用意周到だな」
「といいますと?」
「なぜ、魔力封じのブレスレットがあるのだ?」
「それは……」
「誰の差し金だ?このブレスレットは相当の財力がないと手に入らない」
「…っ!」
「すぐに調べはつくんだぞ」
「っ!…実は……」
男たちは自分たちの首謀者を告げた。
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