182年の人生

山碕田鶴

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2043ー2057 高瀬邦彦

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 高瀬の調査が無事完了したということで、翌日の昼過ぎ、研究棟に本社から迎えが来た。
 イオンたちも照陽グループがさっそく迎えに来ていて、黒塗りの大型車が停まっている。先にボディ工場に寄ったのか、メカニック職員も同乗して研究棟を訪ねて来た。
 管理者の早川は、イオンたちを照陽グループに引き渡すための準備で早朝から研究棟に詰めていた。
 イオンの様子を見に二階へ上がった早川は、当然多目的室も覗いたはずである。
 群がるイオンに添い寝された高瀬の姿は見なかったことにしたらしい。イオンと高瀬に関わってはいけないと勘が働いたに違いない。
 高瀬が帰り支度をする間に、イオンたちにはボディチェックが行われていた。

「高瀬本部長ぉー、これメンテ終わってますけどイジりましたぁ?」

 多目的室の外から、職員が声をかけてくる。
 高瀬が返事をしようと振り向くと、入り口にヒミコが立っていた。

「あ……」

「本部長ぉー、クニヒコサマに診てもらったって、邦彦様って本部長のことですよねえー?」

 ヒミコの後方から職員の大声が響く。

「あ、いや……」

 高瀬の一瞬の狼狽をヒミコは素直に笑った。

「高瀬さんはずいぶんとイオンと親しくなられたようですね」

 おかげさまでと、高瀬は平然と返した。さすが邦彦様はこれくらいでは動じない。

「ヒミコさんが直々にお迎えですか。イオンをお引き受け下さり感謝します」
「私たちとご縁があった、それだけのことですよ。せっかくこの世に生まれたのですから、イオンにも生き続ける権利はあるでしょう? ああ、でも、あなたに憑いた悪霊は例外ですけれども。そちらの方は不法滞在者です」

 穏やかな指摘に死神の言い回しを使って、明確に排除の意思を伝えてくる。
 私がイオンと接触し、高瀬からイオンに魂を移そうとするのは想定済みだろう。その結果についても、高瀬を見てすぐに理解したようだ。
 ヒミコ直々のお迎えの目的は、私の所在確認か。
 点検を終えたイオンたちがヒミコの後ろに集まって来た。
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