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第二章
37、告白②
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リンの、奴隷としての過去を知って少なからずも含めて態度の変わらなかったのはアリシアやルドワードの一番近い周りにいる相手だけだ。それ以外の相手は男女ともに変わってしまった。その瞳には同情以外にもよくない感情が見える時があった。
だからリンはこの場所が好きだ。そして、ずっとリンの側にいて励ましてくれたり気にかけてくれたりしたアルシードをいつの間にか思っていた。
それを消すのはリンには不可能に近い話なのだ。
「アルシード様」
「なんだ?」
「私だって考えなかったわけではありません」
「ん?」
「私はアリシア様付きの侍女ですが一般市民です。それも奴隷の過去がある」
「リン!」
「本当のことです。でも、諦めきれなかった。アルシード様を諦める事が出来なかったのです」
「……」
「ですので、私はアリシア様にご相談いたしました」
「アリシア様に?」
「はい」
アルシードは背中に嫌な汗をかいた。
その話の行き先が何となくわかり始めたからだ。
そして先日、スカルディアに話したときに最後含みのある言い方をされたことを思い出した。
(これか!?スカルの言いたかったことは!!)
気づくと同時にアルシードは頭を抱えた。
スカルディアが精神的に勝てなかったアリシアにアルシード自身が打ち勝つことは不可能に近い、いや不可能だと断言が出来る。
つまり、この告白の後ろにはアリシアが引いてはルドワードがいるのだ。
アルシードはリンの次の言葉を待った。
「そして、アリシア様は私が周りに何も言われないほどの身分があればいいと言われ」
「あ、ああ」
「私たち姉弟はジャックス隊長様の養子になりました」
「はあぁぁぁ?!!」
さすがのアルシードも予想外のリンの言葉に大きな声が出た。
至近距離でそれを聞いたリンはびくっとなり、身体が硬直した。
それに気付いたアルシードはリンの背中を労わるように撫でた。
「す、すまん」
「い、いえ」
アルシードはリンの体から緊張が取れるまで続けた。
リンの体から緊張が取れるとアルシードは驚かせないように優しい声で確認をした。
「リン、確認なんだが」
「はい」
「誰の養子になったって?」
「ジャックス隊長様です」
「隊長の?」
「はい」
「なんでまた」
「最初はアリシア様の提案でしたが、どうやら私たち姉弟にはクレメント家の血が入っているそうなのです」
「え?」
「私たちも数日前にジャックス隊長様から聞きました。昔、愛した人と一緒になる為に爵位を返還した方がいたようでして、それが私たちの祖父なのです」
「マジ?」
「はい。それで私たちはジャックス隊長様のお爺様の遺言もありまして、本日無事にクレメント家の養子になりました」
「……つまり」
「すでに私はクレメント家の養女なので、貴族の仲間入りです」
「ああああああ」
アルシードは逃げ道をふさがれた気分だった。
リンが貴族、それも公爵位の養女ともなれば反対する者もほとんどいないだろ。
何せ、爵位としては最高位の相手と姻族関係を結べるのだ。ましてやクレメント家と言えばグレイ家同様いや、それ以上に古参の家柄だ。
その相手から望まれて拒むものは少ない。
ましてやアルシード自身の想い人でもある。
祖父も含めてこの話を蹴るはずがない。
「リン、分かっているのか?お前は公爵位の養女だ。それこそうちのような古参ってだけの家に嫁ぐ必要はないんだぞ」
「私は家ではなく、アルシード様のもとに嫁ぎたいのです」
「っっ!!」
ここまで言われて落ちない男は少ない。
実際にアルシードはリンの為に諦めるという思いを諦め始めている。
「はぁ~~、アリシア様も知っているんだよな」
「はい」
「養父となったジャックス隊長も」
「もちろん」
「だよなぁ~」
アルシードは再度考えた。
アルシードの兄弟でリンと面識のあるマリアやクレアも賛成派であり、ジルフォードやガイもすでに賛成派ではある。祖父もアルシードの想いを優先する可能性が高いうえに相手が公爵位の養女、反対する理由がない。
両親が反対してきてもリンの後ろにはルドワードやアリシアがいるのだ。いえるはずがない。
そういうことも含めてアルシードは決心した。
この先、何があろうともリンを守り共に歩んでいく事を。
「わかった。俺の負けだ」
「え?」
「でも、俺から言わせてくれ」
「え?え?」
リンは突然のことで混乱した。
そんなリンも可愛いと内心アルシードは思っていた。
そして、リンの理解が追いつく前にアルシードは跪き、リンの手を取った。
それはいつかのパーティーの時の状況と重なり、リンは頬を朱に染めた。
「リン、いばらの道になるとは思うが絶対にお前を守る。だから、一緒になってくれ」
「っ!はい、はい」
「いろいろ言ってすまなかった」
「いいえ、アルシード様が私を思って下さっての事だとわかりましたので」
「それでもだ。意地の悪い言い方になった」
「いいのです」
アルシードはリンを抱きしめた。
リンは嬉し涙を流しながらも笑顔だった。
途中から雲行きの悪くなっていたのを察して全員が隠れながら見守っていた。
いざという時に間に入れるように。
「まぁ、丸く収まってよかったな」
「そうですね」
「これからはあの二人の問題だろうが、大丈夫だろう」
「ええ。何かありましたら養父として間に入ります。ただの上司より入りやすくていいです」
「……意外に親バカ?」
「そこは情に厚いって言って下さい、スカルディア様」
「「うんうん」」
「こっちはシスコンかしら?」
「シスコンって何ですか?」
「シアはまだ知らなくていい」
「ええ~~」
周りでもそんな話をしていた。
そう、あとは正式にアルシードが跡を継ぐだけだ。
だからリンはこの場所が好きだ。そして、ずっとリンの側にいて励ましてくれたり気にかけてくれたりしたアルシードをいつの間にか思っていた。
それを消すのはリンには不可能に近い話なのだ。
「アルシード様」
「なんだ?」
「私だって考えなかったわけではありません」
「ん?」
「私はアリシア様付きの侍女ですが一般市民です。それも奴隷の過去がある」
「リン!」
「本当のことです。でも、諦めきれなかった。アルシード様を諦める事が出来なかったのです」
「……」
「ですので、私はアリシア様にご相談いたしました」
「アリシア様に?」
「はい」
アルシードは背中に嫌な汗をかいた。
その話の行き先が何となくわかり始めたからだ。
そして先日、スカルディアに話したときに最後含みのある言い方をされたことを思い出した。
(これか!?スカルの言いたかったことは!!)
気づくと同時にアルシードは頭を抱えた。
スカルディアが精神的に勝てなかったアリシアにアルシード自身が打ち勝つことは不可能に近い、いや不可能だと断言が出来る。
つまり、この告白の後ろにはアリシアが引いてはルドワードがいるのだ。
アルシードはリンの次の言葉を待った。
「そして、アリシア様は私が周りに何も言われないほどの身分があればいいと言われ」
「あ、ああ」
「私たち姉弟はジャックス隊長様の養子になりました」
「はあぁぁぁ?!!」
さすがのアルシードも予想外のリンの言葉に大きな声が出た。
至近距離でそれを聞いたリンはびくっとなり、身体が硬直した。
それに気付いたアルシードはリンの背中を労わるように撫でた。
「す、すまん」
「い、いえ」
アルシードはリンの体から緊張が取れるまで続けた。
リンの体から緊張が取れるとアルシードは驚かせないように優しい声で確認をした。
「リン、確認なんだが」
「はい」
「誰の養子になったって?」
「ジャックス隊長様です」
「隊長の?」
「はい」
「なんでまた」
「最初はアリシア様の提案でしたが、どうやら私たち姉弟にはクレメント家の血が入っているそうなのです」
「え?」
「私たちも数日前にジャックス隊長様から聞きました。昔、愛した人と一緒になる為に爵位を返還した方がいたようでして、それが私たちの祖父なのです」
「マジ?」
「はい。それで私たちはジャックス隊長様のお爺様の遺言もありまして、本日無事にクレメント家の養子になりました」
「……つまり」
「すでに私はクレメント家の養女なので、貴族の仲間入りです」
「ああああああ」
アルシードは逃げ道をふさがれた気分だった。
リンが貴族、それも公爵位の養女ともなれば反対する者もほとんどいないだろ。
何せ、爵位としては最高位の相手と姻族関係を結べるのだ。ましてやクレメント家と言えばグレイ家同様いや、それ以上に古参の家柄だ。
その相手から望まれて拒むものは少ない。
ましてやアルシード自身の想い人でもある。
祖父も含めてこの話を蹴るはずがない。
「リン、分かっているのか?お前は公爵位の養女だ。それこそうちのような古参ってだけの家に嫁ぐ必要はないんだぞ」
「私は家ではなく、アルシード様のもとに嫁ぎたいのです」
「っっ!!」
ここまで言われて落ちない男は少ない。
実際にアルシードはリンの為に諦めるという思いを諦め始めている。
「はぁ~~、アリシア様も知っているんだよな」
「はい」
「養父となったジャックス隊長も」
「もちろん」
「だよなぁ~」
アルシードは再度考えた。
アルシードの兄弟でリンと面識のあるマリアやクレアも賛成派であり、ジルフォードやガイもすでに賛成派ではある。祖父もアルシードの想いを優先する可能性が高いうえに相手が公爵位の養女、反対する理由がない。
両親が反対してきてもリンの後ろにはルドワードやアリシアがいるのだ。いえるはずがない。
そういうことも含めてアルシードは決心した。
この先、何があろうともリンを守り共に歩んでいく事を。
「わかった。俺の負けだ」
「え?」
「でも、俺から言わせてくれ」
「え?え?」
リンは突然のことで混乱した。
そんなリンも可愛いと内心アルシードは思っていた。
そして、リンの理解が追いつく前にアルシードは跪き、リンの手を取った。
それはいつかのパーティーの時の状況と重なり、リンは頬を朱に染めた。
「リン、いばらの道になるとは思うが絶対にお前を守る。だから、一緒になってくれ」
「っ!はい、はい」
「いろいろ言ってすまなかった」
「いいえ、アルシード様が私を思って下さっての事だとわかりましたので」
「それでもだ。意地の悪い言い方になった」
「いいのです」
アルシードはリンを抱きしめた。
リンは嬉し涙を流しながらも笑顔だった。
途中から雲行きの悪くなっていたのを察して全員が隠れながら見守っていた。
いざという時に間に入れるように。
「まぁ、丸く収まってよかったな」
「そうですね」
「これからはあの二人の問題だろうが、大丈夫だろう」
「ええ。何かありましたら養父として間に入ります。ただの上司より入りやすくていいです」
「……意外に親バカ?」
「そこは情に厚いって言って下さい、スカルディア様」
「「うんうん」」
「こっちはシスコンかしら?」
「シスコンって何ですか?」
「シアはまだ知らなくていい」
「ええ~~」
周りでもそんな話をしていた。
そう、あとは正式にアルシードが跡を継ぐだけだ。
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