魔女のCafe

ちゃんゆー

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第2部 魔女裁判編

モニカの不安、いざクリスタルパレスへ

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次の日、昨日と同じように静かな朝だった。

モニカは自分で朝食を準備してそれを食べ終えた。
今日は授業の日だ、モニカは昨日のうちに準備を終わらせていたため、出発するまでにそう時間はかからなかった。

長い森の中を歩いて行き、学園についた。
教室にはすでにライノとアリーシャがいた。

「あ、おはよう、モニカちゃん!」

「おーっす」

「2人とも、おはよう!」

モニカは2人のもとに駆け寄っていった。

「いやー、昨日も今日もカフェが休みになっちゃって、結構暇だったんだよねー」

「そうなのか、それなら昨日遊びに行くの誘えばよかったな」

「あ、そうだね、忙しいかなと思って誘わなかったの」

「え、誘ってよー!」

モニカは2人を見て肩を落とす。
そんなモニカに2人は笑いながら謝った。

「ところで、どうして休みなんだ?」

ライノは謝りつつも疑問をモニカに投げかけた。

「んー、昨日は食材の買い出しだったんだけど、今日はクリスタルパレスに行っちゃったの」

「クリスタルパレス!?」

2人は声を揃えて叫んだ。
周りからの視線が集まった、が、すぐにそれもおさまった。

「ちょ、なんでクリスタルパレスなんかに?」

「やっぱり偉大な魔女様だから?」

2人とも身を乗り出してモニカに近づく。

「え、えと、理由は聞けなかったけど、中央魔導院って書いてあったのと王印が押してあったよ」

「中央、魔導院…?」

アリーシャが顔をしかめる。

「ど、どうしたの?」

モニカはアリーシャに聞き返す。

「い、いや、ちょっと、気になって…」

明らかにアリーシャの様子はおかしかった。それも、いい感じに取れる雰囲気ではなかった。
ライノもアリーシャの様子に首を傾げた。

「中央魔導院って、あまりいい噂を聞かないから」

「え?」

「魔女って今のこの世の中だと平和の象徴として扱われてるけど、それとは真逆にいまだに魔女裁判で魔女たちを裁いてるとかって聞いたことがあって」

「魔女、裁判…?」

「う、うん、だけどイリアさんに限ってそんなことはないと思うんだけど、ちょっと気になって…」

魔女裁判。
その言葉がモニカの頭に嫌な形で焼き付き残る。

あの白いローブの集団、前に出てきて話しかけてきた低い声の男性。
明らかに敵意と憎しみを剥き出しにしていた。

「まさか…」

一度傾いた気持ちはもう戻らない。
不安が一気にモニカの思考を飲み込んでいった。



その日の授業はほとんど上の空だった。
なにも頭に入ってこず、ずっとイリアのことを考えていた。

「どうしよう、本当に魔女裁判だったら…」

もうなにも手につかなくなってしまっていた。
そんなモニカを、ライノとアリーシャは心配そうに見つめていた。

カフェに戻ったモニカは静かに1人で考えていた。
このままここで待っていて、本当にイリアは戻ってくるのかどうかわからない。
一度傾いた気持ちはもう戻らない。
不安が時間を重ねるにつれて膨れ上がっていた。

「…。」

もう、ここまできたらモニカは動くしかなかった。

「私も、クリスタルパレスに行こう」

そう決めてからのモニカは行動が早かった。

すぐに荷物をまとめて、モニカは街に降りていく。
町では必要になりそうなものを一通り買い揃えた。
お金は、ダメなことだとわかってはいたが、お店のお金から少し持ってきた。
そんなことより、まずはイリアの安否を確認することが先決だ。

