64 / 82
64
しおりを挟む
授業が始まり、しばらくの間はディアドラ含めた子息令嬢に囲まれる日々が続いた。気に入られてしまったのだろうか。
いい加減うんざりしていたカロクが、魔物の一体でもけしかけてやろうかと思い始めた頃に、エルネストが間に入って収めてくれた。以来、エルネスト達とは定期的にお茶をする仲となった。
「学校には慣れたかい?」
エルネストが問う。
裏庭のガゼボにはエルネスト含め攻略対象達が揃っていた。エルネストにより人払いを済ませてあるので、外野に煩わされる事はない。
「えぇ、まぁ。」
カロクは端的に答えて、カップを口へと運ぶ。不敬と言われかねない口調だが、エルネストから許可は得ているので問題は無い。むしろエルネストの方から口調を崩して欲しいと懇願されたくらいだ。
「最初の頃は凄かったな。物珍しさもあるんだろうが。」
総督の息子であるアウグストが言う。
するとエルネストがその顔に苦笑を浮かべた。
「文字通り、カロクの目の色が変わった時はドキリとしたよ。それでも気づかないヴァリス嬢にも驚きだけどね。」
そう言ってエルネストは眉尻を下げた。
エルネスト曰く、カロクの瞳の色が怪しく揺らいだのだという。明らかに質の違う目の色に、エルネストは慌てて仲裁に入ったのだ。
普段は穏やかな瑠璃色をしているカロクの瞳だが、不快や憤りを感じると暗く澱むのだと言う。それに気づいたのはエルネストが初めてだ。ちなみにここにいるメンバーはみな、カロクが魔王の器だと知っている。
「瞳の色は自分じゃ見えないから、逆にどんな色をしてたのか気になるかな。」
カロクが言う。
心情が透けて見えてしまうというのは、貴族にとっては欠点となる。カロクも自身を抑えるのは得意だが、それが目に見えて分かってしまっては意味が無い。
「それにしても不思議な色だよね。近くで見ても?」
公爵子息であるシルヴェストが問う。
「あぁ、構わないよ。」
カロクがそう返すと、シルヴェストは座るカロクの横に立ち、その瞳を覗き込んだ。
「光が反射しているのかな? 内側から光っている気もー‥。」
そう言ってシルヴェストはカロクの顎に手を添え、僅かに上向かせる。陽の光が入るように自らの顔を傾ければ、まるで口付けをしようとしているようにすら見えた。
「コラ、何をしてんだ?」
「わっ‥!!」
その時、後ろから伸びてきた大きな手のひらが、カロクの視界を覆った。
「叔父上!?」
驚くシルヴェストの声に、カロクの心が上向く。視界を塞ぐ大きな手に、そっと自らの手を添えながら、その腕の主を振り向きざまに仰ぎ見る。
「サイラス様‥!!」
青灰色の瞳とかち合うと、フワリと花が開くように柔らかくカロクが笑った。そんなカロクの表情に、3人が目を見張る。
「何故ここに?」
笑みを深めてカロクが問う。
するとサイラスも、僅かに目尻を緩めた。
「陛下のお使いだ。」
「お使い‥?」
シルヴェストが問う。
「学園長にちょっとな。それよりお前達、こんなところで何してんだ?」
そう問うサイラスの瞳に、一瞬だけ不快感がよぎった。それに気づいたのは、間近でサイラスを見つめるカロクだけだ。
「カロクの瞳の色を見せて貰っていたんですよ。」
シルヴェストが答える。
「瞳の色‥?」
そう言ってサイラスはカロクの顎に手をかけ、その瞳を覗き込む。間近で交わる視線に、トクンとカロクの鼓動が跳ねた。しかし、やはりその瞳にはどこか苛立ちのようなものを感じる。何故だろう、と考えている間にサイラスの顔が遠ざかっていく。
「まぁ‥、初めて会った時より、鮮やかになっているからな。そんなもんくらいじゃもう隠せないだろう。」
そう言って、サイラスは一瞬だけカロクの頬に指を滑らせてから手を離した。たったそれだけの愛撫に、カロクは瞳を蕩けさせた。
「叔父上はカロクの幼少期をご存知なので?」
シルヴェストが問う。
「あぁ。オーヴァンを除けば、俺が1番初めに気づいただろうからな。」
「へぇ‥‥。カロクの幼少期ってどんな感じだったんですか?」
アウグストが問う。
「大人しい子供だったな。あと人を寄せ付けない。」
「今と変わらないって事ですね。」
サイラスの言葉に、エルネストが苦笑した。
「って事で、カロク借りていくぞ。」
「え‥?」
サイラスの言葉に、カロクが首を傾げる。
そんな用事あっただろうか、と考えている間に腕を捕まれ、椅子から立ち上がらせられる。
「ほら行くぞ。学園長が呼んでいる。」
サイラスはそう言うと、そのままカロクの腕を引いた。
いい加減うんざりしていたカロクが、魔物の一体でもけしかけてやろうかと思い始めた頃に、エルネストが間に入って収めてくれた。以来、エルネスト達とは定期的にお茶をする仲となった。
「学校には慣れたかい?」
エルネストが問う。
裏庭のガゼボにはエルネスト含め攻略対象達が揃っていた。エルネストにより人払いを済ませてあるので、外野に煩わされる事はない。
「えぇ、まぁ。」
カロクは端的に答えて、カップを口へと運ぶ。不敬と言われかねない口調だが、エルネストから許可は得ているので問題は無い。むしろエルネストの方から口調を崩して欲しいと懇願されたくらいだ。
「最初の頃は凄かったな。物珍しさもあるんだろうが。」
総督の息子であるアウグストが言う。
するとエルネストがその顔に苦笑を浮かべた。
「文字通り、カロクの目の色が変わった時はドキリとしたよ。それでも気づかないヴァリス嬢にも驚きだけどね。」
そう言ってエルネストは眉尻を下げた。
エルネスト曰く、カロクの瞳の色が怪しく揺らいだのだという。明らかに質の違う目の色に、エルネストは慌てて仲裁に入ったのだ。
普段は穏やかな瑠璃色をしているカロクの瞳だが、不快や憤りを感じると暗く澱むのだと言う。それに気づいたのはエルネストが初めてだ。ちなみにここにいるメンバーはみな、カロクが魔王の器だと知っている。
「瞳の色は自分じゃ見えないから、逆にどんな色をしてたのか気になるかな。」
カロクが言う。
心情が透けて見えてしまうというのは、貴族にとっては欠点となる。カロクも自身を抑えるのは得意だが、それが目に見えて分かってしまっては意味が無い。
「それにしても不思議な色だよね。近くで見ても?」
公爵子息であるシルヴェストが問う。
「あぁ、構わないよ。」
カロクがそう返すと、シルヴェストは座るカロクの横に立ち、その瞳を覗き込んだ。
「光が反射しているのかな? 内側から光っている気もー‥。」
そう言ってシルヴェストはカロクの顎に手を添え、僅かに上向かせる。陽の光が入るように自らの顔を傾ければ、まるで口付けをしようとしているようにすら見えた。
「コラ、何をしてんだ?」
「わっ‥!!」
その時、後ろから伸びてきた大きな手のひらが、カロクの視界を覆った。
「叔父上!?」
驚くシルヴェストの声に、カロクの心が上向く。視界を塞ぐ大きな手に、そっと自らの手を添えながら、その腕の主を振り向きざまに仰ぎ見る。
「サイラス様‥!!」
青灰色の瞳とかち合うと、フワリと花が開くように柔らかくカロクが笑った。そんなカロクの表情に、3人が目を見張る。
「何故ここに?」
笑みを深めてカロクが問う。
するとサイラスも、僅かに目尻を緩めた。
「陛下のお使いだ。」
「お使い‥?」
シルヴェストが問う。
「学園長にちょっとな。それよりお前達、こんなところで何してんだ?」
そう問うサイラスの瞳に、一瞬だけ不快感がよぎった。それに気づいたのは、間近でサイラスを見つめるカロクだけだ。
「カロクの瞳の色を見せて貰っていたんですよ。」
シルヴェストが答える。
「瞳の色‥?」
そう言ってサイラスはカロクの顎に手をかけ、その瞳を覗き込む。間近で交わる視線に、トクンとカロクの鼓動が跳ねた。しかし、やはりその瞳にはどこか苛立ちのようなものを感じる。何故だろう、と考えている間にサイラスの顔が遠ざかっていく。
「まぁ‥、初めて会った時より、鮮やかになっているからな。そんなもんくらいじゃもう隠せないだろう。」
そう言って、サイラスは一瞬だけカロクの頬に指を滑らせてから手を離した。たったそれだけの愛撫に、カロクは瞳を蕩けさせた。
「叔父上はカロクの幼少期をご存知なので?」
シルヴェストが問う。
「あぁ。オーヴァンを除けば、俺が1番初めに気づいただろうからな。」
「へぇ‥‥。カロクの幼少期ってどんな感じだったんですか?」
アウグストが問う。
「大人しい子供だったな。あと人を寄せ付けない。」
「今と変わらないって事ですね。」
サイラスの言葉に、エルネストが苦笑した。
「って事で、カロク借りていくぞ。」
「え‥?」
サイラスの言葉に、カロクが首を傾げる。
そんな用事あっただろうか、と考えている間に腕を捕まれ、椅子から立ち上がらせられる。
「ほら行くぞ。学園長が呼んでいる。」
サイラスはそう言うと、そのままカロクの腕を引いた。
24
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる