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2039ー2043 相馬智律
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「所長、イオンの新しいボディはどうでした? 段違いに軽量化されて膝も綺麗に伸びたから、ミニスカートだってはけますよ」
「メカニックさんって、試験中のイオンにミニスカートをはかせていたんですか? 今回は、原人から現生人類に一気に進化したみたいですよね。次はもう宇宙人バージョンかなあ」
「相馬所長、相変わらず宇宙人が好きですねえ」
ボディメカニックと打ち合わせの帰りに雑談をしながら公園を歩くのが私は好きだ。
普段は研究棟にこもりきりで外に出る機会も動機もない。研究棟の開かない窓から緑の景色を眺めるだけだ。
風も草木の匂いもなく絵画と変わらないが、外を知らなければその絵画に不足すら感じないだろう。
イオンたちの日常がまさにそれだ。
「では、ここで。また来週」
ここはNH社の広大な敷地内だ。イオンのボディ工場だろうと研究棟だろうと、どこまで行こうがNH社だ。いちいち面倒な出張申請を出す意味がわからないな。
「相馬所長、お疲れ様でした」
早川が素っ気なく形式的な挨拶で出迎える。相馬と相性が悪い、年下の先輩研究員だ。
嫌われている。仕方がない。
相馬はそう言って笑っていたな。私は彼のしたように、早川のどんな態度も受け流している。
今は私が相馬智律だ。
大村修一が急死して、相馬は研究棟の新しい所長となった。何一つ滞りなく引き継ぎが行われ、何もなかったかのように研究が続いていく。
ここではNH社の目的である洗脳された奴隷、すなわちアンドロイドの開発に繋がることならどんな研究も許される。ある日突然ストップがかかるまでは、了承されていると解釈していい。
常に監視され、NH社の敷地から出ることが制限される不自由を受け入れれば、研究の自由が保証されるのだ。
大村は老衰だった。事故でも事件でもなく、自然な死だ。
遺体は家族が引き取り、親戚だけで葬儀を済ませたという。
これは嘘だ。
大村に家族はいない。妹の安子とは十代で生き別れ、音信不通だった。安子に子孫がいたとしても、今さら引き取りに同意するはずがない。
大村の遺体と荷物は跡形もなく消えた。どこへ行ったのか。
そして、大村の死の直後にイオンのボディデザインが刷新された。メカニックと話したとおり、原人から現生人類に進化するような飛躍だった。
改良が進まないと言って、相馬があれほど憤っていたにもかかわらずだ。
急過ぎる。
「メカニックさんって、試験中のイオンにミニスカートをはかせていたんですか? 今回は、原人から現生人類に一気に進化したみたいですよね。次はもう宇宙人バージョンかなあ」
「相馬所長、相変わらず宇宙人が好きですねえ」
ボディメカニックと打ち合わせの帰りに雑談をしながら公園を歩くのが私は好きだ。
普段は研究棟にこもりきりで外に出る機会も動機もない。研究棟の開かない窓から緑の景色を眺めるだけだ。
風も草木の匂いもなく絵画と変わらないが、外を知らなければその絵画に不足すら感じないだろう。
イオンたちの日常がまさにそれだ。
「では、ここで。また来週」
ここはNH社の広大な敷地内だ。イオンのボディ工場だろうと研究棟だろうと、どこまで行こうがNH社だ。いちいち面倒な出張申請を出す意味がわからないな。
「相馬所長、お疲れ様でした」
早川が素っ気なく形式的な挨拶で出迎える。相馬と相性が悪い、年下の先輩研究員だ。
嫌われている。仕方がない。
相馬はそう言って笑っていたな。私は彼のしたように、早川のどんな態度も受け流している。
今は私が相馬智律だ。
大村修一が急死して、相馬は研究棟の新しい所長となった。何一つ滞りなく引き継ぎが行われ、何もなかったかのように研究が続いていく。
ここではNH社の目的である洗脳された奴隷、すなわちアンドロイドの開発に繋がることならどんな研究も許される。ある日突然ストップがかかるまでは、了承されていると解釈していい。
常に監視され、NH社の敷地から出ることが制限される不自由を受け入れれば、研究の自由が保証されるのだ。
大村は老衰だった。事故でも事件でもなく、自然な死だ。
遺体は家族が引き取り、親戚だけで葬儀を済ませたという。
これは嘘だ。
大村に家族はいない。妹の安子とは十代で生き別れ、音信不通だった。安子に子孫がいたとしても、今さら引き取りに同意するはずがない。
大村の遺体と荷物は跡形もなく消えた。どこへ行ったのか。
そして、大村の死の直後にイオンのボディデザインが刷新された。メカニックと話したとおり、原人から現生人類に進化するような飛躍だった。
改良が進まないと言って、相馬があれほど憤っていたにもかかわらずだ。
急過ぎる。
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