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第1部 弟子入り編
助けると決めたから
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ラクライールの夜は昼とは打って変わって綺麗な雰囲気はなくなり不気味さが森を覆う。
昼間はあまり姿を見せなかった魔物たちが活発化することもあり、危険な場所へと変化する。
ある程度整備された道には夜でもあまり魔物の姿は見ないが、魔女のCafeに行くまでの道のりは余り整備されてない上に魔物がうろついてる森の中に入ってしまいがちな道が多い。
「みんな、どこにいったの??」
モニカは息を切らして辺りを見渡す。しかし、人の気配どころか魔物の気配も余り感じない。
この辺に出るのはゴブリンが主なので、対して強い魔物でもない、しかし授業と実践じゃ訳が違う。
普段上手く魔法を使っているライノでも焦ってしまうと上手く魔法を使えない場合だってある。
「早く、早く見つけないと…!」
モニカはさらに森の奥深くへと足を踏み入れる。
すると、少し先の方から叫び声が聞こえた。
「っ!」
近づいていくと、何人かのクラスメイトがゴブリンに襲われていた。
モニカはそれを見て懐から杖を取り出す。
「ファイアーボール!!」
モニカの杖から火球が放たれる。
「ウガァッ!」
ゴブリンの1匹に命中する、すると両サイドにいたゴブリンがこちらを向く、低い声で唸ってこちらを睨んでいる、今にも飛びかかってきそうだ。
(2匹なら!)
モニカは再び杖を構える。
「サンダーボルト!」
モニカの杖から雷が放たれる。
雷は放射状に広がっていき、2匹のゴブリンを吹っ飛ばした。
「や、やった…」
モニカは安堵し、クラスメイトに目を向ける。
「みんな、ここからだったらあっちの光に向かって行けば町に出るから脇道に逸れないように真っ直ぐ行ってね」
「あ、ありがとう…!」
みんなはそんなモニカを見て安心した顔で立ち上がる、しかし、モニカはそんなみんなを見て顔を顰める。
「待って、まだ他にもいたよね?」
そう、明らかにカフェに来た人数よりも少ない。
つまりまだ森の中にいる。
「ま、まだ森の奥に何人かいるよ」
「どうしよう、助けに行く?」
「そうだよな、みんなで行けば…」
クラスメイトたちは口々に助けに行こうとするが、モニカはそれを止めた。
「ダメだよ、この辺は慣れてないとすぐ道に迷うから、みんなは学園に戻って!」
「で、でも…」
「私は毎日来てて慣れてるから私が探してくるよ!」
「…。」
クラスメイトたちは一斉に押し黙る。
やがて、1人が口を開いた。
「なぁ、モニカはなんで助けてくれるんだ?」
「え?」
「私たち、あなたのこと馬鹿にしてたのに…」
確かに、助ける事に対してモニカにはなんのメリットもない。
残酷だが、見捨ててもモニカはむしろ過ごしやすくなるはず。
「なんだ、そんな事か」
しかし、モニカはその言葉にふふっと笑った。
「そんなの関係ないよ、私を馬鹿にしてたからって見捨てて良い理由にはならないよ」
「モニカ…」
「また明日、学校で会おうね!」
そう言って、モニカは森の中へと消えていった。
その背中を見届けて、モニカの言いつけ通りクラスメイトは光が見える方へ走っていった。
案の定、森の奥では残りのクラスメイトたちが襲われていた。
モニカはそれを見つけてはゴブリンを追い払う。
最初のうちは良かったが、夜だと言うこともありゴブリンたちも活発になっている。
(ちょっとキツくなってきた)
モニカは休まず戦っていたため、息も荒くなっている。
しかし、やっと最後のクラスメイトを見つけたと思い、ゴブリンを同じように追い払った。
「よかった、みんな無事で…」
「も、モニカ!す、すまない」
助けられたクラスメイトたちは同じように安堵した表情を浮かべた。
やっと終わったと思い顔を見渡すと、そこにいるはずの人間があと2人いなかった。
「ら、ライノとアリーシャは…?」
そう、ライノの姿がない。そして、アリーシャという女の子も1人いない。
アリーシャ・フレデリアは、モニカのクラスの学級委員長だ。
「2人は多分まだ奥に居ると思う…」
クラスメイトの1人の言葉に、モニカは血の気が引く。
この先はゴブリンの住処の洞窟しかないからだ。
「まさか、この先にいるの…?」
「多分…」
モニカは息を飲んだ。
今まではみんなを助けないといけないという原動力で動いていた、しかし、ライノとなるとやはり思うことがあった。
「…。」
助けようと思う気持ちもあるが、それと同時に今までの所業が脳裏にフラッシュバックする。
学級委員長のアリーシャも、馬鹿にしてくることはなかったが、ライノのそれを見て止めることをしなかった。内気な委員長のことを考えると助けられる状況でもなかったとは思うが、それでもモニカの心には深い傷が残っていた。
「…っ!」
モニカは自分の頬を両手で叩いた。
「も、モニカ?」
クラスメイトはその様子を見て怪訝そうにモニカを見た。
「みんなは学園に戻って!私が行ってくる!」
「え、でも、危ないだろ!」
「1人で行くのは危険だよ!」
みんなはモニカを心配する。しかしモニカはそんな不安を振り払うように笑顔を浮かべた。
「大丈夫、なんとかなるから!」
そう言って、再びモニカは森の奥へと進んでいった。
森の奥の洞窟の前は、不気味な静けさをしていた。
「…。」
モニカは呼吸を整えて、姿勢を正した。
「よしっ!」
モニカは洞窟の中をゆっくりと進んでいく。
中は案外明るく、光がなくても進んで行けた。不思議とゴブリンの姿はなかった。
少し歩くと、もう少し先の方に一際明るい場所が見えてきた。どうやら少し大きな空間があるようだ。
モニカはそこに2人がいるのだろうと思い少し小走りで向かう。
「ライノ!アリーシャ!」
やはりそこに2人がいた。
ライノとアリーシャはモニカに気がつくと、焦った様子で向かってくるモニカを静止する。
「モニカ!こっちに来るな!!」
「え?」
モニカはその意味がわからずそのまま近寄ろうとした。
一瞬、自分の周りが暗くなる。何事かと思い見上げると大きな棍棒が自分目掛けて振り下ろされた。
「…っ!?」
モニカはそれを間一髪でかわす。
何事かと思いその先に目をやると、ゴブリンではないその巨体を認識することができた。
それと同時に、モニカは再び身体から血の気がひいていくのを感じた。
「ブラッド、オーク…?」
身体は血のように真っ赤な色をして、右手には大きな棍棒を持っていたその姿が、モニカの目に焼き付いた。
ブラッドオーク。
気性が荒く、一度暴れ始めると死人が出るほど危険な魔物だ。身体が大きいため動きは鈍重ではあるが、その分攻撃範囲は広い。
一撃当たれば致命傷は免れない。
「な、なんで、ブラッドオークが…?」
「モニカ!」
「モニカちゃん!」
唖然としている私を見て、ライノとアリーシャが近寄ってくる。
「なんで来たんだ!」
ライノは声を荒げる。アリーシャは隣で泣きそなうな顔でモニカを見ている。
「なんでって…」
「助けなんていらない、隙を見てアリーシャだけ逃がそうと思ってたところだったんだよ!」
ライノはそう言ってモニカはの肩を掴む。
「お前が来たらそれも難しくなるじゃないか!」
「こ、この状況で私のことをまた馬鹿にしてるの?」
モニカはライノの言葉に顔を顰めるが、ライノはそれを否定した。
「違う!お前がここにこなければ、俺さえ犠牲になれば済んだ話だろ!」
「え?」
「結果襲われちまったけど、俺なんかいない方がお前は楽だろ!?なんで助けに来たんだ!」
ライノは悲痛な叫び声を上げた。
モニカはそんなライノを見つめ肩におかれた手に自分の手を添えた。
「助けに来るのに、理由なんてないよ」
「…!」
その言葉に、ライノもアリーシャも目を見開いた。
「馬鹿にされてたことなんて関係ない、私は私が助けたいからここに来た、それだけだよ」
モニカは肩におかれたライノ手を退かした。
「あと、そう思ってるのならここを出てから私に謝ってくれた方が嬉しいな」
モニカは杖を構える。
ブラッドオークは完全に格下と見ているようで、挑発しているような態度で私たちを見ている。
「3人で、逃げるからね!」
モニカは今までよりも大きな火球を杖に灯した。
「す、すごい…!」
「モニカ、お前一体…」
モニカを見て2人は目を見開く。
そんな2人を尻目に、モニカはブラッドオークに向き直る。
「ファイアーボール!!」
渾身のファイアーボールをブラッドオークに放つ。ブラッドに命中した瞬間、大きな爆発が起こった。
爆風で3人は後方に吹っ飛ばされるが、なんとか立ち直った。
「はぁ、はぁ、や、やったかな?」
モニカは黒煙に目をやる、ブラッドオークの気配はないようだ。
「モニカちゃん!大丈夫!?」
アリーシャがモニカに近寄る。
「うん、大丈夫…」
しかし、モニカは殺気を肌で感じ取る。
咄嗟に近寄ってきたアリーシャを突き飛ばす、その瞬間モニカの身体を大きな棍棒が吹き飛ばした。
モニカの身体は硬い洞窟の壁に叩きつけられ、そのまま地面に倒れ込んだ。
「う、ごほっ!!」
咳と共に吐血する。激痛が身体を駆け巡る。
「モニカ!?」
ライノはその様子を見てブラッドオークに向かって杖を構える。
「ちくしょう!ふざけんなよ!!」
ライノの杖に風が集まる。
「トルネードブロー!」
ブラッドオークに向かって竜巻が飛んでいくが、棍棒の一薙でその風はかき消される。
「くそっ!なんでなんだよ!!」
ライノもアリーシャも、モニカに近づこうにもブラッドオークがいるせいで近づけない。
ブラッドオークはそんな2人を尻目にモニカに近寄る。
「ら、ライノ!モニカちゃんが!」
「わかってるよ!でも、どうしろってんだよ!!」
ライノもアリーシャもなす術がなく焦りが露わになっている。
モニカはなんとかブラッドオークから離れようと身体を起こそうとするが、身体中の骨が折れているようで動けない。
「う、うぅ…」
そんなモニカを見下ろすブラッドオークは勝ち誇ったように棍棒を振りかざした。
(もう、ダメだ、殺される)
モニカはそう思い目をきゅっとら閉じた。
ブラッドオークの棍棒がモニカ目掛けて振り下ろされる。
「モニカ!!」
「モニカちゃんっ!!」
ライノとアリーシャは叫ぶが、その攻撃を止める術がない。
モニカは自分の死を覚悟した。
その時…!
この大きい空間の入り口からあの日カフェで見た閃光よりも遥かに大きい閃光がブラッドオークを吹き飛ばした。
3人はその光景を見て唖然とする。
一瞬何が起きたかわからなかった。
「私の弟子に、何してくれてんのかね」
その声にモニカはハッとなる。
3人は声のした方に目を向けると、そこには他でもないイリアの姿があった。
モニカの攻撃でダメージを全く受けなかったブラッドオークが悶え苦しんでいる。
「し、師匠」
「全く、世話のかかる馬鹿弟子だね、あとで覚えときなさいよ」
イリアはモニカを一瞥して、ブラッドオークに向き直る。
「さて、私の弟子をここまでしてくれたお礼をしないとね」
イリアは不敵な笑みを浮かべ、手をオークに向けて構える。
「私のお礼、その身に叩き込んでやるからね」
昼間はあまり姿を見せなかった魔物たちが活発化することもあり、危険な場所へと変化する。
ある程度整備された道には夜でもあまり魔物の姿は見ないが、魔女のCafeに行くまでの道のりは余り整備されてない上に魔物がうろついてる森の中に入ってしまいがちな道が多い。
「みんな、どこにいったの??」
モニカは息を切らして辺りを見渡す。しかし、人の気配どころか魔物の気配も余り感じない。
この辺に出るのはゴブリンが主なので、対して強い魔物でもない、しかし授業と実践じゃ訳が違う。
普段上手く魔法を使っているライノでも焦ってしまうと上手く魔法を使えない場合だってある。
「早く、早く見つけないと…!」
モニカはさらに森の奥深くへと足を踏み入れる。
すると、少し先の方から叫び声が聞こえた。
「っ!」
近づいていくと、何人かのクラスメイトがゴブリンに襲われていた。
モニカはそれを見て懐から杖を取り出す。
「ファイアーボール!!」
モニカの杖から火球が放たれる。
「ウガァッ!」
ゴブリンの1匹に命中する、すると両サイドにいたゴブリンがこちらを向く、低い声で唸ってこちらを睨んでいる、今にも飛びかかってきそうだ。
(2匹なら!)
モニカは再び杖を構える。
「サンダーボルト!」
モニカの杖から雷が放たれる。
雷は放射状に広がっていき、2匹のゴブリンを吹っ飛ばした。
「や、やった…」
モニカは安堵し、クラスメイトに目を向ける。
「みんな、ここからだったらあっちの光に向かって行けば町に出るから脇道に逸れないように真っ直ぐ行ってね」
「あ、ありがとう…!」
みんなはそんなモニカを見て安心した顔で立ち上がる、しかし、モニカはそんなみんなを見て顔を顰める。
「待って、まだ他にもいたよね?」
そう、明らかにカフェに来た人数よりも少ない。
つまりまだ森の中にいる。
「ま、まだ森の奥に何人かいるよ」
「どうしよう、助けに行く?」
「そうだよな、みんなで行けば…」
クラスメイトたちは口々に助けに行こうとするが、モニカはそれを止めた。
「ダメだよ、この辺は慣れてないとすぐ道に迷うから、みんなは学園に戻って!」
「で、でも…」
「私は毎日来てて慣れてるから私が探してくるよ!」
「…。」
クラスメイトたちは一斉に押し黙る。
やがて、1人が口を開いた。
「なぁ、モニカはなんで助けてくれるんだ?」
「え?」
「私たち、あなたのこと馬鹿にしてたのに…」
確かに、助ける事に対してモニカにはなんのメリットもない。
残酷だが、見捨ててもモニカはむしろ過ごしやすくなるはず。
「なんだ、そんな事か」
しかし、モニカはその言葉にふふっと笑った。
「そんなの関係ないよ、私を馬鹿にしてたからって見捨てて良い理由にはならないよ」
「モニカ…」
「また明日、学校で会おうね!」
そう言って、モニカは森の中へと消えていった。
その背中を見届けて、モニカの言いつけ通りクラスメイトは光が見える方へ走っていった。
案の定、森の奥では残りのクラスメイトたちが襲われていた。
モニカはそれを見つけてはゴブリンを追い払う。
最初のうちは良かったが、夜だと言うこともありゴブリンたちも活発になっている。
(ちょっとキツくなってきた)
モニカは休まず戦っていたため、息も荒くなっている。
しかし、やっと最後のクラスメイトを見つけたと思い、ゴブリンを同じように追い払った。
「よかった、みんな無事で…」
「も、モニカ!す、すまない」
助けられたクラスメイトたちは同じように安堵した表情を浮かべた。
やっと終わったと思い顔を見渡すと、そこにいるはずの人間があと2人いなかった。
「ら、ライノとアリーシャは…?」
そう、ライノの姿がない。そして、アリーシャという女の子も1人いない。
アリーシャ・フレデリアは、モニカのクラスの学級委員長だ。
「2人は多分まだ奥に居ると思う…」
クラスメイトの1人の言葉に、モニカは血の気が引く。
この先はゴブリンの住処の洞窟しかないからだ。
「まさか、この先にいるの…?」
「多分…」
モニカは息を飲んだ。
今まではみんなを助けないといけないという原動力で動いていた、しかし、ライノとなるとやはり思うことがあった。
「…。」
助けようと思う気持ちもあるが、それと同時に今までの所業が脳裏にフラッシュバックする。
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「…っ!」
モニカは自分の頬を両手で叩いた。
「も、モニカ?」
クラスメイトはその様子を見て怪訝そうにモニカを見た。
「みんなは学園に戻って!私が行ってくる!」
「え、でも、危ないだろ!」
「1人で行くのは危険だよ!」
みんなはモニカを心配する。しかしモニカはそんな不安を振り払うように笑顔を浮かべた。
「大丈夫、なんとかなるから!」
そう言って、再びモニカは森の奥へと進んでいった。
森の奥の洞窟の前は、不気味な静けさをしていた。
「…。」
モニカは呼吸を整えて、姿勢を正した。
「よしっ!」
モニカは洞窟の中をゆっくりと進んでいく。
中は案外明るく、光がなくても進んで行けた。不思議とゴブリンの姿はなかった。
少し歩くと、もう少し先の方に一際明るい場所が見えてきた。どうやら少し大きな空間があるようだ。
モニカはそこに2人がいるのだろうと思い少し小走りで向かう。
「ライノ!アリーシャ!」
やはりそこに2人がいた。
ライノとアリーシャはモニカに気がつくと、焦った様子で向かってくるモニカを静止する。
「モニカ!こっちに来るな!!」
「え?」
モニカはその意味がわからずそのまま近寄ろうとした。
一瞬、自分の周りが暗くなる。何事かと思い見上げると大きな棍棒が自分目掛けて振り下ろされた。
「…っ!?」
モニカはそれを間一髪でかわす。
何事かと思いその先に目をやると、ゴブリンではないその巨体を認識することができた。
それと同時に、モニカは再び身体から血の気がひいていくのを感じた。
