5 / 6
第5話
しおりを挟む
「お母さん、せっかくだから少し飲んでいきませんか?お代はもちろんいりません。これでナナちゃんとは最後になるので、よろしければ、少しだけ。」
ママがにっこり笑って言うと、母は快諾した。
奈々子は、母が飲む姿を見るのが初めてだった。
「実は、私も昔奈々子さんと同じ大学に通っていたんです。学部は違いますが。」
「えー!?同じ大学?知らなかった!」
奈々子はビックリした。
ママは少し肩をすくめて照れ笑いし、話を続けた。
「私、人と話するのが好きで、臨床心理士を目指してあの大学に行ったんです。
サークルに入ってキャンパスライフを普通に謳歌してたんですけど、ある日サークルの先輩に誘われて行った飲み屋でスカウトされたんです。
最初はさすがにえーっ?て思ったけど、お酒も好きだったから、タダでお酒飲めるのはいいなぁって思って、やってみることにしたんです。
もっと若い時、アゲハの雑誌見てて興味もあったし。
そしたらその世界にハマっちゃって、朝起きれなくなって大学もあんまり行かなくなって…。結果2年生で留年したんです。
でもその頃は夜の世界が楽しくて、大学行かなくてもいいやって思ったし、学費もかかるからそのまま退学したんです。
私の母に言ったら、めちゃくちゃ怒って泣かれました。でも、自分ではこれが天職だと思ったんです。
そのあとは、独立目指してめっちゃ頑張りました。で、この店をオープンしたんです。
オープンした時に一緒に手伝ってくれた子がいて、その子のおかげもあって、オープンにかかった費用は割とすぐ稼げたんですけど、しばらくしてその子はお店辞めちゃって。
で、その後もバイトの子は来てくれたけど、すごくいい子だった子が、ナナちゃん来る半年以上前に辞めちゃって。なんか、その時もう私の中でゴール来ちゃってたんですよね。
常連さんも段々と減るし…。お店の前にバイトの募集を出して、誰も来なかったらもう店閉めようって思ってたんです。
そしたらナナちゃんに会って、もう少しやってみようって思ったんです。
ナナちゃんに大学の話を聞くのも楽しかったし、まるで自分があの頃に戻ったような感覚になりました。
でも、最近ナナちゃんがこの世界にハマっちゃうかもっていう感じがあって、心配にはなってきてたんですよね。だから、今日お母さんが店に来られて正直ホッとしました。
ナナちゃんが私みたいになったら困ると思ってたので、良かったです。
私が大学中退したことは後悔しないと自分で思ってたんですけど、最近すごくあの頃の夢を見るんです。勿体無かったと思うようになりました。
卒業するまで頑張ればよかったなって。
あ、それはナナちゃんに会ったからじゃなくて、夜の世界にゴールを見た感じがしたからなんですけど。
でも店は閉めようとは思ってたけど、次どうしようかずっと迷ってて、日永田さんと結婚でもしようかなーって思ったりもしてて。あ、日永田さんはお客さんです。
でも、キラキラしてるナナちゃんを見たら、すごく羨ましくなったんです。
それで、ここでお話するのもなんなんですが、もう一度勉強しようと決心しました。実はもう受験勉強始めちゃってます。
学校に行くか、通信みたいなのにするかは受験結果次第ですが、もう一回、本来の夢をやり直してみます。私もうすぐ30歳で、本当は結婚の方がいいんでしょうけどね。
それでナナちゃんがここを辞めるタイミングで、夜を卒業しようと思ってました。
そういうわけだから、ナナちゃんはもうここには戻ってこれないからね。今日までありがとう。」
奈々子は初めて聞く衝撃的なママの話にビックリしたが、話をさえぎらないように、だだ黙って頷いていた。
ママの話が終わると、その正直な話ぶりに母も心を開いたようで、3人で和気あいあいと楽しいお酒の時間を過ごした。
店を出た帰り道、少しほろ酔いになった奈々子と母は、今までで一番二人の距離を近く感じた。
「お母さん、奏斗が私のバイトのこと話したの?」
「ううん、奏斗は知ってたの?『姉ちゃんのことは知らない、興味もない。』って言ってたけど。」
「うん、奏斗にも誰にも話ししてなかったから、何でバレたのかなーと思って。」
「それは秘密。母の勘よ。でも、奈々子がもし一人暮らししてたら、分からなかったと思う。遅かったけど気が付いて良かった。それよりも、あの店のママが本当にいい人そうだったから、良かった。
でももう夜のバイトはしないでね。学業に支障がでないバイトにしてちょうだいね!」
小言やお説教はいっぱいされたけど、初めて母と飲んだお酒は辛くも美味しかった。
ママがにっこり笑って言うと、母は快諾した。
奈々子は、母が飲む姿を見るのが初めてだった。
「実は、私も昔奈々子さんと同じ大学に通っていたんです。学部は違いますが。」
「えー!?同じ大学?知らなかった!」
奈々子はビックリした。
ママは少し肩をすくめて照れ笑いし、話を続けた。
「私、人と話するのが好きで、臨床心理士を目指してあの大学に行ったんです。
サークルに入ってキャンパスライフを普通に謳歌してたんですけど、ある日サークルの先輩に誘われて行った飲み屋でスカウトされたんです。
最初はさすがにえーっ?て思ったけど、お酒も好きだったから、タダでお酒飲めるのはいいなぁって思って、やってみることにしたんです。
もっと若い時、アゲハの雑誌見てて興味もあったし。
そしたらその世界にハマっちゃって、朝起きれなくなって大学もあんまり行かなくなって…。結果2年生で留年したんです。
でもその頃は夜の世界が楽しくて、大学行かなくてもいいやって思ったし、学費もかかるからそのまま退学したんです。
私の母に言ったら、めちゃくちゃ怒って泣かれました。でも、自分ではこれが天職だと思ったんです。
そのあとは、独立目指してめっちゃ頑張りました。で、この店をオープンしたんです。
オープンした時に一緒に手伝ってくれた子がいて、その子のおかげもあって、オープンにかかった費用は割とすぐ稼げたんですけど、しばらくしてその子はお店辞めちゃって。
で、その後もバイトの子は来てくれたけど、すごくいい子だった子が、ナナちゃん来る半年以上前に辞めちゃって。なんか、その時もう私の中でゴール来ちゃってたんですよね。
常連さんも段々と減るし…。お店の前にバイトの募集を出して、誰も来なかったらもう店閉めようって思ってたんです。
そしたらナナちゃんに会って、もう少しやってみようって思ったんです。
ナナちゃんに大学の話を聞くのも楽しかったし、まるで自分があの頃に戻ったような感覚になりました。
でも、最近ナナちゃんがこの世界にハマっちゃうかもっていう感じがあって、心配にはなってきてたんですよね。だから、今日お母さんが店に来られて正直ホッとしました。
ナナちゃんが私みたいになったら困ると思ってたので、良かったです。
私が大学中退したことは後悔しないと自分で思ってたんですけど、最近すごくあの頃の夢を見るんです。勿体無かったと思うようになりました。
卒業するまで頑張ればよかったなって。
あ、それはナナちゃんに会ったからじゃなくて、夜の世界にゴールを見た感じがしたからなんですけど。
でも店は閉めようとは思ってたけど、次どうしようかずっと迷ってて、日永田さんと結婚でもしようかなーって思ったりもしてて。あ、日永田さんはお客さんです。
でも、キラキラしてるナナちゃんを見たら、すごく羨ましくなったんです。
それで、ここでお話するのもなんなんですが、もう一度勉強しようと決心しました。実はもう受験勉強始めちゃってます。
学校に行くか、通信みたいなのにするかは受験結果次第ですが、もう一回、本来の夢をやり直してみます。私もうすぐ30歳で、本当は結婚の方がいいんでしょうけどね。
それでナナちゃんがここを辞めるタイミングで、夜を卒業しようと思ってました。
そういうわけだから、ナナちゃんはもうここには戻ってこれないからね。今日までありがとう。」
奈々子は初めて聞く衝撃的なママの話にビックリしたが、話をさえぎらないように、だだ黙って頷いていた。
ママの話が終わると、その正直な話ぶりに母も心を開いたようで、3人で和気あいあいと楽しいお酒の時間を過ごした。
店を出た帰り道、少しほろ酔いになった奈々子と母は、今までで一番二人の距離を近く感じた。
「お母さん、奏斗が私のバイトのこと話したの?」
「ううん、奏斗は知ってたの?『姉ちゃんのことは知らない、興味もない。』って言ってたけど。」
「うん、奏斗にも誰にも話ししてなかったから、何でバレたのかなーと思って。」
「それは秘密。母の勘よ。でも、奈々子がもし一人暮らししてたら、分からなかったと思う。遅かったけど気が付いて良かった。それよりも、あの店のママが本当にいい人そうだったから、良かった。
でももう夜のバイトはしないでね。学業に支障がでないバイトにしてちょうだいね!」
小言やお説教はいっぱいされたけど、初めて母と飲んだお酒は辛くも美味しかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写と他もすべて架空です。
医者兄と病院脱出の妹(フリー台本)
在
ライト文芸
生まれて初めて大病を患い入院中の妹
退院が決まり、試しの外出と称して病院を抜け出し友達と脱走
行きたかったカフェへ
それが、主治医の兄に見つかり、その後体調急変
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる