145 / 236
第十四章 悪役令嬢
全てが呪いのせいだと言うならば……、俺の気持ちも?【アレン視点】
しおりを挟む
目を覚ませばどうしようもなく哀愁を感じてしまう。
とっても長い夢を見ていたみたいだ。心の中にいた何が失ってとても哀しくなる。
これでハッキリしたことがある。何回も同じルートを繰り返し悪夢として見ていたことによって、ソフィア嬢に偏見な目で見ていたんだ。
……ソフィア嬢に婚約申し込んだのも『興味があるから』ではなく、『そうしないといけない』と思ったからだ。
興味があるのは間違いではないが、婚約をしてまでという程ではなかった。
それが当初の婚約の申立てだったなんて、笑えてしまう。
その事に疑問はあったが、た・だ・の・気・の・迷・い・なのだと思い、深く考えることはなかった。
これが全て呪いのせいだと言うならば、俺のソフィア嬢を想う気持ちも呪い……なのか。
いや、そう思いたくは無い。この気持ちに嘘はないはずだ。
上半身を起こし、ソフィア嬢を見れば彼女も悲しそうな表情をしていた。
ーー呪いは終わった。
そう思うのに、とても虚しい。俺は常に感情を表に出さないようにしてきた。
……してきたのに、ソフィア嬢の顔を見るとホッとして素が出そうになる。
そうじゃなくても、ソフィア嬢の前だとどうしても素が出てきてしまうのが困るところ。
この虚しさはなんだ? っと、考えると悪夢で見ているソフィア嬢が消えたからなのかも知れない。
何回も見ているので、情が残ってしまったのかも。
呪いはもう解けた。……解けたんだ。それは喜ばしいことだ。
人肌が恋しくてとかでは無い。喜びをソフィア嬢と一緒に分かち合いたいが為の抱擁だ。
戸惑うソフィア嬢を隣にこさせて、抱き締める。
艶のある髪からはほのかに薔薇の匂いがした。動かせないように頭と腰を固定するように手を回す。
ーー落ち着く。
心が癒される。気持ちが和らげる。
本来ならば婚約者でもないのに抱擁はタブーだろう。
でも今は、誰も居ない空中庭園の中にいる。誰にも見られない。
そう思うのは俺だけかも知れないけど。本気で拒むことの出来ないソフィア嬢に「しばらく、こうさせてくれないか」とお願いしてしまった。
ソフィア嬢が困ってるのをわかってるが、抱き締めたかった。誰でもいい訳ではなく、ソフィア嬢だから抱き締めて温もりを感じたかった。
不思議だな。感情を抑えることが出来ないなんて。普段なら、常に作り笑顔を浮かべて愛想良く出来るというのに。
ソフィア嬢絡みだとそれがなかなか出来ない。
ーー恋は盲目と言うが……。
まさか俺がそうなってしまうとは。
「……ありがとう。ごめんね」
ずっと抱き締めたかったけど流石にそれは出来ないので渋々ソフィア嬢を放した。
ソフィア嬢は耳まで真っ赤になった顔の頬に両手で添える。
隣に座る。
「あっ、い……いえ」
そんなソフィア嬢が可愛らしくて微笑んだ。
「……不思議だね。夢に出てきたソフィア嬢がもう見れなくなるのは悲しいな」
「アレン様は、夢の中の私にどうしてほしかったんですか?」
「そうだな。我儘と自分本位な考え方が無ければ彼女は淑女の鑑になってたかもしれないな。上辺だけ取り繕ってもいつかは足元を救われる。破滅へ向かうことだって考えられる。俺が望んだのは、上辺だけじゃなく内側もちゃんと見つめてほしかった……ただそれだけだ」
それだけなんだ。何かを成し遂げることを願っていたわけじゃない。夢の中では俺とソフィア嬢は婚約者だ。だからこそ、民衆が納得出来るように、認められるような女性で出なくてはならない。その他にも超えなくてはいけない壁が多々あるが。
残念ながら、それは叶わなかった。
「私、思うんです。外見を磨いてるのは自分に自信がないからで、我儘になってるのだって自信がなく、その上ひとりだと思い込んでいたから。感情の制御が出来ず、苛立ちと悲しさやほかの感情が混ざりあったんじゃないんですかね。本来の意思とは関係なく、その感情が暴走してしまう。だからといって、やってはいけないことなんですけどね」
ソフィア嬢は苦笑した。
それも一理ある。
俺は婚約者としてではなく、王族としてでしか見てなかった……。
王族としては正しい振る舞いだと思う。夢の中だとはいえ、あそこまで追い込んだのは紛れもなく俺が原因だと思っている。
ちゃんとソフィア嬢の(夢の中の)ことを考えて、見てあげていればもしかしたら違う結末になっていたのかもしれない。
だけど、やっぱり俺は何度同じことを繰り返しても、あの決断をすると思う。
そのことはソフィア嬢には黙っておこう。
「……ちゃんと見れてなかったのかもしれないな。夢の中とはいえ、婚約者ならちゃんと寄り添ってあげなくちゃいけなかった。でも、夢の中で良かったよ。これが現実での婚約者同士ならすれ違いどころかもっと大変なことになってたかもな」
「……そうですね」
ソフィア嬢は少し悲しそうに笑う。
「ソフィア嬢は……」
俺は言葉を呑み込んだ。
その後の言葉は『誰かと人生を寄り添い合う未来を見たことはあるかい?』そんな質問だった。
その回答次第では、誰かに恋をしている証拠になる。
「いや、やっぱりなんでもない」
回答を聞きたくないからその後の質問は言わない。
ソフィア嬢が誰かを想っているだなんて思いたくもないし、嫌だと思った。
とっても長い夢を見ていたみたいだ。心の中にいた何が失ってとても哀しくなる。
これでハッキリしたことがある。何回も同じルートを繰り返し悪夢として見ていたことによって、ソフィア嬢に偏見な目で見ていたんだ。
