35 / 41
間川 歌蘭の語り
第35話
しおりを挟む
あの日、まず絵梨に連絡をして田原さんと隅田さんの息子さんを別々の場所に呼び出してもらった。
それとはまた別に光莉にも来てもらう。
エンリィは私と同じく田原さんの教室に通っていたのでもちろん知り合いだ。
隅田さんの息子さんとは、光莉がエンリィと一緒に隅田さんのお店に飲みに行って知り合ったみたい。話の流れでエンリィがアイドルグループに所属してることが知られて、そこから私の話も出たみたい。ネットで検索すれば、詐欺セミナーのアシスタントが元同じグループにいたことはすぐ分かる。
でも私はまだ息子さんとは会ったことはない。
3人をそれぞれ別に呼び出したのは、それぞれの事情が違うので、不必要な説明を省くため。
まず隅田さんの息子さんに会おうと約束の場所に向かおうとした時、エンリィから連絡が入る。
「ねえ、隅田さんに会う前に、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
そう言われて、公園の端の人気の少ない場所で合うことになった。私もあんまり人目が付くところは避けたかったので、丁度いい場所だと思った。
「どうしたの?息子さんの前ではできない話なんだよね?」
「そう…ていうか、事前に何の話するか聞いておいてもいい?」
「あ、そうだね。どうせエンリィも聞くことになるから…。あのね、隅田さんのセミナーで、詐欺に関わってたことを告白しようと思ってるの。」
「…やっぱり。
ダメだよ。」
「え?何で?」
「最初はさ、疑われてるのが迷惑だって言うのかと思ってたの。だから呼び出しに協力した。でもさ、歌蘭ラが告白したら困るの。」
「困る?どうしてエンリィが困るの?」
「だってそうじゃない!引退したとはいえ、元同じグループだよ?私達まで影響するじゃない!
それに歌蘭ラは今、我啼の契約社員でしょ?会社にも大損害よ!あの人にも、皆にも迷惑がかかる!解散したって、私はまだ仕事続けるし。絶対やめて!」
「ごめん、でも、もう決めたの。本当にごめん。」
エンリィが酷く怒った顔になって、このまま話してたら3人と会えなくなるかもしれないと思ったから、私は逃げるようにエンリィから離れようと後ろを向いた。
その瞬間、ドンッと背中を押された。
え?っと思って振り返ろうとしたけど、強く押されたせいでバランスを崩し、階段から転げ落ちてしまったー。
それからしばらく意識不明になってたみたいで、気がついたら病院にいた。
頭を強く打ってたみたいで、その時の記憶がすっぽり抜けていた。
警察に事情を聞かれた時、うろ覚えに覚えてた3人と会う約束を話した。
…どうせ警察に話してもらう予定だったし、警察の方から事情を聞きに行けば一石二鳥だと思った。
そしてもう1人、連絡を取らなければならない-。
私が〔キシャル〕こと中森さんと初めて会ったのは、あの山口のオフ会だ。
始めの自己紹介の時から、なんかクセがありそうというか、何でもお見通しのような鋭い目つきを隠してて、あんまり近づきたくない感じがしてた。
多分、私の事は知ってたんだと思う。
オフ会には〔ゼットロス〕こと是都がいるので、下手なことは言えない。それもあってなるべく遠くに座っていたけど、なんか常に視線を感じていた。
是都からも見張られていたけど、是都もなんとなく〔キシャル〕を警戒して、会の途中で私に「目立つことはするな」と、全く面白くなさそうな顔で言ってくる。
会が進むと、それなりに出席者がどういう人かなんとなく分かるようになってきた。
〔キシャル〕はきっとメディア関係の人だとピンときた。
キシャル…記者か!
苦手だと思うのは、私に後ろめたいことがあるからだ。
会ではほとんど話さなかったけど、終わり頃に〔キシャル〕からこっそり名刺を渡される。
『フリーライター 中森 雄太』
思った通りだ。
他の皆に気付かれないように私の連絡先も聞かれたけど、それは丁重にお断りした。
どこまで何を知ってるか分からないけど、なんか全部見透かされてる感じ。
中森さんと是都はお互いに警戒していた。
私が1次会の後すぐ会を抜けたこともあり、その時はそれで終わった。
でも、東京に戻ってきてから段々私の気が変わってきて、中森さんに全部話してしまおうかと思うようになる。
決定的だったのは睦菜ちゃんをターゲットにする指示をしてきた時。
私は決心した。
名刺の番号に電話して、会う約束をした。でも、なかなかタイミングが合わず、約束した3人と会った後に会うことになっていた。
でも、その前に私は階段から突き落とされた。
目が覚めて、意識がハッキリし、私の決意が戻ったところで改めて中森さんに連絡した。
そして誰にも知られないようにこっそり病室まで来てもらった。
アイドルグループの活動のこと。是都との出会いと詐欺セミナーの関わり。オフ会で〔松下村〕さんに仕掛けようとしたこと。睦菜ちゃんを狙ってること。
正直に全部話した。
「あのオフ会の出席者に会いに行ったけど、ほとんど会えなかったんだ。
会えたのは〔松下村〕さんと〔オカジ〕くんと〔あいを〕さん、そして今日君に会えただけ。
そもそもは君が出席するって知ったからあのオフ会に行ったんだ。詐欺セミナーを調べてて、君がアシスタントで関わってることを知ったからね。ずっと追いかけてたから、SNSもチェックしてたし。
そうか、〔ゼットロス〕が我啼の社員で、名前が是都か。アイツがあのセミナーで詐欺をしてたのか。
彼は偽名を使って変装もしてたから、なかなか正体が掴めなかったんだ。防犯カメラの映像も、画像検索でヒットしなかったし。
〔ゼットロス〕の携帯はゲーム専用だったんだろうな。追跡も出来なかった。〔みけりす〕も。あと〔モミジン〕にも会えなかった。」
「〔みけりす〕のは、〔ゼットロス〕から支給された携帯使ってたの。私もだけど。」
中森さんには、タイミングを見て記事を出してもらうようにお願いした。
そして出たのがあの記事だ。
それとはまた別に光莉にも来てもらう。
エンリィは私と同じく田原さんの教室に通っていたのでもちろん知り合いだ。
隅田さんの息子さんとは、光莉がエンリィと一緒に隅田さんのお店に飲みに行って知り合ったみたい。話の流れでエンリィがアイドルグループに所属してることが知られて、そこから私の話も出たみたい。ネットで検索すれば、詐欺セミナーのアシスタントが元同じグループにいたことはすぐ分かる。
でも私はまだ息子さんとは会ったことはない。
3人をそれぞれ別に呼び出したのは、それぞれの事情が違うので、不必要な説明を省くため。
まず隅田さんの息子さんに会おうと約束の場所に向かおうとした時、エンリィから連絡が入る。
「ねえ、隅田さんに会う前に、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
そう言われて、公園の端の人気の少ない場所で合うことになった。私もあんまり人目が付くところは避けたかったので、丁度いい場所だと思った。
「どうしたの?息子さんの前ではできない話なんだよね?」
「そう…ていうか、事前に何の話するか聞いておいてもいい?」
「あ、そうだね。どうせエンリィも聞くことになるから…。あのね、隅田さんのセミナーで、詐欺に関わってたことを告白しようと思ってるの。」
「…やっぱり。
ダメだよ。」
「え?何で?」
「最初はさ、疑われてるのが迷惑だって言うのかと思ってたの。だから呼び出しに協力した。でもさ、歌蘭ラが告白したら困るの。」
「困る?どうしてエンリィが困るの?」
「だってそうじゃない!引退したとはいえ、元同じグループだよ?私達まで影響するじゃない!
