104 / 118
第二章
43、婚約発表④
しおりを挟む
彼女でも分かるからだ、これ以上は身の破滅を起こしかねないと。
「あなたはアルが好いた相手と一緒になることの何が不満なのですか?」
「自身より力を持つことが許せないだけだあろう。だがな、お前たちが何を言っても、何をしてもアルに敵うわけない」
「な、なぜですか?」
「自身のことしか考えてないお前たちと、周りを大切に出来るアル。どっちが世間に好かれるか、分かりきっていることだ。それにお前は跡継ぎとして足りないことばかりだ。それだけでもアルには勝てんよ」
「…………」
両親にとってみれば我が子に何もしても勝てない、そんな事実は知りたくなかったし、認めたくもなかった。
それを自らの親であり、現当主に突き付けられ、もう反論することも出来ないほど打ちのめされた。
「それにね。アルはそんなお前たちでも大切に思っていたんだよ。それを捻じ曲げたのはお前たち自身だ」
「……」
サリアスの言葉に驚き、両親はアルシードの方を見た。
アルシードはムスッとしながらそっぽを向いていたが、その顔や耳は赤かった。
アルザスはルドワードたちの方に向き直し、頭を下げた。
「竜王様、竜王妃様、クレメント公爵。我が子の無礼をお詫び申し上げます」
「私は大丈夫ですよ。ねぇ、ルド様」
「……ああ、気にするでない」
「分かっていますよ、アルザス殿」
アリシアが一番に許してしまったのでちょっと面白くなさそうだが、ルドワードも許した。
そんな二人のやり取りを見て苦笑しつつジャックスも許した。
ジャックスにしてみれば養女となったリンの義理ではあるが祖父母との関係を悪くしたくないのだ。ましてや、自身の部下の祖父母でもあるのでその思いはとても強い。
三人の許しをもらってアルザスもサリアスも安心した。
「ありがとうございます。そして、今回の話、我が孫アルシードの幸せのためにも受けたいと思います」
「こちらもリンの幸せになるのでそう言ってもらえると助かります」
「ありがとうございます。あの者たちは私がしっかりと言って聞かせます」
「そうしてもらえると助かる」
「はい」
「ふむ、両者話がついたようだな」
「そうですね。では、これにてグレイ家の話し合いを終わりたいと思います」
ディスタの宣言によって今回の話し合いはすべて終わった。
幸せそうな面々の笑顔に溢れて。
面白くない面々もいたがこの話が自国の王族が関わっている以上どうにもできないことが分かっていた。
それにアルシードにどんな策も通用しないのは今までのことからも分かっていた。
実はガイが跡継ぎ候補になった時から周りは何かと自分たちが主導権を持ているように策を弄していたが何一つうまくいかなかった。それはひとえにアルシードが未然に防いだり、兄弟たちから相談されて動いたりしてきたからだ。
それ以上にアルシードは近衛隊に入隊してからその人脈を増やしていったのでたち打つのが困難になっていった。
それに周りも公爵家とのつながりはメリットが大きいことがよくわかっているので、この話を受け入れていくことになる。
「あなたはアルが好いた相手と一緒になることの何が不満なのですか?」
「自身より力を持つことが許せないだけだあろう。だがな、お前たちが何を言っても、何をしてもアルに敵うわけない」
「な、なぜですか?」
「自身のことしか考えてないお前たちと、周りを大切に出来るアル。どっちが世間に好かれるか、分かりきっていることだ。それにお前は跡継ぎとして足りないことばかりだ。それだけでもアルには勝てんよ」
「…………」
両親にとってみれば我が子に何もしても勝てない、そんな事実は知りたくなかったし、認めたくもなかった。
それを自らの親であり、現当主に突き付けられ、もう反論することも出来ないほど打ちのめされた。
「それにね。アルはそんなお前たちでも大切に思っていたんだよ。それを捻じ曲げたのはお前たち自身だ」
「……」
サリアスの言葉に驚き、両親はアルシードの方を見た。
アルシードはムスッとしながらそっぽを向いていたが、その顔や耳は赤かった。
アルザスはルドワードたちの方に向き直し、頭を下げた。
「竜王様、竜王妃様、クレメント公爵。我が子の無礼をお詫び申し上げます」
「私は大丈夫ですよ。ねぇ、ルド様」
「……ああ、気にするでない」
「分かっていますよ、アルザス殿」
アリシアが一番に許してしまったのでちょっと面白くなさそうだが、ルドワードも許した。
そんな二人のやり取りを見て苦笑しつつジャックスも許した。
ジャックスにしてみれば養女となったリンの義理ではあるが祖父母との関係を悪くしたくないのだ。ましてや、自身の部下の祖父母でもあるのでその思いはとても強い。
三人の許しをもらってアルザスもサリアスも安心した。
「ありがとうございます。そして、今回の話、我が孫アルシードの幸せのためにも受けたいと思います」
「こちらもリンの幸せになるのでそう言ってもらえると助かります」
「ありがとうございます。あの者たちは私がしっかりと言って聞かせます」
「そうしてもらえると助かる」
「はい」
「ふむ、両者話がついたようだな」
「そうですね。では、これにてグレイ家の話し合いを終わりたいと思います」
ディスタの宣言によって今回の話し合いはすべて終わった。
幸せそうな面々の笑顔に溢れて。
面白くない面々もいたがこの話が自国の王族が関わっている以上どうにもできないことが分かっていた。
それにアルシードにどんな策も通用しないのは今までのことからも分かっていた。
実はガイが跡継ぎ候補になった時から周りは何かと自分たちが主導権を持ているように策を弄していたが何一つうまくいかなかった。それはひとえにアルシードが未然に防いだり、兄弟たちから相談されて動いたりしてきたからだ。
それ以上にアルシードは近衛隊に入隊してからその人脈を増やしていったのでたち打つのが困難になっていった。
それに周りも公爵家とのつながりはメリットが大きいことがよくわかっているので、この話を受け入れていくことになる。
12
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる