私が世界を壊す前に

seto

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朝と夜は勇者達と食事をする事がフィオニスの日課となっている。今日、そこにエクトールが加わる。久々に会ったエクトールは、初めて会った時の悲壮感が消え、どこか吹っ切れたような顔をしていた。
日々ぼんやりと過ごしていると聞いていたが、この間のフリードリヒ達との邂逅でいい方に変化したらしい。

思えば、シリウスもフリードリヒも明るくなったように思う。特にシリウスは、表情こそ乏しいが感情表現ができるようになったし、何より普通に喋れるまでに回復していた。2人には基本的な教養とマナーを学んで貰っている。学問に関しては、フリードリヒはかなり偏った知識しかないようで、日々新鮮な気持ちで学んでいるようだ。今日は何を学んだ、今日は何が出来るようになった、など日々の報告を聞きながら食事を共にしている。
報告が終わると、2人はいつもどこか期待に満ちた眼差しでフィオニスを見上げる。まるで褒め待ちの犬のようで、フィオニスは内心苦笑する。
「よく、やったな。」
そう言って、いつもフィオニスは目元を微かに緩めてシリウスとフリードリヒの頭を撫でる。すると2人は嬉しそうにその頬を紅潮させるのだった。

フィオニスは今日もいつものように報告を聞き、2人の頭を撫でる。するとエクトールが驚いたようにフィオニスを見つめた。
「‥そんな、柔らかな表情も出来るのですね。」
エクトールが独り言のようにポツリと落とした。
「馴れ合っているという事は、私も理解している。だがそうしなければ、お前達は‥。」
続く言葉は、音にはならなかった。
本来勇者とはこの世界を平和に導く存在だ。虐げられていい存在では無い。そもそも虐げられてもいい存在などこの世にはないのだが。
「‥‥明日、我々は3つの国を落とす。」
フィオニスが静かに告る。
「多くの人間が死ぬだろう。善も悪もな。だが、慈悲などかけてやるつもりは無い。」
そうフィオニスは言うが、エクトールはフィオニスが十分慈悲深い存在だと理解していた。それは、フリードリヒの言葉だけでは無い。街を見て、人と話してそう判断した。事実2人の勇者は、そのフィオニスの言葉に動揺している様子はないようだ。
死んで当たり前とすら思っていそうだ。かく言うエクトールも、同じなのだが。

「フィオニス様。」
エクトールが言う。
「‥何だ。」
「私も、連れて行っては頂けませんか?」
エクトールの言葉に、フィオニスは片眉をひきあげた。
「お前に出来ることなどないぞ。」
「理解しております。」
では何故、とフィオニスの目が語る。
エクトールはフッと苦笑して口を開いた。
「都市のひとつに、私を利用していた公爵がいるでしょう。彼の最後を見届けたいのです。」
そう続ければ、クッとフィオニスの眉にシワが寄った。
「‥いいだろう。なんなら、そいつの最後もくれてやる。」
「いりません。ただ、見届けたいだけですので。」
続く言葉に、フィオニスは眉間のシワを解いた。そしてフッと長いまつ毛を伏せて
「‥‥そうか。」
と、僅かに目元を緩めた。
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