たずねびと それぞれの人生

ニ光 美徳

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第5話

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 事件が起きた。

 父ちゃんから麻智に電話がかかってきた。
「麻智、テレビのニュース見られるか?」

 麻智と三牙はちょうどアパートにいたのでテレビをつけ、全国ネットのニュースを見る。

 『昨夜6時頃、24歳女性の間川まがわ 歌蘭うらさんが、東京都K区にある公園の階段から落ち、頭部を強打したことにより意識不明の重体です。
 間川さんは20歳の頃から、アイドルグループに所属していて22歳で芸能会は引退しています。
 間川さんが落ちた時、逃げるように走り去る人物の目撃証言があり、警察は事件と事故の両面で捜査しています。』

「このニュースがどうしたの?知ってる人?」

「この子、顔写真が[まいうい]ちゃんそっくりなんだ。
 朝このニュース見てびっくりしてさ、島丘くんにも確認したけど、多分[まいうい]ちゃんで間違いないだろうって。
 夕方のニュースの見出しにも出てたから、あ!と思って、今麻智に電話したら、丁度いいタイミングだったな。」

「へー!そうなんだ!すごい、そんなことって…。でも事件って…。
 ねえ、まさか、お母さん関わったりしてないよね?」

「分からない。[まいうい]ちゃんはあのホテルの子じゃない別の子で、ワシの件とは関係ないだろうから、多分関わりは無いとは思うけど…。」

「そっか、なら良かった。本人に会いに行けたらいいんだろうけど、意識不明じゃ無理だね。
 また私もニュースとかネットを気を付けて見てるね。」

 そんな話をして電話を切る。

 相変わらず母ちゃんとはあの後全然連絡取れないので、なんとか居場所が分からないかと思うけど、どうしたものか…。

「ねえ三牙、こんなアイドルグループに所属してたような子が、山口の田舎のゲームのオフ会なんかに参加するんだね。すごく違和感。」

「んーそうだね…。まあ、そう言われれば。
でもそんなメジャーなグループでもないし、何年か前にもう引退してるしな。それに、ネットで検索したらさ、活動は数年で、問題起こして脱退してるって書いてあるから、あんまり特別じゃないんじゃない?普通にフツーの子なんだろ。
 それに、オフ会は相手の素性が分かりにくいし、田舎の方が知ってる人少ないから逆にいいのかも。」

「なるほどね。
 …おかげって言ったら悪いけど、[まいうい]って人の素性と顔が分かったから、ネットにアップされてるSNS探してみるね。
 写真とかあれば…[みけりす]が写ってたりしないかなぁ。」

「そうだな。元芸能人なら、SNSとか動画とか、やってそうだよな。」

 2人はPCで、“間川 歌蘭”という[まいうい]の本名と顔写真の検索をかける。すると、アイドル時代の写真がたくさんヒットした。アイドルでも本名で活動していたようだ。
 流石は元アイドルだ。
 でも、いっぱいありすぎて、手掛かりになるようなものは全くといっていいほど分からない。
 なにしろ、[みけりす]の顔を知らないのだ。

「ねえ麻智、これは俺たちだけで見たって分からないよな…。」
「そうだね、山口に帰って、父ちゃんに見てもらおうかな?」

 次の休み、麻智は山口へ帰った。

 始発の新幹線に乗り、家に着いて早々に父ちゃんに画像を確認してもらおうと思ったけど、父ちゃんは布団に籠って爆睡していて全然起きない。部屋の中はお酒の匂いで充満している。

 それから、家の中がどこもかしこもぐちゃぐちゃで酷い状態になっていたので、まずは片付けを始める。

 麻智は片付けながら、父ちゃんがなんか可哀想になってきて、ちょっと涙が出た。
 
「母ちゃんいないと、こんなんになるんだ…。」ポツリと呟く。

 片付けに随分時間がかかったけど、ほぼ元通りになったくらいでやっと父ちゃんが起きてくる。

「おお…麻智、帰って来よったんか。ああ、片付けもしてくれたんやな、すまんな。」

「父ちゃんどんな生活しよるん?ご飯は?ちゃんと食べとる?お酒しか飲んどらんのやないん?」

「なんとか食べてはいる。これでも社長やけえ、仕事もしなきゃいけんしな。
 昨日は休み前やったけえ、ちと飲み過ぎた。」

「しょうがないよ。顔洗って、そのボサボサ頭と髭、ちゃんとしてきて。朝ご飯…て、もうお昼か。ご飯作るけえ、食べよ。」

 麻智がご飯を作ろうと冷蔵庫を開けると、中にはお酒しかない。
 麻智はハーッとため息をついてから、父ちゃんの車で買い物に出る。

 ゴミの片付けをした時、コンビニのおつまみしか食べてないような感じだった。会社にいる時には少しは食べているのだろうか…?
 せめて自分が家にいる間、栄養のあるものを食べてもらおうと、スーパーのカートいっぱいに野菜や肉や魚を買って帰る。

 家に着くと、玄関の前に誰か知らない男性がいた。
 訪問販売か近所の人か?
 車を駐車して声をかける。

「あのー、ウチに何かご用ですか?」

「あ、このお家の方ですか?ここは柳井田運送やないだうんそう株式会社の社長である、柳井田やないださんのお宅ですよね?」

「…はい…、そうですけど、あなたは?」

「突然すみません、私フリーでライターをしてます、中森なかもり 雄太ゆうたと申します。」と言って名刺を麻智に差し出す。

「え?記者の方ですか?はあ…。会社の取材か何かですか?
 あ、父とアポイントは取ってあるんでしょうか?」
「娘さんですか?すみません突然やってきて。アポイントは取ってないんですが、お父さんに少し聞きたいことがありまして、お会いできないでしょうか?」
「聞きたいこととはどういう内容ですか?ていうか、なんで自宅なんですか?会社のことなら会社でアポ取ってもらって、それから会っていただいた方が…。」
 自宅に突然現れたフリーライターを、麻智はすごく怪しむ。

「聞きたいのは、会社ではなくて個人的なことなんです。なのでご自宅へ来てしまったんですが…。柳井田さん個人の連絡先は分からず、でも会社に電話するのもどうかと思いまして、アポイントは取れなかったんです、すみません。
 お父さんとは、前にお会いした時に色々お話させていただきました。
 あ、名刺の名前ではなく、[キシャル]という名前を言っていただければ分かると思います。お取次願えませんでしょうか?」

 麻智は[キシャル]という名前にピンときた。
「ゲームのオフ会に参加されてた方ですか?」
 と中森に聞く。

「あ、はい。ご存知だったんですね。」
「父からはある程度聞いています。すみません私、感じ悪い対応してましたよね。
 私たちも、あの会に参加してた人に会いたかったんです。今父に話してきますね。」

 麻智は父ちゃんに話して、家の中に入ってもらって話することにした。
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