たずねびと それぞれの人生

ニ光 美徳

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第20話

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 カフェのオープンする時間となり、店員さんが着席の案内をし始める。
 前に人が結構いたので、1回目では入れないかと思ったけど、運よく座れた。
 私の注文はすぐに決まったので、大高さん母娘が決めるのを待つ。
 その間、またキッチンを見て野内くんを探す。でも、今日はいなさそう…。

 あーあ、ちょっと残念。

「どうかした?」
「ううん、ちょっとね。決まった?」
「うん、すごく迷ったけど、決めた。」
 メニューが決まったので、店員さんを呼ぶ。

「ご注文はお決まりですか?」と言った後、私の顔を見て、あ!という顔をする。
「横川様、ご来店ありがとうございます。」

 私は店員さんの言葉にびっくりする。
「え⁉︎覚えてくださってたんですか?すごい。」
「はい、まあ…。」と言って店員さんはにっこり微笑む。
「ご来店頂いたこと、またオーナーにお伝えしますね。」
「あ、すみません、ありがとうございます。でも今日はいないんですよね?姿が見えないような…?」
「今は少し席を外してるんですけど、すぐに戻ります。開店直後なのでちょっとご挨拶に来る時間は取れないかもしれないんですけど…。」
「全然大丈夫です。すみません、お手数おかけして。あ、でもついでに、『もう1人、懐かしい人来てます』って伝えていただいてもらってもいいですか?」
「もちろん!かしこまりました。」

 店員さんはオーダーを取って、戻って行った。

「何?何?どういうこと?え?横川さん、ここのお店のオーナーと知り合いなの?」
 大高さんと光莉ちゃんが、目をでっかく見開いて私を見つめる。
 わー、どうしよう…。って言うくらい、圧がかかる。
 まあ、勿体ぶることないか。

「あのね、実は…、ここのオーナーって、なんと野内やないくんなの!
 覚えてる?野内くん。昔アルバイトで一緒のお店で働いてた人。厨房に入ってたんだけど。」

「え⁉︎」

 大高さんは、すごくびっくりした顔をしてる。
 光莉ちゃんは当然、全く分からない顔でキョトンとする。
 
 そうそう、このびっくり感が欲しかったの!予想以上のびっくり感だけど!

「私ね、大高さんとあの話ができそうなお店探してネットカフェに行ったのね。そこにあったタウン誌を見てこのお店みつけたの。その雑誌に野内くんの名前と写真載ってたから、うわっ絶対そうだ!と思って。
 で、一昨日来てランチを食べたんだ。
 他県で一号店と二号店を開いてて、ここが三号店なんだって。すごいよね!」

 私が鼻息荒く話してるのを、大高さんがフリーズして聞く。私はその反応に満足しながら話を続ける。

「私、野内くんがいないかなーって思って、体をクネクネさせて、席から厨房のぞいてたのね。すっごく怪しかったと思うんだけど、さっきの店員さんが話かけてくれたの。で、『私、野内さんと昔同じ店で働いてたんです。』って言ったら野内君に伝えてくれて、そしたら野内君が挨拶しに私の席まで来てくれたんだ。
 私のことちゃんと覚えてくれてたの!嬉しかったー。
 だから、大高さんにも教えたくて。でもびっくりさせようと思ってたから、内緒にしてここまで来たの。成功したかな?」

「う、うん。そうだね、びっくりした。
 あ、えと…ごめん、ちょっとお手洗いに…。」
 なんか、大高さんの顔色が悪いように見える。やっぱり、退院直後にランチなんて、負担が大きかっただろうか?ちょっと悪いことしてるかなと思った。
 光莉ちゃんも大高さんの具合が悪いように感じたのか、少し遅れて様子を見にトイレへ行く。
 なかなか戻ってこないので心配してたけど、トイレに行く前よりは顔色が良くなった感じで戻ってきた。

「大丈夫?ごめんねランチに誘って。無理ならお店出ようか?」
「私こそごめんなさい。体調が悪い訳じゃないから大丈夫。もう注文してしまったし、っていう言い方もあれだけど、ちゃんと…食べられるので。」
「良かった。でも、無理はしないでね。」
「ありがとう。」

 運ばれてきた料理を、ゆっくりと味わいながら食べる。一昨日も美味しいと思ったけど、2回目の今日の方がしっかり味わえる。
 大高さんも少しずつ食べ進めていく。
 光莉ちゃんはテンション上げて写真を撮ったりしている。
「お母さんの手術が成功して、こんな美味しいランチが食べられて嬉しい。」

 仲の良い母娘の、微笑み合う姿を見ていると、麻智が恋しくなってきた。
 さすがにもう連絡しなきゃ。心配してるだろうな…。皆に会いたい。

 私は関口さんや森丘くんの話や、オーナーが引退した話など、大高さんまで辿り着くまでの過程も全部話した。
 話しながら、自分の行動力もなかなかすごいなぁと思った。

 ゆっくり食べていたからか、店内はだいぶ落ち着いてきた。
 デザートが運ばれて、もうそろそろ食べ終わるという頃に、厨房の方からシェフの服装の人が出てくる。
 その人は私の顔を見ながら、真っ直ぐこっちへ向かってくる。

「横川さん、いらっしゃいませ。また来て頂いて嬉しいです。」
 野内君だ。

 野内君はそう言って私に声をかけた後、大高さんに目を移す。
 野内君は、ハッとした顔をして「…お、大高さん?ですよね?」とびっくりする。

 私はまた、やった!びっくりしてる!と心の中でガッツポーズをする。

「大高さんにも会うの久しぶりなんだよね?ね、懐かしい人でしょ?ふふっ。」
「あ、そっ、そうですね。学生時代に“マパドレ”のアルバイトを大高さんが辞められて以来ですね。お久しぶりです。お元気でしたか?」
野内君が大高さんに尋ねる。

「お、お久しぶりです。すみません、私、野内君のお店だってこと全然知らなくて…。すごくびっくりしてます。すごいですね、こんな立派なお店…。」

「ありがとうございます。私も大高さんが辞められてから、すぐ後くらいにマパドレを辞めてフランスへ行ったんです。」

「そうなんですね!どうりで…。」

「?“どうりで”?」
 私はちょっと引っかかって大高さんに尋ねる。
「ううん、何でもないの。」
 大高さんは顔の前でブンブンと手を振り、違う違うという動作をする。

「今、こっち来て大丈夫なの?」
 今度は野内君に話題を振る。
「ええ、今はお店も落ち着いたので大丈夫です。横川さんはいつまでこちらにいらっしゃるんですか?」
「いろいろあって、しばらくこっちにいたんだけどね、もう解決したから今日にでも帰ろうと思うの。山口に帰る前に、東京にいる娘の顔を見に寄るつもりだけど。」

「あ、こちらの方が娘さんではないんですね?」

「そうそう、こちらの方は、大高さんの娘さん。すごく可愛いでしょ?」
 私は自分の娘ではないのに自慢する。
「そうなんですね、それは失礼しました。
 はい、すごく素敵なお嬢さんですね。
 皆さんランチはお口に合いましたでしょうか?ごゆっくりしていってくださいね。」
 野内君はまた厨房へ戻って行った。
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