……ソフィア嬢に婚約申し込んだのも『興味があるから』ではなく、『そうしないといけない』と思ったからだ。
興味があるのは間違いではないが、婚約をしてまでという程ではなかった。
それが当初の婚約の申立てだったなんて、笑えてしまう。
その事に疑問はあったが、た・だ・の・気・の・迷・い・なのだと思い、深く考えることはなかった。
これが全て呪いのせいだと言うならば、俺のソフィア嬢を想う気持ちも呪い……なのか。
いや、そう思いたくは無い。この気持ちに嘘はないはずだ。
上半身を起こし、ソフィア嬢を見れば彼女も悲しそうな表情をしていた。
ーー呪いは終わった。
そう思うのに、とても虚しい。俺は常に感情を表に出さないようにしてきた。
……してきたのに、ソフィア嬢の顔を見るとホッとして素が出そうになる。
そうじゃなくても、ソフィア嬢の前だとどうしても素が出てきてしまうのが困るところ。
この虚しさはなんだ? っと、考えると悪夢で見ているソフィア嬢が消えたからなのかも知れない。
何回も見ているので、情が残ってしまったのかも。
呪いはもう解けた。……解けたんだ。それは喜ばしいことだ。
人肌が恋しくてとかでは無い。喜びをソフィア嬢と一緒に分かち合いたいが為の抱擁だ。
戸惑うソフィア嬢を隣にこさせて、抱き締める。
艶のある髪からはほのかに薔薇の匂いがした。動かせないように頭と腰を固定するように手を回す。
ーー落ち着く。
心が癒される。気持ちが和らげる。
本来ならば婚約者でもないのに抱擁はタブーだろう。
でも今は、誰も居ない空中庭園の中にいる。誰にも見られない。
そう思うのは俺だけかも知れないけど。本気で拒むことの出来ないソフィア嬢に「しばらく、こうさせてくれないか」とお願いしてしまった。
ソフィア嬢が困ってるのをわかってるが、抱き締めたかった。誰でもいい訳ではなく、ソフィア嬢だから抱き締めて温もりを感じたかった。
不思議だな。感情を抑えることが出来ないなんて。普段なら、常に作り笑顔を浮かべて愛想良く出来るというのに。
ソフィア嬢絡みだとそれがなかなか出来ない。
ーー恋は盲目と言うが……。
まさか俺がそうなってしまうとは。
「……ありがとう。ごめんね」
ずっと抱き締めたかったけど流石にそれは出来ないので渋々ソフィア嬢を放した。
ソフィア嬢は耳まで真っ赤になった顔の頬に両手で添える。
隣に座る。
「あっ、い……いえ」
そんなソフィア嬢が可愛らしくて微笑んだ。
「……不思議だね。夢に出てきたソフィア嬢がもう見れなくなるのは悲しいな」
「アレン様は、夢の中の私にどうしてほしかったんですか?」
「そうだな。我儘と自分本位な考え方が無ければ彼女は淑女の鑑になってたかもしれないな。上辺だけ取り繕ってもいつかは足元を救われる。破滅へ向かうことだって考えられる。俺が望んだのは、上辺だけじゃなく内側もちゃんと見つめてほしかった……ただそれだけだ」
それだけなんだ。何かを成し遂げることを願っていたわけじゃない。夢の中では俺とソフィア嬢は婚約者だ。だからこそ、民衆が納得出来るように、認められるような女性で出なくてはならない。その他にも超えなくてはいけない壁が多々あるが。
残念ながら、それは叶わなかった。
「私、思うんです。外見を磨いてるのは自分に自信がないからで、我儘になってるのだって自信がなく、その上ひとりだと思い込んでいたから。感情の制御が出来ず、苛立ちと悲しさやほかの感情が混ざりあったんじゃないんですかね。本来の意思とは関係なく、その感情が暴走してしまう。だからといって、やってはいけないことなんですけどね」
ソフィア嬢は苦笑した。
それも一理ある。
俺は婚約者としてではなく、王族としてでしか見てなかった……。
王族としては正しい振る舞いだと思う。夢の中だとはいえ、あそこまで追い込んだのは紛れもなく俺が原因だと思っている。
ちゃんとソフィア嬢の(夢の中の)ことを考えて、見てあげていればもしかしたら違う結末になっていたのかもしれない。
だけど、やっぱり俺は何度同じことを繰り返しても、あの決断をすると思う。
そのことはソフィア嬢には黙っておこう。
「……ちゃんと見れてなかったのかもしれないな。夢の中とはいえ、婚約者ならちゃんと寄り添ってあげなくちゃいけなかった。でも、夢の中で良かったよ。これが現実での婚約者同士ならすれ違いどころかもっと大変なことになってたかもな」
「……そうですね」
ソフィア嬢は少し悲しそうに笑う。
「ソフィア嬢は……」
俺は言葉を呑み込んだ。
その後の言葉は『誰かと人生を寄り添い合う未来を見たことはあるかい?』そんな質問だった。
その回答次第では、誰かに恋をしている証拠になる。
「いや、やっぱりなんでもない」
回答を聞きたくないからその後の質問は言わない。
ソフィア嬢が誰かを想っているだなんて思いたくもないし、嫌だと思った。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた
桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、
婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が
部屋に閉じこもってしまう話からです。
自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。
※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる