私が世界を壊す前に

seto

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フィオニスが願っている事は分かった。
だが果たしてそれをこの小さな勇者達が叶える事が出来るのだろうか。
エクトールはその疑問をそのまま口にした。
「‥君は、君達は、彼を殺す事が出来るのか?」
それは実力的にという意味ではない。精神的に、それが可能なのかどうか。
事実エクトールは、フィオニスに剣を向ける気には到底なれなかった。
するとフリードリヒはニヤリと笑みを歪めた。
「殺す必要がありますか?」
「何‥‥?」
ずいとフリードリヒは机の上に身を乗り出した。
「フィオニス様は、誰が見ても良き王です。同時に多くの人間を殺してはいますが、そのどれもが救えないほど愚かな人達ばかり。なら、その行いを正す必要はないでしょう?」
「だが、魔王は死ぬことを願っているんだろう?」
「フィオニス様には申し訳ありませんが、僕達はフィオニス様を倒すつもりはないんです。」
そう言ってフリードリヒは無邪気に笑う。
「知ってますか、エクトール様。 勇者は魔王を倒すまで死ぬ事は出来ない。それは寿命という概念すらもないと言うことです。」
「何が言いたい‥?」
「ある程度体が成熟すれば、成長は止まります。老いることはない。という事は、我々が行動を起こさなければ、ずっとフィオニス様と共にあれると言うことです。」
そう続けて、フリードリヒはうっとりと微笑んだ。
「フィオニス様が作る優しい世界をフィオニス様と共に守る。それほどの幸福がどこにあると言うのでしょう?」
フリードリヒの言葉に、エクトールは納得する。あぁこの子も歪んでしまっているのだ、と。

フィオニスは言った。
お前より悲惨なものはいくらでもいる、と。彼らもまた、被害者なのだろう。神の加護を呪いと呼び、そこから救いあげた魔王を敬愛する。そこまで歪んでしまう程に。
だが、それもいいかもしれないとエクトールは思った。この平和な国の発展を助ける。確かに幸せな事なのかもしれない。
ククッとエクトールは自嘲した。
奇しくもかつて自分が望んだ国作りではないか。そんなエクトールの様子をフリードリヒは満足気に見つめた。
「‥確かに、君の言う通りだ。この優しい国を壊す必要などない。むしろ、守らねば。」
フッとエクトールが笑みを浮かべれば、フリードリヒがにっこりと笑った。
「それに、フィオニスには私達を救った責任を取ってもらわないとな?」
そうエクトールが続ければ、無表情だったシリウスもその口元に微かに笑みを浮かべた。
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