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第二章
28、跡を継ぐということ
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しばらくアルシードとガイは互いを抱きしめあっていたが不意にガイが申し訳なさそうに尋ねてきた。
「でも、本当に良かったの?」
「だから」
「クレア姉から聞いたけど、好きな人がいるんでしょ」
「っ!!」
アルシードは図星を突かれた。
そう、アルシードが跡を継ぐということは嫌な言い方だが結婚相手は貴族になってくる。
アルシードが好意を向けているのはリンだ。
リンは一般市民の出でいくらアリシアの侍女として働いていてもそれを許すはずがないのだ、アルシード達の両親を始めとした親族が。
だが、アルシードは一度瞳を伏せ、優しい瞳でガイを見た。
「……お前が心配することはない」
「でも」
「確かに俺の想い人と一緒になるのは許されないだろう」
「っ!だったら!!」
「でもな、付き合っているわけじゃないんだ」
「え?」
「俺が好いているだけで思いも告げていない。だがら、このまま何も言わなければいいだけだ」
「アル兄」
「俺はお前たちが幸せならそれでいい」
「……」
「やりたいことをやれ、ガイ」
「……うん」
「いい子だ」
ガイはアルシードの決意を受け入れるしかなかった。
それでも心苦しく思っていた。
アルシードが他の兄弟たちに幸せになって欲しいと思っているように、ガイを始めとしたほかの兄弟たちもアルシードに幸せになって欲しいと思っている。
それでも長男だからと覚悟を、決意を決めているアルシードを変えることは出来ないのかもしれない。
***
ガイはアルシードの部屋を出て図書室に向かった。
そこにいるであろうジルフォードとバロンに会うためだ。
ガイ一人ではいくら考えてもどうしていいのか分からないので一番知識のあるジルフォードを頼ったのだ。
ガイが図書室に行くとちょうどバロンと出会い、そのまま一緒に司書長室に向かった。
「ガイ、どうした?」
「ジル兄、バロン兄」
「うん?」
「実は僕やりたいことが決まって」
「おお!」
「よかったなぁ」
「でも、そうなるとアル兄が」
「「ああ~」」
「アル兄、最近好きな人が出来たらしいってクレア姉から聞いて」
「ああ、うん。そうだな」
「いい人そうだったね」
「ああって、バロンあったのか?」
「うん、たまたま」
「そうか」
そう、アルシードの想い人であるリンに二人とも会ったことがあるのだ。
だからこそわかる。
アルシードがどんなにリンを想っても、身分という大きな壁に阻まれてしまうことが。
それは話を聞いただけのガイでもわかっている。
だからこそ、ガイは申し訳なく思ってるのだ。
ガイ自身が跡を継げば問題ないのかもしれないが、ガイはやりたいことを見つけてしまった。
それは諦めることが出来ないほどにガイの中で大きくなってしまったのだ。
ガイがここに来た本当の理由はアルシードに引導を貰うためだった。
大好きな長男に跡を継げと言われることを考えていた。
大好きな長男を蔑ろにする両親をガイを始めとした兄弟たちは好きではない。
いつだって兄弟たちのことを守ってくれたのも愛してくれたのも何より優先してくれたのも長男であるアルシードなのだ。
ジルフォードだってそれは分かっている。
両親の犠牲に兄弟がなりそうになればアルシードが守ってくれた。
家の存続しか考えていない両親によってジルフォードは政略結婚をさせられそうになった時もアルシードがその人脈などを使って回避してくれた。
ジルフォードが望む相手以外との結婚は認めないって言って。
それはクレアもマリアもそうだ。そのほかの兄弟たちもそうなのだ。
「アル兄はこのままじゃ幸せになれないよ」
「「…………」」
「アル兄にだって幸せになって欲しい。僕はアル兄に跡を継げって言われると思ってここに来たんだ。アル兄に言われるならそうしようって思えるから」
「それは思い違いだな」
「ああ、アル兄はそんなこと言わない」
「うん……そうだよね」
「ああ、アル兄は何時だって俺たちを優先する。俺たちが出来ることは少ないけど、どうにかしてアル兄の想い人との結婚を実現させてあげたい」
「うん。せめてアル兄に好きな人と一緒になって欲しいよ」
「クレアさんたちを呼んでくるよ。みんなで考えよう」
「ああ」
「うん」
バロンは司書長室を出てクレアたちを呼びに行った。
このままではアルシードが自身の幸せを犠牲にしてしまう気がしたからだ。
