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第一章
46、披露宴パーティー⑤
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二人が一曲踊り終わると拍手が起こった。
そしてまた違った曲が流れ、そこからは他のパートナーたちも混ざって再度踊り出した。
披露宴の余興に一つなのだ。皆が楽しめるようになっているのだろう、そしてここで新たなカップルができることもある。
スカルディアは近くにいたアルシードの方に向かって耳打ちした。
「アル」
「スカル?どうした?」
「兄貴たちも踊ってるし、他の近衛隊員だって踊っているんだ。踊ってくればいいだろ?」
アルシードは急に踊りに行けというこの悪友に首を傾げた。
そこまで披露する腕前でもないのになぜ行かないといけないのか分からないと思ったのだ。
「俺は踊りが得意ではない」
「不得意でもないだろ」
スカルディアがなぜここまで踊りに行けと進めるのかアルシードには分からなかった。
そんな表情が見てとれてスカルディアはため息をついた。
「相手もいないのに行けるか」
「相手ならいるだろ」
「どこに?」
「あそこ」
スカルシアの指した所にはリリアとリンがいた。二人は楽しそうに話をしているようだ。それを見たアルシードは顔がほてるのを感じた。
確実にこの悪友であるスカルディアにばれているのだ。
「な、何を言って……」
「リンと踊ってくればいい。せっかくリンたちだってめかし込んでいるんだ。一言褒めに行ってもいいだろ」
「スカルディア様の言うとおりだぞ、アルシード」
「ジャックス隊長!」
「好いた相手がいるのなら今行かなくてどうする。行ってこい」
「シリウス陛下まで」
まさか上司であるジャックスやシリウスまでに言われるとは思わず、アルシードは困惑した。
そうしているとリンたちの方を見ていたルークが進言した。
「ほら、早く行かないと他の人に先を越されますよ」
「え?」
アルシードがリンたちの方を見ると数人の男にダンスを申し込まれているリンの姿があった。
いつの間にかリリアはその場を後にし、離れた所でエレナたちと次の準備に取り掛かっているようだ。
一人残されたリンは困惑しながら断りきれないようであった。
もちろん、想い人のそんな姿は見たくないものでアルシードは無言のまま、一度礼をしてその場を離れた。
「手のかかる」
「ですが、よかったのですか?スカルディア様」
「何がだ?」
「アルシードに相手ができても」
「何も不都合はないだろ、あいつとは付き合いが長い分幸せになって欲しいしな。リンは悪い奴じゃない。今まで見ているんだ、分かる」
「それもそうですね」
四人ともがアルシードの行動に苦笑しながら見ていた。
アルシードが近づくとよく素性が見れる。
寄ってきている男は貴族が多いがアルシードも貴族の端くれ、ドラグーンの中でも歴史の長いグレイ伯爵家の長男だ、今は近衛隊副隊長をしていてもいまだに継承権を持っているのだ。
アルシードは申し込んでいるというか、迫っている面々を見て心で笑った。
多くが継承権の薄い男爵家・子爵家の三男以降の者だ、リンが断らない限りアルシードに軍配が上がる。
「いいだろ、俺と一緒に」
「いや、俺と」
「い、いえ、ですから……」
「リン」
「アルシード様!?」
「っっ!!」
「失礼。リン、俺と一緒に踊ってくれないか?」
アルシードは一応礼儀として断りを入れ、片膝をついてからリンの右手を取り、ダンスを申し込んだ。
急のアルシードのその行動にリンは顔を真っ赤にしながらも、想い人が助けてくれ、あまつさえダンスに誘ってくれているのだ。女性として嬉しい限りだ。
「は、はい。アルシード様」
「ありがとう」
リンが了承の意を告げるとアルシードは微笑み、リンの右手の指先にお礼のキスをしてダンス会場の方にエスコートした。
振り返って負けた面々に勝ち誇ったような笑みを向けて。負けた面々は悔しそうにしていた。
それを玉座で見ていた四人は呆れていた。
「あそこまでするか?」
「気障ですね」
「なかなかやるなぁ」
「絶対に勝ち誇ったように見ているぞ、あれは」
それぞれの感想はそんな感じだ。
アルシードたちもダンスメンバーに混ざり、踊り始めた。そうしていると踊りに合わせてルドワードたちが近づいてきた。
「リン!」
「アリシア様」
「ああ、きたな。アルシード」
「はい、竜王様」
「上でじっとしているから来ないのかと心配したぞ」
「まぁ、その」
「はは、今宵は楽しめ。皆楽しんでいる」
「はい」
四人はそんな短い会話をしながら踊っていた。
そしてまた違った曲が流れ、そこからは他のパートナーたちも混ざって再度踊り出した。
披露宴の余興に一つなのだ。皆が楽しめるようになっているのだろう、そしてここで新たなカップルができることもある。
スカルディアは近くにいたアルシードの方に向かって耳打ちした。
「アル」
「スカル?どうした?」
「兄貴たちも踊ってるし、他の近衛隊員だって踊っているんだ。踊ってくればいいだろ?」
アルシードは急に踊りに行けというこの悪友に首を傾げた。
そこまで披露する腕前でもないのになぜ行かないといけないのか分からないと思ったのだ。
「俺は踊りが得意ではない」
「不得意でもないだろ」
スカルディアがなぜここまで踊りに行けと進めるのかアルシードには分からなかった。
そんな表情が見てとれてスカルディアはため息をついた。
「相手もいないのに行けるか」
「相手ならいるだろ」
「どこに?」
「あそこ」
スカルシアの指した所にはリリアとリンがいた。二人は楽しそうに話をしているようだ。それを見たアルシードは顔がほてるのを感じた。
確実にこの悪友であるスカルディアにばれているのだ。
「な、何を言って……」
「リンと踊ってくればいい。せっかくリンたちだってめかし込んでいるんだ。一言褒めに行ってもいいだろ」
「スカルディア様の言うとおりだぞ、アルシード」
「ジャックス隊長!」
「好いた相手がいるのなら今行かなくてどうする。行ってこい」
「シリウス陛下まで」
まさか上司であるジャックスやシリウスまでに言われるとは思わず、アルシードは困惑した。
そうしているとリンたちの方を見ていたルークが進言した。
「ほら、早く行かないと他の人に先を越されますよ」
「え?」
アルシードがリンたちの方を見ると数人の男にダンスを申し込まれているリンの姿があった。
いつの間にかリリアはその場を後にし、離れた所でエレナたちと次の準備に取り掛かっているようだ。
一人残されたリンは困惑しながら断りきれないようであった。
もちろん、想い人のそんな姿は見たくないものでアルシードは無言のまま、一度礼をしてその場を離れた。
「手のかかる」
「ですが、よかったのですか?スカルディア様」
「何がだ?」
「アルシードに相手ができても」
「何も不都合はないだろ、あいつとは付き合いが長い分幸せになって欲しいしな。リンは悪い奴じゃない。今まで見ているんだ、分かる」
「それもそうですね」
四人ともがアルシードの行動に苦笑しながら見ていた。
アルシードが近づくとよく素性が見れる。
寄ってきている男は貴族が多いがアルシードも貴族の端くれ、ドラグーンの中でも歴史の長いグレイ伯爵家の長男だ、今は近衛隊副隊長をしていてもいまだに継承権を持っているのだ。
アルシードは申し込んでいるというか、迫っている面々を見て心で笑った。
多くが継承権の薄い男爵家・子爵家の三男以降の者だ、リンが断らない限りアルシードに軍配が上がる。
「いいだろ、俺と一緒に」
「いや、俺と」
「い、いえ、ですから……」
「リン」
「アルシード様!?」
「っっ!!」
「失礼。リン、俺と一緒に踊ってくれないか?」
アルシードは一応礼儀として断りを入れ、片膝をついてからリンの右手を取り、ダンスを申し込んだ。
急のアルシードのその行動にリンは顔を真っ赤にしながらも、想い人が助けてくれ、あまつさえダンスに誘ってくれているのだ。女性として嬉しい限りだ。
「は、はい。アルシード様」
「ありがとう」
リンが了承の意を告げるとアルシードは微笑み、リンの右手の指先にお礼のキスをしてダンス会場の方にエスコートした。
振り返って負けた面々に勝ち誇ったような笑みを向けて。負けた面々は悔しそうにしていた。
それを玉座で見ていた四人は呆れていた。
「あそこまでするか?」
「気障ですね」
「なかなかやるなぁ」
「絶対に勝ち誇ったように見ているぞ、あれは」
それぞれの感想はそんな感じだ。
アルシードたちもダンスメンバーに混ざり、踊り始めた。そうしていると踊りに合わせてルドワードたちが近づいてきた。
「リン!」
「アリシア様」
「ああ、きたな。アルシード」
「はい、竜王様」
「上でじっとしているから来ないのかと心配したぞ」
「まぁ、その」
「はは、今宵は楽しめ。皆楽しんでいる」
「はい」
四人はそんな短い会話をしながら踊っていた。
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