「ブラッド、オーク…?」
身体は血のように真っ赤な色をして、右手には大きな棍棒を持っていたその姿が、モニカの目に焼き付いた。
ブラッドオーク。
気性が荒く、一度暴れ始めると死人が出るほど危険な魔物だ。身体が大きいため動きは鈍重ではあるが、その分攻撃範囲は広い。
一撃当たれば致命傷は免れない。
「な、なんで、ブラッドオークが…?」
「モニカ!」
「モニカちゃん!」
唖然としている私を見て、ライノとアリーシャが近寄ってくる。
「なんで来たんだ!」
ライノは声を荒げる。アリーシャは隣で泣きそなうな顔でモニカを見ている。
「なんでって…」
「助けなんていらない、隙を見てアリーシャだけ逃がそうと思ってたところだったんだよ!」
ライノはそう言ってモニカはの肩を掴む。
「お前が来たらそれも難しくなるじゃないか!」
「こ、この状況で私のことをまた馬鹿にしてるの?」
モニカはライノの言葉に顔を顰めるが、ライノはそれを否定した。
「違う!お前がここにこなければ、俺さえ犠牲になれば済んだ話だろ!」
「え?」
「結果襲われちまったけど、俺なんかいない方がお前は楽だろ!?なんで助けに来たんだ!」
ライノは悲痛な叫び声を上げた。
モニカはそんなライノを見つめ肩におかれた手に自分の手を添えた。
「助けに来るのに、理由なんてないよ」
「…!」
その言葉に、ライノもアリーシャも目を見開いた。
「馬鹿にされてたことなんて関係ない、私は私が助けたいからここに来た、それだけだよ」
モニカは肩におかれたライノ手を退かした。
「あと、そう思ってるのならここを出てから私に謝ってくれた方が嬉しいな」
モニカは杖を構える。
ブラッドオークは完全に格下と見ているようで、挑発しているような態度で私たちを見ている。
「3人で、逃げるからね!」
モニカは今までよりも大きな火球を杖に灯した。
「す、すごい…!」
「モニカ、お前一体…」
モニカを見て2人は目を見開く。
そんな2人を尻目に、モニカはブラッドオークに向き直る。
「ファイアーボール!!」
渾身のファイアーボールをブラッドオークに放つ。ブラッドに命中した瞬間、大きな爆発が起こった。
爆風で3人は後方に吹っ飛ばされるが、なんとか立ち直った。
「はぁ、はぁ、や、やったかな?」
モニカは黒煙に目をやる、ブラッドオークの気配はないようだ。
「モニカちゃん!大丈夫!?」
アリーシャがモニカに近寄る。
「うん、大丈夫…」
しかし、モニカは殺気を肌で感じ取る。
咄嗟に近寄ってきたアリーシャを突き飛ばす、その瞬間モニカの身体を大きな棍棒が吹き飛ばした。
モニカの身体は硬い洞窟の壁に叩きつけられ、そのまま地面に倒れ込んだ。
「う、ごほっ!!」
咳と共に吐血する。激痛が身体を駆け巡る。
「モニカ!?」
ライノはその様子を見てブラッドオークに向かって杖を構える。
「ちくしょう!ふざけんなよ!!」
ライノの杖に風が集まる。
「トルネードブロー!」
ブラッドオークに向かって竜巻が飛んでいくが、棍棒の一薙でその風はかき消される。
「くそっ!なんでなんだよ!!」
ライノもアリーシャも、モニカに近づこうにもブラッドオークがいるせいで近づけない。
ブラッドオークはそんな2人を尻目にモニカに近寄る。
「ら、ライノ!モニカちゃんが!」
「わかってるよ!でも、どうしろってんだよ!!」
ライノもアリーシャもなす術がなく焦りが露わになっている。
モニカはなんとかブラッドオークから離れようと身体を起こそうとするが、身体中の骨が折れているようで動けない。
「う、うぅ…」
そんなモニカを見下ろすブラッドオークは勝ち誇ったように棍棒を振りかざした。
(もう、ダメだ、殺される)
モニカはそう思い目をきゅっとら閉じた。
ブラッドオークの棍棒がモニカ目掛けて振り下ろされる。
「モニカ!!」
「モニカちゃんっ!!」
ライノとアリーシャは叫ぶが、その攻撃を止める術がない。
モニカは自分の死を覚悟した。
その時…!
この大きい空間の入り口からあの日カフェで見た閃光よりも遥かに大きい閃光がブラッドオークを吹き飛ばした。
3人はその光景を見て唖然とする。
一瞬何が起きたかわからなかった。
「私の弟子に、何してくれてんのかね」
その声にモニカはハッとなる。
3人は声のした方に目を向けると、そこには他でもないイリアの姿があった。
モニカの攻撃でダメージを全く受けなかったブラッドオークが悶え苦しんでいる。
「し、師匠」
「全く、世話のかかる馬鹿弟子だね、あとで覚えときなさいよ」
イリアはモニカを一瞥して、ブラッドオークに向き直る。
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