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長い沈黙が落ちる。
ベルナールは動揺していた。確かにここへはフィオニスを助けるために来た。邪な気持ちは一切ない。ただ、少しでも手を貸すことが出来ればと。だからフィオニスの不意に見せた隙に、色気に、たじろいだ。
魔神からは、フィオニスの精神は成人を迎えて間もないと聞いていた。だが、魔族達の前ではもちろんのこと、そのほかの立ち振る舞いに関しても、フィオニスは非常に堂々として魔王らしかったのだ。
侵攻を決めた時も淡々としており、落ち着いているように見えた。ただその瞳の奥に、僅かな葛藤が見え隠れしてはいたが。
しかし今、腕の中にいるのは魔王の仮面が剥がれたフィオニス自身だった。慣れていないのだと恥じらい、熱に喘ぐ姿は初々しくも多大な色気を孕んでいる。欲を教え、その顔を歪ませ、鳴かせたい。奥深くまで犯し、その瞳を快楽で濡らし、懇願させたい。そんな雄の凶暴な本能を煽るようだ。
いっそ淫靡に誘ってくれれば、ベルナールとて気負う事はなかったのだが。
それなのになお、フィオニスはベルナールの事を案じていた。熱に犯され、思考もままならないはずなのに。
ベルナールは再度、腕の中のフィオニスを見下ろす。鮮やかな赤い瞳が熱で湿り、思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
「‥フィオニス様。」
そう落として、ベルナールは思わず琥珀の瞳を歪ませた。
「あぁ‥‥、浅ましい私をどうか罰してください。」
「ベルナール‥?」
「私は確かに、貴方様に使って欲しくて馳せ参じました。少しでも、紛らわせる事が出来ればと。ですが‥」
ベルナールの眉間にグッとシワがより、その綺麗な顔を歪ませた。
「貴方様に触れたいと、思ってしまった。忘れたはずの欲を、抱いてしまった。こんな感情、許されるはずがないと言うのに。」
「ベルナール‥」
ベルナールは、欲を抱いた事自体恥じているようだった。と、同時にベルナールがそう言う欲をフィオニスへ抱いた事にも驚いた。
「‥‥可能性、か。」
フィオニスはポツリと呟く。
欲自体は、決して悪いことでは無い。生きていく上で必要なものだ。それを他者に強いることが、恥ずべき行為と言えよう。その結果生まれる憎悪。その人々の憎悪が、世界を堕落させたのだから。
「ベルナール。」
そう言ってフィオニスは、ベルナールの苦悩に歪むその頬へと手を伸ばす。
「‥‥‥貴方が構わないと言うのなら、触れてくれ。後悔しないと、そう思えるのなら。」
そう言ってフッと薄く笑えば、ベルナールの瞳が大きく開かれた。
「フィオニス、様‥ッ」
一瞬だけ泣きそうにその瞳を歪めると、ベルナールはフィオニスの肩口に額を埋める。
「魔神は、可能性と言った。だから欲自体は、悪いことでは無い。それに‥」
フィオニスは熱に潤む瞳を歪ませ、恥じるように1度瞼を伏せ、視線を逃がす。
「熱くて思考が定まらない‥。助けて、くれるのだろう‥?」
無意識に強請るような声色で、フィオニスはベルナールの耳元に息を吹き込んだ。
「‥‥ッ!!」
ベルナールの喉が、クッとなる。葛藤しているのだろう。
「もしあれなら、医療行為と思えばいい。あぁ、だが‥そうだな‥‥。無理強いは、出来ない‥。出来はしない、が‥」
そう言ってフィオニスはベルナールの顔をあげさせる。まつ毛が触れそうな距離でその琥珀を見つめれば、凶暴な雄の顔を覗かせていた。
「‥‥頼む。」
「‥‥ッ!!!」
クッとフィオニスが赤い果実のような瞳を歪ませたその瞬間、ベルナールは食らいつくようにフィオニスのその唇を奪った。
