竜王の花嫁

第二章

１３、あれから④

　リーナに対し、フォレンドに関してはほとんどを配慮されなかった。いや、配慮されるはずだった。王都にいるウィザルド家とマティス達がそれを拒否したのだ。
　元々、ウィザルド家の者たちはフォレンドを憎んでいる。その相手が擁護されるのは許せない事であった。
　領主館を追われた使用人たちと後妻と一緒に王都にある別宅に移動させられた。
　ここで問題が王都に居れば自然と社交界の集まりに出る事になる。そうなれば周りに奇異の目で見られる事は必須だ。マティスの代理は分家にあたるマティスの実家が引き続き行うことになる。
　これはフォレンドが個人として出る事になるのだ。
　どこの世界でも残酷なことで一つの間違いが判明すると今までの関係が壊れ、攻撃されることになる。変わらず接してくれるものとはこの社交界では稀なことだ。誰しも自身の家が大事なのだ。そんな危ない橋を渡る者はいない。
　アリシアの事やリーナの出自が判明し、フォレンドの周りは手のひらを返すようになった。
　フォレンドたちの救いはリーナがその矢面に立たない事だ。
　それでもきつい物だ。
「くっそ！」
「あなた」
「グラン家ももう関わってくるなっと」
「グ、グラン家も？！」
「マティスめ！」
「これからどうすれば」
「わからんよ」
　フォレンドは別宅住まいであるが、事実上孤立したのだ。別宅を維持し、使用人たちを養っていくために働かないといけない。
　だが、今までは領民の税で暮らしていた。
　それが出来ないのだ。金策の方法がわからないのだ。
　ほとんどの貴族から背を向けられ、ウィザルド領からの金も求められない。信頼も金策も失ったフォレンドはこのまま飢えて死んでいくしか道が見えなかった。頭を抱えている。
　これがフォレンドたちに対する罰となった。
　もちろん、国民を見殺す事はいくら何でもできないシリウスが部下に命じて監視し、最悪の状況だけは回避させることにした。
　新たな仕事を最後の最後で提示し、一回限りのチャンスを与えることにした。
　もちろん、それはマティスや王都のウィザルド家を説得して決めたことだ。
「頼むから見殺させないでくれよ」
「本当のバカでないことを願うね」
「本当にな」
　シリウスはルークと共にため息をついてフォレンドたちの今後を見守ることにした。当然、マティスは気に入らず、面白くないのだが親友たちの頼みを拒むことができなかったのだ。