それに歌蘭ラは今、我啼の契約社員でしょ?会社にも大損害よ!あの人にも、皆にも迷惑がかかる!解散したって、私はまだ仕事続けるし。絶対やめて!」
「ごめん、でも、もう決めたの。本当にごめん。」
エンリィが酷く怒った顔になって、このまま話してたら3人と会えなくなるかもしれないと思ったから、私は逃げるようにエンリィから離れようと後ろを向いた。
その瞬間、ドンッと背中を押された。
え?っと思って振り返ろうとしたけど、強く押されたせいでバランスを崩し、階段から転げ落ちてしまったー。
それからしばらく意識不明になってたみたいで、気がついたら病院にいた。
頭を強く打ってたみたいで、その時の記憶がすっぽり抜けていた。
警察に事情を聞かれた時、うろ覚えに覚えてた3人と会う約束を話した。
…どうせ警察に話してもらう予定だったし、警察の方から事情を聞きに行けば一石二鳥だと思った。
そしてもう1人、連絡を取らなければならない-。
私が〔キシャル〕こと中森さんと初めて会ったのは、あの山口のオフ会だ。
始めの自己紹介の時から、なんかクセがありそうというか、何でもお見通しのような鋭い目つきを隠してて、あんまり近づきたくない感じがしてた。
多分、私の事は知ってたんだと思う。
オフ会には〔ゼットロス〕こと是都がいるので、下手なことは言えない。それもあってなるべく遠くに座っていたけど、なんか常に視線を感じていた。
是都からも見張られていたけど、是都もなんとなく〔キシャル〕を警戒して、会の途中で私に「目立つことはするな」と、全く面白くなさそうな顔で言ってくる。
会が進むと、それなりに出席者がどういう人かなんとなく分かるようになってきた。
〔キシャル〕はきっとメディア関係の人だとピンときた。
キシャル…記者か!
苦手だと思うのは、私に後ろめたいことがあるからだ。
会ではほとんど話さなかったけど、終わり頃に〔キシャル〕からこっそり名刺を渡される。
『フリーライター 中森 雄太』
思った通りだ。
他の皆に気付かれないように私の連絡先も聞かれたけど、それは丁重にお断りした。
どこまで何を知ってるか分からないけど、なんか全部見透かされてる感じ。
中森さんと是都はお互いに警戒していた。
私が1次会の後すぐ会を抜けたこともあり、その時はそれで終わった。
でも、東京に戻ってきてから段々私の気が変わってきて、中森さんに全部話してしまおうかと思うようになる。
決定的だったのは睦菜ちゃんをターゲットにする指示をしてきた時。
私は決心した。
名刺の番号に電話して、会う約束をした。でも、なかなかタイミングが合わず、約束した3人と会った後に会うことになっていた。
でも、その前に私は階段から突き落とされた。
目が覚めて、意識がハッキリし、私の決意が戻ったところで改めて中森さんに連絡した。
そして誰にも知られないようにこっそり病室まで来てもらった。
アイドルグループの活動のこと。是都との出会いと詐欺セミナーの関わり。オフ会で〔松下村〕さんに仕掛けようとしたこと。睦菜ちゃんを狙ってること。
正直に全部話した。
「あのオフ会の出席者に会いに行ったけど、ほとんど会えなかったんだ。
会えたのは〔松下村〕さんと〔オカジ〕くんと〔あいを〕さん、そして今日君に会えただけ。
そもそもは君が出席するって知ったからあのオフ会に行ったんだ。詐欺セミナーを調べてて、君がアシスタントで関わってることを知ったからね。ずっと追いかけてたから、SNSもチェックしてたし。
そうか、〔ゼットロス〕が我啼の社員で、名前が是都か。アイツがあのセミナーで詐欺をしてたのか。
彼は偽名を使って変装もしてたから、なかなか正体が掴めなかったんだ。防犯カメラの映像も、画像検索でヒットしなかったし。
〔ゼットロス〕の携帯はゲーム専用だったんだろうな。追跡も出来なかった。〔みけりす〕も。あと〔モミジン〕にも会えなかった。」
「〔みけりす〕のは、〔ゼットロス〕から支給された携帯使ってたの。私もだけど。」
中森さんには、タイミングを見て記事を出してもらうようにお願いした。
そして出たのがあの記事だ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる