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1878ー1913 吉澤識
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「吉澤さんは同い年とは思えないほど経験豊富ですね。尊敬します」
「歓楽街の経験を尊敬されても困りますよ」
「からかわないで下さい。自分は信州の山奥の出で、後は軍の学校ですから世間知らずです。大陸のことは勉強しましたが、来てみれば戸惑うことばかりです」
宮田の言う共存共栄は、我が国が大陸に軍事顧問や教官を送り込んだ時の大義名分だ。大陸の軍事力を強化して欧米列強を追い払う。正論だ。だが、現実は違う。
お前の理想に反して、我が国は列強に取って代わろうとしているだけだ。お前が手を差し伸べたいと考える人間は、お前に反感しか抱いていないぞ。お前も行く先々で見て、既に十分わかっているだろう?
宮田は、私が第二部にいたことは知らないはずだ。現地協力者である貿易商の道楽息子に話をつけてあるから、何でも訊いて利用しろと言われただけであろう。宮田に下された具体的な任務を私は知らない。互いの詳細は知らず、必要最低限に協力する。暗黙の了解事項だ。
私がただの民間人であるから、国の大義名分どおり綺麗ごとを並べてみただけなのであろうか。
宮田の言葉が気にかかる。私のすっきりとしない気分を察したのか、宮田は話題を変えてきた。
「それにしても吉澤さん。貴方はいつも使用人を従えているのですね。宴席の時はただ御者が待っているのだと思っていましたが、歩いて街を巡るのにも必ず後ろにいる。今も店の外で待機しているではないですか」
宮田は、店先でぼんやりたたずむ加藤に視線をやって言った。
「ああ、あれは子守りですよ」
「子守り?」
「父の命令です。治安が良いとはいえない場所で私がフラフラと遊び回るから、護衛につけているのです。まあ本当のところは、悪い遊びで何かことが起こったら吉澤組の信用に関わるから、お目付役として私のやることを逐一報告させているのですよ」
加藤は私を常に監視し報告している。ただし、父にではない。第二部にだ。
あれも第二部の関係者だ。もちろん加藤は何も言わないし、第二部も素知らぬ顔で見張らせている。
父だけは知っていたはずだ。だが私には何も告げなかった。
騙し、隠し、利用する。それで身の安全が確保されるなら、私はそれで構わない。どうせ父も同じ考えだろう。
「あんなに怖い顔でこちらを見ている。自分には、少し過剰と思えるほど職務に熱心に見えます。富豪の跡取りとは案外窮屈なものなのですね」
「困ったことに、過保護なのですよ」
窮屈か。敢えて考えないようにしてきたが、加藤の護衛は確かに過剰だ。
「歓楽街の経験を尊敬されても困りますよ」
「からかわないで下さい。自分は信州の山奥の出で、後は軍の学校ですから世間知らずです。大陸のことは勉強しましたが、来てみれば戸惑うことばかりです」
宮田の言う共存共栄は、我が国が大陸に軍事顧問や教官を送り込んだ時の大義名分だ。大陸の軍事力を強化して欧米列強を追い払う。正論だ。だが、現実は違う。
お前の理想に反して、我が国は列強に取って代わろうとしているだけだ。お前が手を差し伸べたいと考える人間は、お前に反感しか抱いていないぞ。お前も行く先々で見て、既に十分わかっているだろう?
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宮田の言葉が気にかかる。私のすっきりとしない気分を察したのか、宮田は話題を変えてきた。
「それにしても吉澤さん。貴方はいつも使用人を従えているのですね。宴席の時はただ御者が待っているのだと思っていましたが、歩いて街を巡るのにも必ず後ろにいる。今も店の外で待機しているではないですか」
宮田は、店先でぼんやりたたずむ加藤に視線をやって言った。
「ああ、あれは子守りですよ」
「子守り?」
「父の命令です。治安が良いとはいえない場所で私がフラフラと遊び回るから、護衛につけているのです。まあ本当のところは、悪い遊びで何かことが起こったら吉澤組の信用に関わるから、お目付役として私のやることを逐一報告させているのですよ」
加藤は私を常に監視し報告している。ただし、父にではない。第二部にだ。
あれも第二部の関係者だ。もちろん加藤は何も言わないし、第二部も素知らぬ顔で見張らせている。
父だけは知っていたはずだ。だが私には何も告げなかった。
騙し、隠し、利用する。それで身の安全が確保されるなら、私はそれで構わない。どうせ父も同じ考えだろう。
「あんなに怖い顔でこちらを見ている。自分には、少し過剰と思えるほど職務に熱心に見えます。富豪の跡取りとは案外窮屈なものなのですね」
「困ったことに、過保護なのですよ」
窮屈か。敢えて考えないようにしてきたが、加藤の護衛は確かに過剰だ。
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