今まで守ってくれた大好きなアルシードのためにガイやジルフォードたちが出来ることを考えるために。
「でも、本当に良かったの?」
「だから」
「クレア姉から聞いたけど、好きな人がいるんでしょ」
「っ!!」
アルシードは図星を突かれた。
そう、アルシードが跡を継ぐということは嫌な言い方だが結婚相手は貴族になってくる。
アルシードが好意を向けているのはリンだ。
リンは一般市民の出でいくらアリシアの侍女として働いていてもそれを許すはずがないのだ、アルシード達の両親を始めとした親族が。
だが、アルシードは一度瞳を伏せ、優しい瞳でガイを見た。
「……お前が心配することはない」
「でも」
「確かに俺の想い人と一緒になるのは許されないだろう」
「っ!だったら!!」
「でもな、付き合っているわけじゃないんだ」
「え?」
「俺が好いているだけで思いも告げていない。だがら、このまま何も言わなければいいだけだ」
「アル兄」
「俺はお前たちが幸せならそれでいい」
「……」
「やりたいことをやれ、ガイ」
「……うん」
「いい子だ」
ガイはアルシードの決意を受け入れるしかなかった。
それでも心苦しく思っていた。
アルシードが他の兄弟たちに幸せになって欲しいと思っているように、ガイを始めとしたほかの兄弟たちもアルシードに幸せになって欲しいと思っている。
それでも長男だからと覚悟を、決意を決めているアルシードを変えることは出来ないのかもしれない。
***
ガイはアルシードの部屋を出て図書室に向かった。
そこにいるであろうジルフォードとバロンに会うためだ。
ガイ一人ではいくら考えてもどうしていいのか分からないので一番知識のあるジルフォードを頼ったのだ。
ガイが図書室に行くとちょうどバロンと出会い、そのまま一緒に司書長室に向かった。
「ガイ、どうした?」
「ジル兄、バロン兄」
「うん?」
「実は僕やりたいことが決まって」
「おお!」
「よかったなぁ」
「でも、そうなるとアル兄が」
「「ああ~」」
「アル兄、最近好きな人が出来たらしいってクレア姉から聞いて」
「ああ、うん。そうだな」
「いい人そうだったね」
「ああって、バロンあったのか?」
「うん、たまたま」
「そうか」
そう、アルシードの想い人であるリンに二人とも会ったことがあるのだ。
だからこそわかる。
アルシードがどんなにリンを想っても、身分という大きな壁に阻まれてしまうことが。
それは話を聞いただけのガイでもわかっている。
だからこそ、ガイは申し訳なく思ってるのだ。
ガイ自身が跡を継げば問題ないのかもしれないが、ガイはやりたいことを見つけてしまった。
それは諦めることが出来ないほどにガイの中で大きくなってしまったのだ。
ガイがここに来た本当の理由はアルシードに引導を貰うためだった。
大好きな長男に跡を継げと言われることを考えていた。
大好きな長男を蔑ろにする両親をガイを始めとした兄弟たちは好きではない。
いつだって兄弟たちのことを守ってくれたのも愛してくれたのも何より優先してくれたのも長男であるアルシードなのだ。
ジルフォードだってそれは分かっている。
両親の犠牲に兄弟がなりそうになればアルシードが守ってくれた。
家の存続しか考えていない両親によってジルフォードは政略結婚をさせられそうになった時もアルシードがその人脈などを使って回避してくれた。
ジルフォードが望む相手以外との結婚は認めないって言って。
それはクレアもマリアもそうだ。そのほかの兄弟たちもそうなのだ。
「アル兄はこのままじゃ幸せになれないよ」
「「…………」」
「アル兄にだって幸せになって欲しい。僕はアル兄に跡を継げって言われると思ってここに来たんだ。アル兄に言われるならそうしようって思えるから」
「それは思い違いだな」
「ああ、アル兄はそんなこと言わない」
「うん……そうだよね」
「ああ、アル兄は何時だって俺たちを優先する。俺たちが出来ることは少ないけど、どうにかしてアル兄の想い人との結婚を実現させてあげたい」
「うん。せめてアル兄に好きな人と一緒になって欲しいよ」
「クレアさんたちを呼んでくるよ。みんなで考えよう」
「ああ」
「うん」
バロンは司書長室を出てクレアたちを呼びに行った。
このままではアルシードが自身の幸せを犠牲にしてしまう気がしたからだ。
今まで守ってくれた大好きなアルシードのためにガイやジルフォードたちが出来ることを考えるために。
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