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子供達は、無理やり獣と融合された時に絶命していた。そこに魔石を埋め込み、生き物のように動かしていたに過ぎない。
生きた人形という点ではフィオニスが作り出す魔物と大差はないが、こちらの方がより醜悪だ。
「フィオニス様‥」
蹲っていたエクトールが不意に口を開く。
フィオニスが視線を落とせば、蹲ったまま視線をあげたエクトールの濁った瞳とかち合った。
「‥‥殺してください、私も。」
こいつもか、とフィオニスは思った。
フィオニスを呼び出した時点でその可能性に至っていた。それが勇者本人だと言うのならなおのこと。
キメラの事は、あわよくばと考えていたのだろう。人智を超えた存在ならば、死んだものを生き返らせる事も出来るだろうと。
もしそれが無理でも、歪な生から解放出来る。だから勇者はフィオニスを頼ったのだ。
「勇者の救いが魔王などと、笑えない冗談だな。」
そう言ってフィオニスは苦く笑うと、エクトールの両眼を覆うように顔面を掴んだ。
「残念だが、私はそこまで優しくはない。」
エクトールの耳元でそう落とすと、フィオニスは治癒の魔法を発動させた。
「ぐ、ぁ‥‥!!」
エクトールが呻く。
治癒の魔法とはいえ、フィオニスの魔力と勇者の魔力は相容れない。故に無理やり魔法を発動すれば、耐え難い苦痛を伴う。
「ぁ‥‥がっ‥!!」
バチバチと青白い光が弾ける。
瞳を焼くような痛みに襲われているはずだが、エクトールは苦しげな声を上げるだけで抵抗する事はなかった。
こんなものか、とフィオニスが手を離す。すると気を失ったエクトールがどサリと落ちた。
「軟弱者め。」
フンっとフィオニスは吐き捨てるように言った。しかしこれで失った視力は回復しただろう。
「‥可哀想だが、私が存在する限り君たちに安息はないんだよ。」
そう言って、フィオニスはその華奢な体を抱えあげた。
その時、ガシャンと別の靴音が鳴った。
「フィオニス様、処理が終わりました。」
そう言ってジークフリートが入室する。その頬には鮮血が散っていた。
「背後にいるのは、現在侵攻している王国の公爵と思われます。愚かにもフィオニス様を捕らえるつもりだったようです。」
次いでアルブレヒトが入室する。
その手には古代の文字が彫り込まれた重厚な鎖が握られていた。神代に作られた拘束具のようだ。ガシャリと鈍い音を立てて落ちるそれに、ディルムッドが眦を眇めた。
「それと魔道兵器が数体配置されておりました。ドワーフ製ではあるようですが、神代に遠く及ばぬガラクタです。」
ジークフリートが報告すると、ならばいらぬか、とフィオニスが零した。
「公爵本人はいなかったんだな?」
ディルムッドが問う。
「あぁ、そこまで愚かではなかったようだ。」
するとジークフリートがそう答えた。しかし、とアルブレヒトが続ける。
「そこのキメラと同じような存在が複数確認できた。どれも歪で、騎士たちの盾程度にしかならなかったが。」
その言葉を聞いて、ふむとフィオニスは考える。そしてツィっと視線を魔神へと向けた。
「魔神よ、この研究はどこまで進んでいる?」
「“見ての通りさ。”」
魔神は端的に答えた。
「簡単な戦闘は行えるが、大した練度はないと言うことか。強度もイマイチだな。
脅威にはならないが、気分のいいものではないな。」
そう言ってフィオニスはキメラ達に視線を落とす。そしてそれを主導しているであろう公爵を思い浮かべて、微かに口角をあげた。
「その公爵というのは、さぞ食いでのある魂をしているのだろうよ。」
言葉の端に不穏な響きを滲ませながら、ククっと喉の奥で笑う。その笑みは今まで見たフィオニスのどの笑みとも違う、暗く凶悪な笑みだった。
生きた人形という点ではフィオニスが作り出す魔物と大差はないが、こちらの方がより醜悪だ。
「フィオニス様‥」
蹲っていたエクトールが不意に口を開く。
フィオニスが視線を落とせば、蹲ったまま視線をあげたエクトールの濁った瞳とかち合った。
「‥‥殺してください、私も。」
こいつもか、とフィオニスは思った。
フィオニスを呼び出した時点でその可能性に至っていた。それが勇者本人だと言うのならなおのこと。
キメラの事は、あわよくばと考えていたのだろう。人智を超えた存在ならば、死んだものを生き返らせる事も出来るだろうと。
もしそれが無理でも、歪な生から解放出来る。だから勇者はフィオニスを頼ったのだ。
「勇者の救いが魔王などと、笑えない冗談だな。」
そう言ってフィオニスは苦く笑うと、エクトールの両眼を覆うように顔面を掴んだ。
「残念だが、私はそこまで優しくはない。」
エクトールの耳元でそう落とすと、フィオニスは治癒の魔法を発動させた。
「ぐ、ぁ‥‥!!」
エクトールが呻く。
治癒の魔法とはいえ、フィオニスの魔力と勇者の魔力は相容れない。故に無理やり魔法を発動すれば、耐え難い苦痛を伴う。
「ぁ‥‥がっ‥!!」
バチバチと青白い光が弾ける。
瞳を焼くような痛みに襲われているはずだが、エクトールは苦しげな声を上げるだけで抵抗する事はなかった。
こんなものか、とフィオニスが手を離す。すると気を失ったエクトールがどサリと落ちた。
「軟弱者め。」
フンっとフィオニスは吐き捨てるように言った。しかしこれで失った視力は回復しただろう。
「‥可哀想だが、私が存在する限り君たちに安息はないんだよ。」
そう言って、フィオニスはその華奢な体を抱えあげた。
その時、ガシャンと別の靴音が鳴った。
「フィオニス様、処理が終わりました。」
そう言ってジークフリートが入室する。その頬には鮮血が散っていた。
「背後にいるのは、現在侵攻している王国の公爵と思われます。愚かにもフィオニス様を捕らえるつもりだったようです。」
次いでアルブレヒトが入室する。
その手には古代の文字が彫り込まれた重厚な鎖が握られていた。神代に作られた拘束具のようだ。ガシャリと鈍い音を立てて落ちるそれに、ディルムッドが眦を眇めた。
「それと魔道兵器が数体配置されておりました。ドワーフ製ではあるようですが、神代に遠く及ばぬガラクタです。」
ジークフリートが報告すると、ならばいらぬか、とフィオニスが零した。
「公爵本人はいなかったんだな?」
ディルムッドが問う。
「あぁ、そこまで愚かではなかったようだ。」
するとジークフリートがそう答えた。しかし、とアルブレヒトが続ける。
「そこのキメラと同じような存在が複数確認できた。どれも歪で、騎士たちの盾程度にしかならなかったが。」
その言葉を聞いて、ふむとフィオニスは考える。そしてツィっと視線を魔神へと向けた。
「魔神よ、この研究はどこまで進んでいる?」
「“見ての通りさ。”」
魔神は端的に答えた。
「簡単な戦闘は行えるが、大した練度はないと言うことか。強度もイマイチだな。
脅威にはならないが、気分のいいものではないな。」
そう言ってフィオニスはキメラ達に視線を落とす。そしてそれを主導しているであろう公爵を思い浮かべて、微かに口角をあげた。
「その公爵というのは、さぞ食いでのある魂をしているのだろうよ。」
言葉の端に不穏な響きを滲ませながら、ククっと喉の奥で笑う。その笑みは今まで見たフィオニスのどの笑みとも違う、暗く凶悪な笑みだった。
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