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第一章
50、月下の誓い②
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ルドワードとアリシアは月夜に輝く中庭に出た。
そこは少し肌寒く、ルドワードはすぐに自身のマントをアリシアにかけた。
するとアリシアは小さく笑い、ルドワードは首を傾げた。
「シア?」
「ふふ、すみません。あの時みたいでしたので」
「あの時?」
「私がここに来てすぐのことです。あの時もこのように部屋に戻る前に私のわがままで中庭に出ました」
「ああ、そうだったな」
アリシアの言うとおり、アリシアがドラグーンに来てすぐのことだ。アリシアが不意に目に入った中庭を気に入り、ルドワードに言って中庭に出た。
その時に『花嫁』のことを気にしたアリシアがルドワードに尋ねた。アリシアにとって初めての感情が芽生え、互いを想い合うきっかけになったような出来事だ。
その時もとても明るい月夜だった。
今宵は満月でさらに明るくも優しい月光に照らされている。
ルドワードはあの時同様に花を愛でるアリシアを優しく見ていたが意を決してアリシアに声をかけた。
「シア」
「はい?」
「こっちに来てくれ」
「ルド様?……分かりました」
アリシアは首を傾げたがルドワードの真剣な表情について行くことにした。
ルドワードはアリシアの手を握り、東屋より先の開けた場所に向かった。そこは花々に囲まれながらもある程度の広さを有している。
ガーデンテーブルやチェアーなどを十個近く持ってきてパーティーも開けそうなほどはある。
ルドワードはそこにつくとアリシアと向かい合った。
急に真剣な表情をするルドワードにアリシアは首を傾げた。
「ルド様?どうかなさいましたか?」
「シア、俺たち竜の亜人にはもう一つの姿がある」
「もう一つの姿ですか?」
「そうだ。隠し事は無くしたい、シアにはもう一つの姿も知っていて欲しい」
「はい」
ルドワードはアリシアの返事を聞くと背中から羽をだし、それで自身の姿を包んだ。するとルドワードの周りに風が舞い吹き、その姿が見えなくなった。
アリシアはそれをじっと見ていた。そのすべてを見ようとして。
風がやむとそこには月光に照らされ、青く反射しながらも綺麗な濡れ羽色をした鱗や羽に同色の毛が尻尾の先や頭部からその長い首筋にかけてあり、頭部にある角や爪に牙が象牙のような乳白色をしている。その瞳は鋭くも甘い蜂蜜のような優しい色をしている体長3mはある竜がいた。
それこそがルドワードのもう一つの竜としての姿だ。
アリシアはその姿に見惚れていた。
「シア、怖いか?」
「いいえ、ルド様。とても美しく思います」
「ありがとう」
アリシアの言葉にルドワードは嬉しくなった。普段は人の姿をしているが竜の一族だけこの姿になる。そして、この遺伝子はどの種族と交わっても優先的に出る。そしてその力も半端ない、それがこの地の王が竜王となった所以でもある。
すべての圧倒的な力と優性遺伝子がこの国を支える基盤となり、この国の王を竜王とした。
竜族のすべてが同族と交わったわけではない、優先的に出るため王の子が竜となってきたがゆえにただの『王』ではなく、『竜王』としたのだ。
「シア、アリシア」
「はい?」
「俺は誓う。太陽と月が出ずる限り、大樹が実りを続ける限り、すべてのものが息づく限り、俺の命が続く限り、アリシアを愛しぬくと」
「ルド様……」
「これは我が一族に伝わる誓いの言葉。自身の全てをかけて愛するたった一人にのみ誓う言葉だ」
ルドワードはアリシアだけを愛することをこの世のすべてに誓った。
王侯貴族には側室を持つことが普通に見受けられるがそれでも正妃だけを、本妻だけを愛し、他の者を娶らない誓いをする者もいる。
その誓いの言葉はその家系で違うが竜王家に伝わるのはこの言葉だ。
つまりルドワードは本当にアリシアだけを愛し、他を求めないと誓った。
アリシアにもそのことが伝わり、アリシアは嬉しくて涙を流した。
「はい、はい、ルド様。私も誓います。ルド様だけを愛します」
「ああ、ありがとう」
二人は満月の照らされる中庭で再度、二人だけで誓いの言葉を交わした。
