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第二十三章 未来に戻る
私は敵じゃない
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少し肌寒く、身動ぎしたら何やらふわふわなのが私の背中を支えてくれる。
温かい……。そう思って目を開けると、私は怪我をしているジョセフさんのお腹を枕替わりにして寝ていた。
背中を支えているふわふわなのが尻尾だった。
ジョセフさんは不機嫌そうに「起きた」と言っていて、全力で謝った。
「ご、ごめんなさい!! 怪我してるのに、なんてことを」
落ち込んでいるとジョセフさんは呆れたような顔になる。
「もう傷口は塞がってる。それよりも、置かれている状況分かってるの?」
「置かれてるって」
私はそこで眠る前の出来事を思い出した。今いる場所は牢屋だ。それに、私の知っている人物の面影と同姓同名な子供。
「あの。ここはどこなのでしょうか?」
「……過去のようだ。おかげでごっそりと魔力が消耗してしまって思うように動かせない」
「過去……? でもジョセフさんは時空を越えられないんじゃ」
「言っただろう、呪文を間違えたって。その呪文がたまたま時空を越える系だったらしい。呪文で魔法の威力や難易度も変わってくるが……闇属性に反応したんだろう。間違えた呪文と闇属性が反応して、通常では有り得ない事が起こった」
「そんなこと、あるんですか?」
「俺は悪魔なんだ。使える術は闇に近い。波長が合うのは必然的だ」
当然だ! とでも言うようにジョセフさんは胸を張って威張っている。
さっきまで気が動転してて気にならなかったのだが、以前と比べて口調が変わってた。
「なんだか、口調が変わってますね」
「嫌か?」
「いいえ、ジョセフさんの言いやすい方でいいですよ。前の口調は慣れてない感じがしてましたし」
ふふっと微笑むと、ジョセフさんは顔を背けた。
私は今いる場所と状況を整理する為に言葉にした。ジョセフさんにも聞いてほしいし。
「今いる場所って……王城? え、じゃああの子供はアレン王太子殿下ということ!?」
「そのようだ」
じゃあじゃあ、護衛していた男の子は、私の知っているキースさん。でもそれならオリヴァーさんは?
そもそもあのアレン様は何歳!? かなり幼かったわよね。しかも性格も穏やかよりも少しやんちゃそうだし……。
頭が痛くなってきた。
「……お前は表情がコロコロ変わるんだな」
「昔から感情が表に出やすいようで……必死に出さないようにしてるんですが、なかなか難しくて」
そう、感情が表に出やすい。すぐに私の表情を見て何かを感じ取るんだよ。みんな。
私には演技の才能も感情をコントロールすることさえ出来ないらしい。
はぁ……と、ため息をしてると、声をかけてきた人物がいたので私は声のする方へ向ける。
「出ろ」
そう言った人物はオリヴァーさんの面影がある。口調は冷たいし、冷ややかな目で私を見ている。
こんなに違うのか。私を護衛してくれた時のオリヴァーさんはとても優しくて何よりも気さくだった。
それはキースさんも同じか。今のオリヴァーさんとキースさんは私を見る目はまるで……犯罪者を見るようなんだもん。
私はゆっくりと立ち上がった。ジョセフさんの身体を持ち上げてギュッと抱きかかえる。
「!? お、おい!?」
「抱きしめさせてください。……怖いんだもん」
「……抱き枕じゃないんだが」
「知ってます」
ジョセフさんは最初は暴れたけど、すぐに大人しくなった。
私はオリヴァーさんに言われるがまま、牢屋から出ると念の為に私とジョセフさんに魔力封じの枷を嵌める。
「王様がお呼びだ。抵抗するなよ」
歩きながらも行先を教えてくれるけど、やっぱりその冷たい態度には慣れなくて本音を言ってしまった。
「……抵抗はしません。ただ、冷たい視線を向けるのはやめてください。慣れてないので」
オリヴァーさんは私の言葉に首を傾げたがすぐに何かを納得して口を開いた。
「?? お前、王族の命を狙ってるのに気弱なんだな。ああ、でも女なら気の弱いフリして誘惑も可能か」
その言葉に立ち止まって俯く。急に立ち止まったから不機嫌そうにオリヴァーさんが強引に私の腕を掴もうとした。
私は、オリヴァーさんの腰につけてある短剣に狙いを定めて、奪い取る。
一瞬の隙をつかれたオリヴァーさんは動揺したが、私は構わず足蹴りをして転ばせる。
すると、オリヴァーさんは後ろに倒れ、体制を立て直す前に首元に刃を当てる。
「女だからって、誰にでも誘惑するなんて思わないで。女だからって関係ない。それに……私は誰も殺したくなんてない。決めつけないでよ、私は敵じゃない」
信じてくれないのは知っている。だって信ぴょう性なんて無いもの。
それでも、信じてほしい。涙をボロボロと流す。それでも必死に訴える。
オリヴァーさんが混乱しながらも口を開いた。
「敵じゃないって……、この状況で言われても」
言われて気付いた。今の状況で敵じゃないって言われても信じられないはずだと。
いや、だって……仮にもアレン様の護衛騎士、こんな素人に簡単に短剣を奪わるなんて思わなかった。
ついイラッとして、体が勝手に。
しかも短剣を持つと同時にジョセフさんを放してしまったので、少し寂しさがある。
身体能力はあんまり無いけど、人って腹が立つと普段とは違う力を発揮するのね。
「仮にも王族に仕えてる方なので、簡単に短剣を奪えるなんて思わなくて……その」
私は目を泳がしていると、吹き出しながら笑っている人物がいた。
その声の方を向くと、丁度大きな扉があって、扉を少し開けて私とオリヴァーさんを見ながらも涙目で笑っているアレン様がいた。
「強いな。オリヴァーを倒すとは、しかもお情けもかけるなんて」
……あらぬ誤解を生んでしまった。
温かい……。そう思って目を開けると、私は怪我をしているジョセフさんのお腹を枕替わりにして寝ていた。
背中を支えているふわふわなのが尻尾だった。
ジョセフさんは不機嫌そうに「起きた」と言っていて、全力で謝った。
「ご、ごめんなさい!! 怪我してるのに、なんてことを」
落ち込んでいるとジョセフさんは呆れたような顔になる。
「もう傷口は塞がってる。それよりも、置かれている状況分かってるの?」
「置かれてるって」
私はそこで眠る前の出来事を思い出した。今いる場所は牢屋だ。それに、私の知っている人物の面影と同姓同名な子供。
「あの。ここはどこなのでしょうか?」
「……過去のようだ。おかげでごっそりと魔力が消耗してしまって思うように動かせない」
「過去……? でもジョセフさんは時空を越えられないんじゃ」
「言っただろう、呪文を間違えたって。その呪文がたまたま時空を越える系だったらしい。呪文で魔法の威力や難易度も変わってくるが……闇属性に反応したんだろう。間違えた呪文と闇属性が反応して、通常では有り得ない事が起こった」
「そんなこと、あるんですか?」
「俺は悪魔なんだ。使える術は闇に近い。波長が合うのは必然的だ」
当然だ! とでも言うようにジョセフさんは胸を張って威張っている。
さっきまで気が動転してて気にならなかったのだが、以前と比べて口調が変わってた。
「なんだか、口調が変わってますね」
「嫌か?」
「いいえ、ジョセフさんの言いやすい方でいいですよ。前の口調は慣れてない感じがしてましたし」
ふふっと微笑むと、ジョセフさんは顔を背けた。
私は今いる場所と状況を整理する為に言葉にした。ジョセフさんにも聞いてほしいし。
「今いる場所って……王城? え、じゃああの子供はアレン王太子殿下ということ!?」
「そのようだ」
じゃあじゃあ、護衛していた男の子は、私の知っているキースさん。でもそれならオリヴァーさんは?
そもそもあのアレン様は何歳!? かなり幼かったわよね。しかも性格も穏やかよりも少しやんちゃそうだし……。
頭が痛くなってきた。
「……お前は表情がコロコロ変わるんだな」
「昔から感情が表に出やすいようで……必死に出さないようにしてるんですが、なかなか難しくて」
そう、感情が表に出やすい。すぐに私の表情を見て何かを感じ取るんだよ。みんな。
私には演技の才能も感情をコントロールすることさえ出来ないらしい。
はぁ……と、ため息をしてると、声をかけてきた人物がいたので私は声のする方へ向ける。
「出ろ」
そう言った人物はオリヴァーさんの面影がある。口調は冷たいし、冷ややかな目で私を見ている。
こんなに違うのか。私を護衛してくれた時のオリヴァーさんはとても優しくて何よりも気さくだった。
それはキースさんも同じか。今のオリヴァーさんとキースさんは私を見る目はまるで……犯罪者を見るようなんだもん。
私はゆっくりと立ち上がった。ジョセフさんの身体を持ち上げてギュッと抱きかかえる。
「!? お、おい!?」
「抱きしめさせてください。……怖いんだもん」
「……抱き枕じゃないんだが」
「知ってます」
ジョセフさんは最初は暴れたけど、すぐに大人しくなった。
私はオリヴァーさんに言われるがまま、牢屋から出ると念の為に私とジョセフさんに魔力封じの枷を嵌める。
「王様がお呼びだ。抵抗するなよ」
歩きながらも行先を教えてくれるけど、やっぱりその冷たい態度には慣れなくて本音を言ってしまった。
「……抵抗はしません。ただ、冷たい視線を向けるのはやめてください。慣れてないので」
オリヴァーさんは私の言葉に首を傾げたがすぐに何かを納得して口を開いた。
「?? お前、王族の命を狙ってるのに気弱なんだな。ああ、でも女なら気の弱いフリして誘惑も可能か」
その言葉に立ち止まって俯く。急に立ち止まったから不機嫌そうにオリヴァーさんが強引に私の腕を掴もうとした。
私は、オリヴァーさんの腰につけてある短剣に狙いを定めて、奪い取る。
一瞬の隙をつかれたオリヴァーさんは動揺したが、私は構わず足蹴りをして転ばせる。
すると、オリヴァーさんは後ろに倒れ、体制を立て直す前に首元に刃を当てる。
「女だからって、誰にでも誘惑するなんて思わないで。女だからって関係ない。それに……私は誰も殺したくなんてない。決めつけないでよ、私は敵じゃない」
信じてくれないのは知っている。だって信ぴょう性なんて無いもの。
それでも、信じてほしい。涙をボロボロと流す。それでも必死に訴える。
オリヴァーさんが混乱しながらも口を開いた。
「敵じゃないって……、この状況で言われても」
言われて気付いた。今の状況で敵じゃないって言われても信じられないはずだと。
いや、だって……仮にもアレン様の護衛騎士、こんな素人に簡単に短剣を奪わるなんて思わなかった。
ついイラッとして、体が勝手に。
しかも短剣を持つと同時にジョセフさんを放してしまったので、少し寂しさがある。
身体能力はあんまり無いけど、人って腹が立つと普段とは違う力を発揮するのね。
「仮にも王族に仕えてる方なので、簡単に短剣を奪えるなんて思わなくて……その」
私は目を泳がしていると、吹き出しながら笑っている人物がいた。
その声の方を向くと、丁度大きな扉があって、扉を少し開けて私とオリヴァーさんを見ながらも涙目で笑っているアレン様がいた。
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……あらぬ誤解を生んでしまった。
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