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第十七章 三作品目のヒロインの想い人
何と声をかければ良いのか……
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すぐにノア先生は通信用魔導具で皇帝に話してくれたらしく許可が下りた。
本来なら許可は下りないらしいのだが、大まかな説明と前にもチラッと話していたらしいので何となく想像ついていたそうだ。
ノア先生は浮かない顔をしていたのはきっと複雑な気持ちが絡んでるのかなとは思い、何も言わないことにした。
成り行き上、私がクロエ様の侍女として向かうわけなのだが、問題はノエルになんて言い訳したらいいのかと悩む。
お義父さまとお義母さま、それとノエルにもノア先生が説明してくれた。
義両親は「皇帝様が許可したならば」と納得はしてくれたけどノエルはそうはいかない。
説明を聞くなり、取り乱した。
今にも泣きそうな顔になって声を荒らげた後、寝室に引きこもってしまった。
こんな子供っぽい怒り方したノエルは初めてで何と声をかけていいのか分からない。
「入らないのですか?」
「……っ。は、入ります。入りますけど……、なんて声をかけていいのか」
ノエルの寝室の前でノックをしようとして手の甲を扉に近付けては離しを、繰り返している。
痺れを切らしたキースさんが声をかけてきた。その声は怒りや呆れよりも……とても穏やかだった。
そういえば、キースさんって動揺とかの感情を見たことないかも。
いつもにこやかで優しく笑いかけてくれる。とても安心するけど、同時に何を考えてるのか分からないから怖い。
怒りっぽい人よりも穏やかな人ほど怖いと私は思う。
「そうなんですか」
キースさんはニコッと笑って、私の代わりにノックする。
ちなみに、代わりにノックしてほしいとか、そんなことは一切お願いしていない。
「んー……あっ、ソフィア様。いい案がありますよ」
ノックをしても返ってくる返事は無い。キースさんは何かを閃いたのか私に耳打ちした。
「え、なんでそんなこと」
「ノエル様、きっと血相変えて出てきますから」
「?? はぁ……?」
何の意味があるのだろう。そんな疑問が残る。
聞くとたいしたことでもないけど、これで本当にノエルが出てくるのかしら。
ノエルと話せればそれで良いんだけど。
「いきますよ」
キースさんは私に近付く。扉に背を向け、キースさんを見上げる。
そっと肩に手を置かれ、ビクッと肩を震わせる。
「あっ……、や、優しくして……くださいね?」
「なるべく、努力してみます」
私はぎゅっと目を瞑る。キースさんは私の肩に置いた手にグッと力を入れる。
あまりにも痛気持ち良さで「あっ……」と、声を漏らしてしまったら、ノエルの寝室から慌ただしい音が聞こえた。
重たい扉が開き、私が寄りかかっている扉のすぐ横の扉が開いた。
「姉上に何をしてるんですか!?」
顔面蒼白になりながらも出てきたノエルはキースさんを睨んだ。
ベリっと私とキースさんを剥がすように腕を引かれる。
キースさんは笑顔を絶やさずに両手を上げる。
「何って、肩もみ」
「わかり易い嘘つかないでください。そんなわけ」
「ノエル、それ……本当なの」
ノエルは、青ざめていた顔をさらに青ざめたかと思ったら、耳まで真っ赤になった。
口を抑え、顔を下に向けた。
「やられた……」
と、ボソッと呟いていたけど、一体何のことだろう?
私は訳が分からず首を傾げた。
本来なら許可は下りないらしいのだが、大まかな説明と前にもチラッと話していたらしいので何となく想像ついていたそうだ。
ノア先生は浮かない顔をしていたのはきっと複雑な気持ちが絡んでるのかなとは思い、何も言わないことにした。
成り行き上、私がクロエ様の侍女として向かうわけなのだが、問題はノエルになんて言い訳したらいいのかと悩む。
お義父さまとお義母さま、それとノエルにもノア先生が説明してくれた。
義両親は「皇帝様が許可したならば」と納得はしてくれたけどノエルはそうはいかない。
説明を聞くなり、取り乱した。
今にも泣きそうな顔になって声を荒らげた後、寝室に引きこもってしまった。
こんな子供っぽい怒り方したノエルは初めてで何と声をかけていいのか分からない。
「入らないのですか?」
「……っ。は、入ります。入りますけど……、なんて声をかけていいのか」
ノエルの寝室の前でノックをしようとして手の甲を扉に近付けては離しを、繰り返している。
痺れを切らしたキースさんが声をかけてきた。その声は怒りや呆れよりも……とても穏やかだった。
そういえば、キースさんって動揺とかの感情を見たことないかも。
いつもにこやかで優しく笑いかけてくれる。とても安心するけど、同時に何を考えてるのか分からないから怖い。
怒りっぽい人よりも穏やかな人ほど怖いと私は思う。
「そうなんですか」
キースさんはニコッと笑って、私の代わりにノックする。
ちなみに、代わりにノックしてほしいとか、そんなことは一切お願いしていない。
「んー……あっ、ソフィア様。いい案がありますよ」
ノックをしても返ってくる返事は無い。キースさんは何かを閃いたのか私に耳打ちした。
「え、なんでそんなこと」
「ノエル様、きっと血相変えて出てきますから」
「?? はぁ……?」
何の意味があるのだろう。そんな疑問が残る。
聞くとたいしたことでもないけど、これで本当にノエルが出てくるのかしら。
ノエルと話せればそれで良いんだけど。
「いきますよ」
キースさんは私に近付く。扉に背を向け、キースさんを見上げる。
そっと肩に手を置かれ、ビクッと肩を震わせる。
「あっ……、や、優しくして……くださいね?」
「なるべく、努力してみます」
私はぎゅっと目を瞑る。キースさんは私の肩に置いた手にグッと力を入れる。
あまりにも痛気持ち良さで「あっ……」と、声を漏らしてしまったら、ノエルの寝室から慌ただしい音が聞こえた。
重たい扉が開き、私が寄りかかっている扉のすぐ横の扉が開いた。
「姉上に何をしてるんですか!?」
顔面蒼白になりながらも出てきたノエルはキースさんを睨んだ。
ベリっと私とキースさんを剥がすように腕を引かれる。
キースさんは笑顔を絶やさずに両手を上げる。
「何って、肩もみ」
「わかり易い嘘つかないでください。そんなわけ」
「ノエル、それ……本当なの」
ノエルは、青ざめていた顔をさらに青ざめたかと思ったら、耳まで真っ赤になった。
口を抑え、顔を下に向けた。
「やられた……」
と、ボソッと呟いていたけど、一体何のことだろう?
私は訳が分からず首を傾げた。
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