ベルナールは動揺していた。確かにここへはフィオニスを助けるために来た。邪な気持ちは一切ない。ただ、少しでも手を貸すことが出来ればと。だからフィオニスの不意に見せた隙に、色気に、たじろいだ。
魔神からは、フィオニスの精神は成人を迎えて間もないと聞いていた。だが、魔族達の前ではもちろんのこと、そのほかの立ち振る舞いに関しても、フィオニスは非常に堂々として魔王らしかったのだ。
侵攻を決めた時も淡々としており、落ち着いているように見えた。ただその瞳の奥に、僅かな葛藤が見え隠れしてはいたが。
しかし今、腕の中にいるのは魔王の仮面が剥がれたフィオニス自身だった。慣れていないのだと恥じらい、熱に喘ぐ姿は初々しくも多大な色気を孕んでいる。欲を教え、その顔を歪ませ、鳴かせたい。奥深くまで犯し、その瞳を快楽で濡らし、懇願させたい。そんな雄の凶暴な本能を煽るようだ。
いっそ淫靡に誘ってくれれば、ベルナールとて気負う事はなかったのだが。
それなのになお、フィオニスはベルナールの事を案じていた。熱に犯され、思考もままならないはずなのに。
ベルナールは再度、腕の中のフィオニスを見下ろす。鮮やかな赤い瞳が熱で湿り、思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
「‥フィオニス様。」
そう落として、ベルナールは思わず琥珀の瞳を歪ませた。
「あぁ‥‥、浅ましい私をどうか罰してください。」
「ベルナール‥?」
「私は確かに、貴方様に使って欲しくて馳せ参じました。少しでも、紛らわせる事が出来ればと。ですが‥」
ベルナールの眉間にグッとシワがより、その綺麗な顔を歪ませた。
「貴方様に触れたいと、思ってしまった。忘れたはずの欲を、抱いてしまった。こんな感情、許されるはずがないと言うのに。」
「ベルナール‥」
ベルナールは、欲を抱いた事自体恥じているようだった。と、同時にベルナールがそう言う欲をフィオニスへ抱いた事にも驚いた。
「‥‥可能性、か。」
フィオニスはポツリと呟く。
欲自体は、決して悪いことでは無い。生きていく上で必要なものだ。それを他者に強いることが、恥ずべき行為と言えよう。その結果生まれる憎悪。その人々の憎悪が、世界を堕落させたのだから。
「ベルナール。」
そう言ってフィオニスは、ベルナールの苦悩に歪むその頬へと手を伸ばす。
「‥‥‥貴方が構わないと言うのなら、触れてくれ。後悔しないと、そう思えるのなら。」
そう言ってフッと薄く笑えば、ベルナールの瞳が大きく開かれた。
「フィオニス、様‥ッ」
一瞬だけ泣きそうにその瞳を歪めると、ベルナールはフィオニスの肩口に額を埋める。
「魔神は、可能性と言った。だから欲自体は、悪いことでは無い。それに‥」
フィオニスは熱に潤む瞳を歪ませ、恥じるように1度瞼を伏せ、視線を逃がす。
「熱くて思考が定まらない‥。助けて、くれるのだろう‥?」
無意識に強請るような声色で、フィオニスはベルナールの耳元に息を吹き込んだ。
「‥‥ッ!!」
ベルナールの喉が、クッとなる。葛藤しているのだろう。
「もしあれなら、医療行為と思えばいい。あぁ、だが‥そうだな‥‥。無理強いは、出来ない‥。出来はしない、が‥」
そう言ってフィオニスはベルナールの顔をあげさせる。まつ毛が触れそうな距離でその琥珀を見つめれば、凶暴な雄の顔を覗かせていた。
「‥‥頼む。」
「‥‥ッ!!!」
クッとフィオニスが赤い果実のような瞳を歪ませたその瞬間、ベルナールは食らいつくようにフィオニスのその唇を奪った。
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