互いだけを愛しぬくことを。
ルドワードは竜の姿のままアリシアと誓いのキスを交わした。
そこは少し肌寒く、ルドワードはすぐに自身のマントをアリシアにかけた。
するとアリシアは小さく笑い、ルドワードは首を傾げた。
「シア?」
「ふふ、すみません。あの時みたいでしたので」
「あの時?」
「私がここに来てすぐのことです。あの時もこのように部屋に戻る前に私のわがままで中庭に出ました」
「ああ、そうだったな」
アリシアの言うとおり、アリシアがドラグーンに来てすぐのことだ。アリシアが不意に目に入った中庭を気に入り、ルドワードに言って中庭に出た。
その時に『花嫁』のことを気にしたアリシアがルドワードに尋ねた。アリシアにとって初めての感情が芽生え、互いを想い合うきっかけになったような出来事だ。
その時もとても明るい月夜だった。
今宵は満月でさらに明るくも優しい月光に照らされている。
ルドワードはあの時同様に花を愛でるアリシアを優しく見ていたが意を決してアリシアに声をかけた。
「シア」
「はい?」
「こっちに来てくれ」
「ルド様?……分かりました」
アリシアは首を傾げたがルドワードの真剣な表情について行くことにした。
ルドワードはアリシアの手を握り、東屋より先の開けた場所に向かった。そこは花々に囲まれながらもある程度の広さを有している。
ガーデンテーブルやチェアーなどを十個近く持ってきてパーティーも開けそうなほどはある。
ルドワードはそこにつくとアリシアと向かい合った。
急に真剣な表情をするルドワードにアリシアは首を傾げた。
「ルド様?どうかなさいましたか?」
「シア、俺たち竜の亜人にはもう一つの姿がある」
「もう一つの姿ですか?」
「そうだ。隠し事は無くしたい、シアにはもう一つの姿も知っていて欲しい」
「はい」
ルドワードはアリシアの返事を聞くと背中から羽をだし、それで自身の姿を包んだ。するとルドワードの周りに風が舞い吹き、その姿が見えなくなった。
アリシアはそれをじっと見ていた。そのすべてを見ようとして。
風がやむとそこには月光に照らされ、青く反射しながらも綺麗な濡れ羽色をした鱗や羽に同色の毛が尻尾の先や頭部からその長い首筋にかけてあり、頭部にある角や爪に牙が象牙のような乳白色をしている。その瞳は鋭くも甘い蜂蜜のような優しい色をしている体長3mはある竜がいた。
それこそがルドワードのもう一つの竜としての姿だ。
アリシアはその姿に見惚れていた。
「シア、怖いか?」
「いいえ、ルド様。とても美しく思います」
「ありがとう」
アリシアの言葉にルドワードは嬉しくなった。普段は人の姿をしているが竜の一族だけこの姿になる。そして、この遺伝子はどの種族と交わっても優先的に出る。そしてその力も半端ない、それがこの地の王が竜王となった所以でもある。
すべての圧倒的な力と優性遺伝子がこの国を支える基盤となり、この国の王を竜王とした。
竜族のすべてが同族と交わったわけではない、優先的に出るため王の子が竜となってきたがゆえにただの『王』ではなく、『竜王』としたのだ。
「シア、アリシア」
「はい?」
「俺は誓う。太陽と月が出ずる限り、大樹が実りを続ける限り、すべてのものが息づく限り、俺の命が続く限り、アリシアを愛しぬくと」
「ルド様……」
「これは我が一族に伝わる誓いの言葉。自身の全てをかけて愛するたった一人にのみ誓う言葉だ」
ルドワードはアリシアだけを愛することをこの世のすべてに誓った。
王侯貴族には側室を持つことが普通に見受けられるがそれでも正妃だけを、本妻だけを愛し、他の者を娶らない誓いをする者もいる。
その誓いの言葉はその家系で違うが竜王家に伝わるのはこの言葉だ。
つまりルドワードは本当にアリシアだけを愛し、他を求めないと誓った。
アリシアにもそのことが伝わり、アリシアは嬉しくて涙を流した。
「はい、はい、ルド様。私も誓います。ルド様だけを愛します」
「ああ、ありがとう」
二人は満月の照らされる中庭で再度、二人だけで誓いの言葉を交わした。
互いだけを愛しぬくことを。
ルドワードは竜の姿のままアリシアと誓いのキスを交わした。
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