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第十五章 それぞれの思考が交差する新たなルート
イアン様の不調の原因
しおりを挟む呪いを解いてから一週間はたとうとしていた。
私の中にある闇属性の影響は呪いを解いてからというものピタリと止まってしまった。
属性そのものが無くなってしまったのかなと思ったけど、そうではないらしい。
シーアさんが言うには、完全に融合してしまったそう。
融合したのが桜空の属性らしいのだが、未だにその実感はない。
アレン様の中にいた悪役令嬢は、どうなったのかは分からない。時期に消えるとは言っていたけど……。
砕けた魔法石は、い・ず・れ・、・元・あ・る・場・所・に・還・す・為・、大切に保管してある。
それに、悪役令嬢が残した発言……自分自身とは向き合えていないという言葉にも引っかかる。
あれはどういう意味なんだろう。その答えが見つからないまま。
イタズラに時間だけが過ぎていく。
朝食を軽く食べた私は制服に着替え、ドレッサーの前に座り侍女のアイリスに髪の毛のセットをしてもらう。
「考えごと?」
私の髪に櫛を通しながらも上の空だったので私は何気なく聞いてみた。
「え!?」
驚いたアイリスは櫛を落としてしまった。落とした衝撃でカツーンっと小さく音がなる。
「……すみません」
「考えごとするのは誰にだってあるけど、ただアイリスの場合は仕事に集中してるから常にボーッとしてないから珍しいなって思ったんだけど」
「いえ、ただ……実家に帰らなければならなくなりまして」
「それだったらしばらく休みになるのかな」
「休み……ではなく、辞めることになります」
ドレッサーの鏡に映し出されているアイリスの顔は暗く、実家に帰るのが嫌そうに見える。
アイリスの家庭の事情は聞いたことないからなんとも言えない。
一つだけわかることと言えば……。
「アイリスが望むなら良いと思う。けど、今のアイリスは辛そうだよ。本当は帰りたくないんじゃないの?」
櫛を拾い、新しい櫛に取り替えて再び私の髪をいじるアイリス。
「そんなことはありません! 私は実家に帰らなければならないんです」
アレン様の呪いが解け、これで少しは心配事が減ったと安心していたら今度はアイリスかぁ。
帰・る・ではなくて帰・ら・な・い・と・って、まるで自分に言い聞かせてるみたいな言い方。
実家で何かがあったことは間違いなさそうだけどアイリスが話してくれない以上、何も出来ない。
その後は話をはぐらかされてしまった。
支度が終わって寮を出て、学園に向かうとノエルが待っていた。
「あっ、姉上!! 良かった無事ですね」
ノエルは私に気付くと近寄って安心したような笑みを見せる。
「無事って??」
「イアン様から頂いた指輪、持ってますか?」
「ゆび……あっ。ごめんなさい、無くしてしまったの」
本当は、消滅してしまったんだけど……。
「僕は今日の早朝で知ったのですが、一週間前からイアン様が体調を崩されて寝込んでいると」
「それと指輪とどういった関係が」
「……ずっとうわ言のように呟いているんです。『ソフィア様が危険』だと」
確か、イアン様から貰った指輪は一度だけ助けてくれるんだったっけ。
私はその一度だけに助けられた。指輪は消滅したけど、イアン様は何か感じたのかも。
「……ねぇ、ノエル。帰りにイアン様のお見舞いに行ってもいい?」
「え、まぁ……男子寮だけど、女子禁制ではないから寮長に伝えれば了承してくれるとは思うけど」
「良かった!! ならそうしてもらえると助かる!!」
私はノエルの両手を握り、満面の笑みを向ける。
ノエルの頬が赤い気がするけど、それはきっとイアン様が心配なのかな。
友達想いの良い義弟に育って義姉は幸せだな。
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