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事件解決へ

第36話

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 事件が進展した。

 間川 歌蘭を突き落とした犯人が自首してきたのだ。

 自首したのはー
〔モミジン〕こと藤意ふじいだった。

 藤意の逮捕の件はネットニュースにも載った。

 『藤意は間川が過去に所属していたアイドルグループ『パリオネッツ』の、同じメンバーであるエンリィの熱烈なファンである。
 藤意は間川が突き落とされた事件があった公園で、エンリィと間川が会って話する場所へ、2人に隠れて尾行する形でついて行った。
 その現場でも隠れて様子を見ていたところ、間川とエンリィの言い争いが始まってしまう。すごく険悪なムードになってしまったので、なんとか仲裁できないかと飛び出したところ、急に間川が踵を変えて階段に向かい、エンリィも逆方向へ走り去ってしまったので、びっくりしてよろけてしまい雪で滑って間川を押す形になってしまったとのこと。

 すぐに駆け寄るつもりだったが、通行人がすぐ救護に向かったため、つい逃げてしまう。救護もせず立ち去ってしまったことは猛省しているが、あの時、自分が事情を話すことで、エンリィが事件に巻き込まれ、疑われるのではないかと思って反射的に逃げてしまったそうだ。

 事件が起きる前に既にエンリィの姿は事件現場には無く、エンリィ自身は間川の事件に全く気付いてなかったようだ。

 事件があった日、間川の携帯は故障しており、通話記録を照合した時にはエンリィの記録は無かったが、解析を進めると、アプリ間での通話も確認できた。それに加え、意識が戻った間川の証言により、エンリィに疑惑が向いてきたので、藤意がエンリィを巻き込まないために自首することを決心した。
と本人が語っている。』
 


 しかし、その逮捕の後しばらくして中森の第2段の記事が掲載された雑誌が刊行される。

『先日、間川 歌蘭さんが階段から突き落とされた事件で、自分がやったという人物Fが自首した。
 Fはアイドルグループ“パリオネッツ”のメンバーのコアなファンの1人である。
 前回、“パリオネッツ”が、我啼株式会社の企画で、ファンとデートするというものをお伝えした。
 最初は健全な企画であったが、そのうちに肉体関係を持って実績を稼ぐ者も出てきた。それにより、ファンからストーカーになる者も現れ、すごく危険な状況を生んでしまう。
 Fにはそのような行為があったかは分からないが、間川さんとエンリィさんが会う場所へ尾行したことを考えると、普通のファン以上の感情があったと推察せざるを得ない。Fはどのようにその情報を得ていたのであろうか?
 また、我啼の創世部の責任者であるKはいまだ行方が分かっていない。会社の方へ確認すると、家庭の事情により、長期休暇を申請してるとのこと。
 だが、自宅にKが出入りする様子もなく、家に人がいる気配も無い。
 いったい彼はどこにいるのかー。』

 この記事が出た後、是都が逮捕された。

 是都の潜伏先は、エンリィのアパートの隣りの部屋だった。エンリィが是都の身の回りの世話をしていた。

 是都の容疑は、株のインサイダー取引だ。
 元々株の知識があり、個人では少額の取引をして少なからず稼いでいたが、会社の投資においては、あまりにも巨額な利益を出したため、目を付けられていたのだ。

 是都は、アイドルグループ“パリオネッツ”のデート商法で、羽振りのいいファンをターゲットにして、グループのメンバーにターゲットの会社の内部事情を探らせていた。
 そして、いい情報を掴むと、株の投資先をそこ決め、どんどん利益を上げていたのだ。

 “パリオネッツ”にも捜査が入り、インサイダーに関わった子や、デート商法で売春紛いの行為をしていた子も摘発された。

 藤意が身を呈して自首したのだが、無駄な労力であった。
 何故なら、エンリィも逮捕されてしまったのだ。

 間川を突き落とした犯人は、やっぱりエンリィだったのだ。

 「間川がある事ない事喋ると、私はもうアイドルではいられない。間川が私の邪魔をするかもしれない。」
と〔モミジン〕に泣きながら相談していた。

 〔モミジン〕は、「俺がなんとかしたかった。でも、物陰から飛び出した時に雪で滑って転んでしまって…。役に立てなくてごめんなさい。でも、エンリィが走り去るところを見られてて、そこはどうしても見た目が違い過ぎて駄目でしたね。あと、動画も撮られてるなんて…。相手が一枚上手でした。」
と警察に語る。
 全く悪いと思ってなく、エンリィに謝罪するとか、その感覚が恐ろしい。

 間川は、普段使っていた携帯とは別にもう一つ携帯を持っている。それは、間川の母と一緒に北関東へ行った時に用意したものだ。
 
 エンリィと言い争いになった時、咄嗟にカバンに入ったもう一つの携帯の録画ボタンを押した。そしてカバンの中に入れたまま、カバンの口を開けていた。
 水没したのは手に持っていた、普段使ってる携帯で、そのもう一つの携帯に、エンリィの手が間川の背中を押す瞬間が写っていたのだ。

 もちろん間川は目を覚ました後に確認済みで、それを隠していた。
 是都が自由でいる限り、迂闊に警察には提出できないと思ったからだ。あの話の時、エンリィの発言に違和感を覚えたのだ。

 でも、是都が逮捕されたので、今がそのチャンスだと思った。

 ー全てをクリアにして、再出発するんだ。私も、エンリィも。

 間川は、他のデータも警察に提出した。
 それは、〔松下村〕をハメようと、是都と2人で試行錯誤してるところと、是都が〔松下村〕の財布からお金を抜き取ってる場面だ。

 間川はあの時、是都を呼び出した後、水没した方の携帯で隠し撮りするようセッティングしていたのだ。そして、是都に関するデータは全てバックアップを取っていた。
 
 詐欺セミナーのアシスタントをしていた時も、何かおかしいと気付いてからは、携帯を通して指示されることはなるべく保存していた。それも含めて全て警察に提出したのだ。

 中森には、是都が言う“怖い人”の存在を探ってもらっていた。
 中森が調べた限りでは、その人物は“エンリィ”しかいないようだ。

 是都は自分で犯罪をする以外、他に怪しい人物と繋がっている様子はないとのこと。
 
 それを聞いた間川は、こんな只の脅しにビクビク怯えていたのかと、馬鹿馬鹿しく思った。そしてそれも警察に全部話する契機となる。
 そして間川も詐欺幇助の罪で逮捕された。
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