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第二章
6、シリウスとアリシア③
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シリウスの話に対してスカルディアは眉を顰めた。スカルディアは今まで嫌なものを見てきたし、アリシアから昔の話も聞いているので何とも言い難かった。
「あいつらはアリシア嬢のことを何も知らなかった。本来アリシア嬢はユーザリアにいても領主にはならなかった」
「どう云うことだ?」
「アリシア嬢ほどの方なら陛下の正妃になる定めだったんだよ」
「シルの正妃?」
ルドワードとスカルディアは首を傾げた。アリシアの何がシリウスの正妃となる要素があったのか分からないからだ。それにシリウスとルークが苦笑しながら話を続けた。
「ああ、スカーレッドって云うのはほとんど産まれない。かなり稀有な存在なんだ。言っただろ、記録上でも数人しかいないって」
「ああ」
「そういう方は貴族である限り国王陛下の正妃に、市民なら側室になるのが習わしなんだ。強力な魔術・魔力を王族に集めることで国の平安を求めているからね」
「なるほど、他の貴族たちが反乱を起こそうとしてもその大きな力が抑止力になるってことだな」
「そうだよ。そしてスカーレッドと紫ではかなりの格差があるんだ」
「格差?」
上位の魔力保有にもその格差があるとは思ったが『かなり』というだけの差がいかほどかわからないからだ。言われた格差は途方もなかった。
「その保有魔力はゆうに十倍以上の力を差がある」
「十倍以上?!」
「だから王族に入れるんだ。だけど今回アリシア嬢はドラグーンに嫁いだ」
「まさか、かなり大きな力をこの国に入ったってことになるのか?」
ルドワードもスカルディアも本当の意味でユーザリアの貴族連中が恐れたことがわかった。身体的なことで優位に立つドラグーンに群を抜いてその魔力を有するアリシアが一人いるだけで途方もない力が集中したことになる。
唯一の対抗手段の魔法で優位に立てないのはかなり国同士としては怖いことだ。
それ以前にルドワードに嫁がなくてもシリウスに嫁ぐことになるのなら傷付けたり、隔離したり、不当に接するのはかなり問題になる。
「そうだ。我が国でも最高戦力になろう者が嫁いだのだ。これに恐れないユーザリア国民はいない。アリシア嬢ことを何も知らないからそうなる」
「おいおい、あの父親は分かってシア姉にあんなことしたのか?」
「分かっていないだろうね」
「ああ、分かっていたら俺に嫁ぐことがほぼその力で確定していたアリシア嬢を傷つけたり、不当な扱いはできない。自身に不利になるからな」
「結局なったがな」
「ああ」
全員がフォレンドを思い出してため息をついた。大事に育てれば王妃の親として厚遇されていたはずなのに、なんともバカな話だ。
「無知っていうのは怖いよね。本来、それは国の基礎学として教えられる程のことなんだけど」
「まぁ、馬鹿は馬鹿なりにどうにかするだろう。ウィザルド領はやや傾きかけていた、新しい領主が立て直せるほどではあるだろう?」
「可能だね。アリシア嬢やルルージュ殿が示した者は文武両道を極め、信頼に足る者だよ。仁徳もあるし、大丈夫だよ」
ウィザルド領の立て直しに関しては現在、王都内を見に行っているアリシアのいとこのマティスがそれなりの計画を立てている。
マティスはよくアリシアに会いにウィザルド領に向かっていた。まぁ、会えずに終わるのだがそれでも現状が見えている。アリシアが領主になった時に備えて準備していたのだ。実はマティスはアリシアのことを妹として可愛がっているのだ。
今回だってかなり高価な魔法具である録画用の水晶を購入して記録していた。その姿にルークは呆れていた。そして、ここにアリシアを気にかけているシリウスがいる。
「ふふ、そうだな。だからな、ルド」
「ん?」
「アリシア嬢を幸せにしてくれよ。お前だからこそアリシア嬢を預けたのだからな」
「ああ、もちろんだ」
ルドワードの返事にシリウスは頷いた。話が和やかにすみそうであったが、スカルディアには疑問があったので尋ねた。
「それより、シア姉の力のこと、分かっていて嫁がせたのか?」
「もちろんだ。分かっていた上で我が国を離れるのがアリシア嬢のためになると思ったからこそ信頼できるルドに嫁がせたんだ」
「そうだね、そのことに関しては何度も話をしたよ」
「アリシア嬢の力はとても強力だ。彼女自身それを理解している。そしてその力を利用しようと企むやつが多くいる」
「だからこそ、魔力を有しないドラグーンはアリシア嬢にとって良い所なんだよ。魔力を必要ないから砂糖に群がる蟻のような者はいなくなる。彼女らしく生きるにはこの国が適しているだよ」
「おいおい、辛辣だなぁ~」
シリウスもルークも自国のことなのになかなか貴族連中に対して酷評をしている。それに対してルドワードは苦笑し、スカルディアは呆れていた。
「あいつらはアリシア嬢のことを何も知らなかった。本来アリシア嬢はユーザリアにいても領主にはならなかった」
「どう云うことだ?」
「アリシア嬢ほどの方なら陛下の正妃になる定めだったんだよ」
「シルの正妃?」
ルドワードとスカルディアは首を傾げた。アリシアの何がシリウスの正妃となる要素があったのか分からないからだ。それにシリウスとルークが苦笑しながら話を続けた。
「ああ、スカーレッドって云うのはほとんど産まれない。かなり稀有な存在なんだ。言っただろ、記録上でも数人しかいないって」
「ああ」
「そういう方は貴族である限り国王陛下の正妃に、市民なら側室になるのが習わしなんだ。強力な魔術・魔力を王族に集めることで国の平安を求めているからね」
「なるほど、他の貴族たちが反乱を起こそうとしてもその大きな力が抑止力になるってことだな」
「そうだよ。そしてスカーレッドと紫ではかなりの格差があるんだ」
「格差?」
上位の魔力保有にもその格差があるとは思ったが『かなり』というだけの差がいかほどかわからないからだ。言われた格差は途方もなかった。
「その保有魔力はゆうに十倍以上の力を差がある」
「十倍以上?!」
「だから王族に入れるんだ。だけど今回アリシア嬢はドラグーンに嫁いだ」
「まさか、かなり大きな力をこの国に入ったってことになるのか?」
ルドワードもスカルディアも本当の意味でユーザリアの貴族連中が恐れたことがわかった。身体的なことで優位に立つドラグーンに群を抜いてその魔力を有するアリシアが一人いるだけで途方もない力が集中したことになる。
唯一の対抗手段の魔法で優位に立てないのはかなり国同士としては怖いことだ。
それ以前にルドワードに嫁がなくてもシリウスに嫁ぐことになるのなら傷付けたり、隔離したり、不当に接するのはかなり問題になる。
「そうだ。我が国でも最高戦力になろう者が嫁いだのだ。これに恐れないユーザリア国民はいない。アリシア嬢ことを何も知らないからそうなる」
「おいおい、あの父親は分かってシア姉にあんなことしたのか?」
「分かっていないだろうね」
「ああ、分かっていたら俺に嫁ぐことがほぼその力で確定していたアリシア嬢を傷つけたり、不当な扱いはできない。自身に不利になるからな」
「結局なったがな」
「ああ」
全員がフォレンドを思い出してため息をついた。大事に育てれば王妃の親として厚遇されていたはずなのに、なんともバカな話だ。
「無知っていうのは怖いよね。本来、それは国の基礎学として教えられる程のことなんだけど」
「まぁ、馬鹿は馬鹿なりにどうにかするだろう。ウィザルド領はやや傾きかけていた、新しい領主が立て直せるほどではあるだろう?」
「可能だね。アリシア嬢やルルージュ殿が示した者は文武両道を極め、信頼に足る者だよ。仁徳もあるし、大丈夫だよ」
ウィザルド領の立て直しに関しては現在、王都内を見に行っているアリシアのいとこのマティスがそれなりの計画を立てている。
マティスはよくアリシアに会いにウィザルド領に向かっていた。まぁ、会えずに終わるのだがそれでも現状が見えている。アリシアが領主になった時に備えて準備していたのだ。実はマティスはアリシアのことを妹として可愛がっているのだ。
今回だってかなり高価な魔法具である録画用の水晶を購入して記録していた。その姿にルークは呆れていた。そして、ここにアリシアを気にかけているシリウスがいる。
「ふふ、そうだな。だからな、ルド」
「ん?」
「アリシア嬢を幸せにしてくれよ。お前だからこそアリシア嬢を預けたのだからな」
「ああ、もちろんだ」
ルドワードの返事にシリウスは頷いた。話が和やかにすみそうであったが、スカルディアには疑問があったので尋ねた。
「それより、シア姉の力のこと、分かっていて嫁がせたのか?」
「もちろんだ。分かっていた上で我が国を離れるのがアリシア嬢のためになると思ったからこそ信頼できるルドに嫁がせたんだ」
「そうだね、そのことに関しては何度も話をしたよ」
「アリシア嬢の力はとても強力だ。彼女自身それを理解している。そしてその力を利用しようと企むやつが多くいる」
「だからこそ、魔力を有しないドラグーンはアリシア嬢にとって良い所なんだよ。魔力を必要ないから砂糖に群がる蟻のような者はいなくなる。彼女らしく生きるにはこの国が適しているだよ」
「おいおい、辛辣だなぁ~」
シリウスもルークも自国のことなのになかなか貴族連中に対して酷評をしている。それに対してルドワードは苦笑し、スカルディアは呆れていた。
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