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第十二章 動き始めた……○○フラグ

気分転換にはやっぱりロマンス小説でしょ!

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 や、やっと見つけた……。

 若干息切れしながらも目的地の扉を押す。

 ーー図書室。

 歩いて五分もかからない場所なのだが、広い学園内では迷子になってしまって三十分も探してしまった。

 学園は休校の日でほとんどの生徒は帰っている。

 帰るか帰らないかは自由……、ということは無い。

 魔術士の子供だけは卒業するまで帰れない。

 私のように瞬間魔法で屋敷に帰れる人は別だが。

 帰宅途中で襲われたり誘拐されたりする恐れがあるから仕方ないんだけど。

 私以外の魔術士の子供の学園入学時は、護衛付きだったから何事もなく入学出来たんだ。トラブルに巻き込まれないようにとのことだ。

 定期的に護衛を付ける訳にはいかないから入学と卒業までしか帰ることを許されない。

 それにしてもノエルには悪いことしたかなぁ。

 私自身、行きたい場所があったので帰ることを拒んだらものすごく落ち込んでたのよね。

 だけど、これだけは譲れない。

 ここには一人で落ち着いて来たかったんだ。

 ずっと行きたかった学園の図書室!!

 書架が林のように並んでいる。古びた本の匂い。ああ、落ち着く……。

 それがシャンデリアや銅像が無ければ、もっと良かったのに。

 貴族らしいといえばそうなんだけど、豪華すぎるのよね。それもそのうち慣れるだろうけど。

 さて、今日はロマンス小説を読むぞー! そのためにノエルには先に帰ってもらったんだから!!

 最近色々と思い詰めてることが多いから息抜きが必要だと思った。

 実際に悩みすぎて頭が痛かったからね。何もかも忘れて現実逃避がしたい。

 たまにはこういう日もあっていいよね。

 休校とはいえ、全校生徒が帰ってる訳ではないから数人ほど書庫室で小声で話してたり読書をしたり、勉強したりしていた。

 図書室だけではなく、他の場所でもちらほら居る。

 私は図書室内を歩き、気になるロマンス小説がないか探した。

「怪盗ものだ……」

 気になった本が手を伸ばせば届くか届かないかの棚にあって、背伸びをしながら必死に手を伸ばす。

 もう少しなのに!? そうだ、梯子があれば。

 梯子の存在を思い出した時だった、横から手が伸びてきて気になっていた本を取られてしまった。

 気になった本なだけに先に取られてしまったことに若干落ち込む……。

 仕方ないから他の本を探そうと思っていると声をかけられた。

「はい、これ……取りたかったんでしょ?」
「え」

 私は声の主の顔を見た瞬間、固まってしまった。

 赤紫色の髪に緑色の瞳。見間違えるわけが無いんだ。

 さっきまで貴族の話し声が聞こえていたのに今は時が止まったように静かに感じる。

 自然と目頭が熱くなって、涙が頬を伝って下に落ちる。

 ーーお父様……。

 そこに居たのは、私の本当の親だった。

 父親は死んでるはず、他人の空似??

「大丈夫?」

 怪訝そうに見てくるので、私は涙を急いで拭いた。

「大丈夫です。知り合いに似ていたもので」
「そうか」

 本を渡してきたので、自然な流れで受け取った。

 受け取る時に手が触れた瞬間、ピリッと全身を勢いよく何かが通り過ぎた。

 痺れるような痛みが走ったので静電気のような弱めな電撃が通り過ぎたんだろう。

「あの、あなたは……」

 ーーズキンッ。

「~~っ!?」

 誰なのかを聞こうとしたらいきなり頭痛がして頭を抑えた。

「どこか具合が悪いのか?」

 父親に似ている人が心配して私に触れようとしたその時、誰かが彼の手を払った。

「すみませんが、約束があるもので」

 ショートウルフの茶色い髪。紅い瞳で敵意むき出しで父親似の男性を睨んでいる。

 私を庇うように前に出ている。

 いつもより低めの声に驚きつつも私はその人の名前を呼ぶ。

「ク、クロエ様!?」

 クロエ様は何も言わずに私の手を引いてその場から離れる。



 図書室を出ると、クロエ様は立ち止まった。

「……あの人には気をつけて。あと、伝えてないことがあったので探していました」
「伝えてないこと?」
「まだ先だと思って油断してました。こんなに早く会いに来るとは。攻略対象者には隠しキャラがいるんです。……それがさっき会った人なのですが、とても厄介で……」
「??」

 あれ、おかしい。

 声が遠くに感じる。距離はこんなに近いのに……。

 それにさっきよりも頭痛が酷くなっていく。

 ダメだ……。大切なことを伝えようとしているのに、ちゃんと聞き取れない。

 視界が歪んで、視点が合わない。

 力が抜けたようにその場に倒れた。

 意識が遠のく中、困惑と焦りが混ざった声で私を呼ぶクロエ様の声が聞こえた。


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