182年の人生

山碕田鶴

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2043ー2057 高瀬邦彦

84ー(2/3)

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「私がこんな未来を望んだというのか?」
「あなたの望みなど関係ない。あなたがやった結果が波及して今があるのだろう? とにかく、この先の世界がどうなろうとも、あの世へ行くか私の中からこの世を見届けるか、あなたの選択肢は二つだけだ」
「二つもあるのか?」

 床に伏したまま高瀬がこちらを睨む。
 私がお前のように深刻な顔を作れないのは生まれつきだ。これでも真面目に話している。そう怒るな。

「私が今さら素直に成仏するはずがないとわかっているだろう? だいたい、あの世へ行くにしてもどうやってここを抜け出せばいいのかわからない。実質的に一択だ。お前に寄生し続ける最悪の選択をお前は黙って受け入れるしかない」
「照陽にお祓いを頼んで強制排除してもらう選択肢もある」
「……あったな」

 ヒミコは私をこの世から排除しようとしている。死神の片棒を担ぐのがあんな強そうな霊能者では、私に勝ち目はない。
 高瀬の中にいる私を簡単に消せるとは思えないが、高瀬にお祓いされたら終わりだな。ここから引き剥がしてもらうだけならいいが、それこそ変な術であの世へ強制送還させられそうだ。
 天を仰いだ。
 高瀬の意識の天井は相変わらず明るいだけだ。
 結局一択ではないか。しかも形勢逆転だ。私に不利だ。高瀬次第で私はいつでも追い出されてしまうではないか。
 現状、高瀬を離れる選択はできない。高瀬にお願いしてでもここに置いてもらわねば困るのだ。
 では、いつでも私を追い出せるはずの高瀬が、なぜ同居を良しとするのか?
 目の前の高瀬は、私を見つめたまま返事を待っていた。

「……お前、何を計算した?」

 高瀬の口角がわずかに上がる。

「お前がただの善意で厄介な悪霊を世話するか? 快楽を貪って私に情を移したか? ありえないな。お前なら相馬を奪った私を呪い殺すくらいしそうだからな」
「そう見えるか?」
「私が自分から出て行けないとわかって、いいようにこき使うことにしたのか? 私がお前にひざまずき、なんでもするからここに置いてくれと懇願するのを待っているだろう? 私になんの利用価値を見出した? 全部吐け」

 高瀬は苦笑していた。
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