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第十章⠀深紅の魔術士
ヒロインは転生者でした
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とりあえず頭の中がパニック状態なので整理した。
ヒロインが転生者。前世は声優アーティストの皐月さんだった。
…………そんな訳はないでしょう。成りすましとかそんな感じなのかな。
声優さんとは遠い存在だと思ってるし、いくら転生したとはいえ、奇跡に近い巡り合わせなんて信じられるわけがない。
今、目の前にいるこの人だって皐月さんに憧れて真似てるだけ。
だけど、私と同じ転生者なら、もしかしたら私の味方になってくれるかも。
助けてくれるかもしれない。今はその希望を信じるしかない。
それよりも肝心なことはまだわかってない。
「この世界での主人公がどうして男なんですか!?」
おかしいよね。ヒロインは女性。でも目の前にいる人は間違いなく男性。
そもそもヒロインじゃない説も考えられるけど、ノエルとヒロインが初対面を果たした場所はゲームのシナリオと同じだった。
でも、ノエルは女性ではなく、男性のクロエ様と会ったって言っていたから、ノエルの言っているクロエ様がこの人なら……。
「特殊な魔法を使えます。それこそ……性別を変えるほどに」
クロエ様は立ち上がり、私から少しだけ距離を置くと光に包まれた。
光が消えると私は驚いてベンチから立ち上がった。
そこに居たのは、男性ではなく女性。ゲームのヒロインそのものだった。
ショートウルフの茶色の髪。クリっとしている大きな紅い色の目。
狼のたてがみのようなシルエットがかっこいい髪型で、丸顔で童顔でもあるが、瞳は艶っぽくどことなく色気がある。
ツリ目ではないというのに色気がある瞳を見ると、ヒロインなんだなって実感してしまう。
前世の世界だったらモデル業やアイドル、俳優にだって慣れそう。
存在自体が神ってるんだもん。『尊い』と見た瞬間に思ってしまった。
体型も女性特有のものだった。
男性の姿でもショートウルフだったけど、女性の姿だと美しさがまた違うな。
「これで納得しました?」
その声はさっきまでの男性の声だった人物とは思えない。
女性の声だった。
「納得……しました」
納得するしかない。だって、目の前で性別を変えられたんだから。
「それは良かった」
クロエ様の身体は光に包まれ、光が消えると女性から男性になっていた。
「もう少し、話したかったのですが……、残念お迎えのようですね」
「お迎え??」
クロエ様がある場所に集中して見ていたので私はその方向へと視線を向ける。
ポソッと私はその人物を呼んだ。
「殿下」
「やっと見つけた」
殿下は私たちに近付くと、クロエ様は右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出すようにあいさつをする。
ボウ・アンド・スクレープって呼ばれてるのよね。
私は片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたままあいさつをする。
カーテシーと呼ばれている。
女性と男性ではあいさつの仕方が違うから、覚えたての時はかなり混乱したっけ。
「クロエ殿はパーティーに参加しないのかい?」
殿下はクロエ様のことを知ってるんだね。深紅の魔術士なのだからすぐに殿下の耳にも届くか。
「参加します。ですが、ここの庭があまりにも魅力的だったものでパーティーを忘れて夢中になってしまいました」
「そうか。話してるところ申し訳ないんだがソフィア嬢を借りてもいいかな」
「はい」
クロエ様は頷くと、すぐにパーティー会場の方へ歩きだした。
クロエ様が見えなくなってから殿下は私に話しかけた。
「急に居なくなるから心配した」
「……申し訳ありません」
他の貴族たちと楽しそうに話してるから邪魔するのは申し訳ないと思ったから……なんて、私の言い訳ね。
一言でもいいから伝えれば良かった。
心配されるなんて、思ってもみなかった。
犯罪に近い出来事はおこらないと思ったし、学園内は強力な結界が張られている。
命に関わる危険はないと判断したから出歩いたんだけど。
以前、誘拐事件があったから心配してくれてるんだろうな。
護衛騎士も居ないから余計か。
「心配した意味をわかってるのかな。……女性が夜に一人で出歩くのは危ないんだ。全員が紳士ではないんだよ」
紳士では無い?
どういう意味……??
「き、肝に銘じます」
殿下は深いため息をつくと「やれやれ、困った子だな」と呆れたように言われてしまった。
ヒロインが転生者。前世は声優アーティストの皐月さんだった。
…………そんな訳はないでしょう。成りすましとかそんな感じなのかな。
声優さんとは遠い存在だと思ってるし、いくら転生したとはいえ、奇跡に近い巡り合わせなんて信じられるわけがない。
今、目の前にいるこの人だって皐月さんに憧れて真似てるだけ。
だけど、私と同じ転生者なら、もしかしたら私の味方になってくれるかも。
助けてくれるかもしれない。今はその希望を信じるしかない。
それよりも肝心なことはまだわかってない。
「この世界での主人公がどうして男なんですか!?」
おかしいよね。ヒロインは女性。でも目の前にいる人は間違いなく男性。
そもそもヒロインじゃない説も考えられるけど、ノエルとヒロインが初対面を果たした場所はゲームのシナリオと同じだった。
でも、ノエルは女性ではなく、男性のクロエ様と会ったって言っていたから、ノエルの言っているクロエ様がこの人なら……。
「特殊な魔法を使えます。それこそ……性別を変えるほどに」
クロエ様は立ち上がり、私から少しだけ距離を置くと光に包まれた。
光が消えると私は驚いてベンチから立ち上がった。
そこに居たのは、男性ではなく女性。ゲームのヒロインそのものだった。
ショートウルフの茶色の髪。クリっとしている大きな紅い色の目。
狼のたてがみのようなシルエットがかっこいい髪型で、丸顔で童顔でもあるが、瞳は艶っぽくどことなく色気がある。
ツリ目ではないというのに色気がある瞳を見ると、ヒロインなんだなって実感してしまう。
前世の世界だったらモデル業やアイドル、俳優にだって慣れそう。
存在自体が神ってるんだもん。『尊い』と見た瞬間に思ってしまった。
体型も女性特有のものだった。
男性の姿でもショートウルフだったけど、女性の姿だと美しさがまた違うな。
「これで納得しました?」
その声はさっきまでの男性の声だった人物とは思えない。
女性の声だった。
「納得……しました」
納得するしかない。だって、目の前で性別を変えられたんだから。
「それは良かった」
クロエ様の身体は光に包まれ、光が消えると女性から男性になっていた。
「もう少し、話したかったのですが……、残念お迎えのようですね」
「お迎え??」
クロエ様がある場所に集中して見ていたので私はその方向へと視線を向ける。
ポソッと私はその人物を呼んだ。
「殿下」
「やっと見つけた」
殿下は私たちに近付くと、クロエ様は右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出すようにあいさつをする。
ボウ・アンド・スクレープって呼ばれてるのよね。
私は片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたままあいさつをする。
カーテシーと呼ばれている。
女性と男性ではあいさつの仕方が違うから、覚えたての時はかなり混乱したっけ。
「クロエ殿はパーティーに参加しないのかい?」
殿下はクロエ様のことを知ってるんだね。深紅の魔術士なのだからすぐに殿下の耳にも届くか。
「参加します。ですが、ここの庭があまりにも魅力的だったものでパーティーを忘れて夢中になってしまいました」
「そうか。話してるところ申し訳ないんだがソフィア嬢を借りてもいいかな」
「はい」
クロエ様は頷くと、すぐにパーティー会場の方へ歩きだした。
クロエ様が見えなくなってから殿下は私に話しかけた。
「急に居なくなるから心配した」
「……申し訳ありません」
他の貴族たちと楽しそうに話してるから邪魔するのは申し訳ないと思ったから……なんて、私の言い訳ね。
一言でもいいから伝えれば良かった。
心配されるなんて、思ってもみなかった。
犯罪に近い出来事はおこらないと思ったし、学園内は強力な結界が張られている。
命に関わる危険はないと判断したから出歩いたんだけど。
以前、誘拐事件があったから心配してくれてるんだろうな。
護衛騎士も居ないから余計か。
「心配した意味をわかってるのかな。……女性が夜に一人で出歩くのは危ないんだ。全員が紳士ではないんだよ」
紳士では無い?
どういう意味……??
「き、肝に銘じます」
殿下は深いため息をつくと「やれやれ、困った子だな」と呆れたように言われてしまった。
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