「おい、モニカ」

町で、突然声をかけられた。
振り向くとそこには…

「ライノ、アリーシャ…」

いつも一緒にいる2人がそこにいた。

「なにしてんだ?そんな大きい荷物抱えて」

「…。」

ライノの言葉に押し黙る。

「まさか、クリスタルパレスに行こうなんて思ってない、よね?」

「…。」

アリーシャの言葉にも返事を返せなかった。

そんなモニカを見て、ライノとアリーシャはため息をついて、そして笑った。
モニカは訳もわからず2人を見た。

「な、なんで笑うの?」

「いや、わかりやすいなと思って」

ライノの言葉に、モニカは少し頬を膨らます。

「まぁ、でもお前のやる事はよくわかった」

「う、うん?」

「私たちも一緒に行くよ、クリスタルパレス」

アリーシャの言葉に、モニカは目を見開く。

「1人で行くより3人の方が安心だろ?」

「そうだよ!」

「でも、迷惑なんじゃ…」

モニカは申し訳なさそうな顔で、俯く。
確かに、これはあくまでもモニカとイリアの問題だ。

「今更何言ってるんだ、俺らのことだって助けてくれただろ」

そんなモニカの言葉を、ライノは照れ臭そうに笑いながら否定した。
その言葉に、アリーシャも隣で頷く。

そんな2人を見て、モニカは込み上げるものがあったが、グッと堪えた。

「2人とも、ありがとう…!」

こうして、モニカはライノ、アリーシャと共にクリスタルパレスに向かうこととなった。



ラクライールからクリスタルパレスまでは列車を使えば半日で着く距離にある。
今はまだ朝なので夕方にはクリスタルパレスには着くだろう。

モニカは列車の切符を3人分買い、クリスタルパレス行きの列車に乗った。
初めての列車ということもあり少し緊張したが、そんなことよりもイリスのことが心配で仕方がなかった。

「なぁなぁ、ワゴンで美味しそうなものが売ってたんだ!腹減ってるだろ、2人とも!」

満面の笑みでライノは大きなサンドイッチを3つ抱えて持ってきた。

「ライノ、買ってきてくれたの?」

モニカの言葉にライノは頷く。

「腹が減ってはなんとやらって言うしな!さ、食べようぜ!」

「あ、お金払うよ」

「んなこと気にすんなって!」

そう言ってライノはサンドイッチを2人に手渡した。

「モニカちゃん、これ食べてとりあえず力つけよ、ね?」

「うん、2人ともありがとう」

3人は手元にあるサンドイッチを食べた。
普通のサンドイッチだったが、いつもよりも少し美味しく感じた3人だった。

電車に揺られている間、モニカはずっとイリアのことを考えていた。
ライノとアリーシャは最初のうちはモニカを気遣って声をかけていたが、やがて少し疲れてきたのか2人は眠っていた。

モニカは移り変わる景色をただぼんやりと見つめていた。

「師匠…」

モニカの呟きは、列車の音にかき消された。



夕方ごろ、街には夕飯時の良い香りがどこからもしてくるような時間に、3人はクリスタルパレスの地に降り立った。

ラクライールとは打って変わって見渡す限りの街並みと蒸気機関の数々。

「す、すげぇ、これが首都クリスタルパレスかぁ…」

「ラクライールとは全然違う、森なんて全く見当たらないね」

ライノとアリーシャは物珍しいそうに辺りを見回していた。

モニカはというと、きょろきょろと辺りを見回していた。
やはり、ついた場所なだけでイリアは見当たらない。

「モニカちゃん、とりあえず長旅だったし、今日は宿を探して休んだ方がいいよ?」

モニカの様子を見て、アリーシャは心配そうに声をかけてきた。

「わ、私は大丈夫だよ!」

「嘘つけ、顔色悪いぞ」

ライノの言葉に顔を逸らすモニカ。
昨日はあまり寝れてない、体調も確かにあまり良くはなかった。

「よし、探そう!」

ライノの声に、アリーシャはモニカの手を引いて歩き出す。
少し強引ではあったが、2人の優しさになんとなく心が和んだモニカだった。

宿探しはそんなに時間はかからなかった。
都心部からは少し離れてしまったが、値段もそこそこで雰囲気も悪くはなかった。

3人は荷物を部屋に置いて、それぞれの自由時間になった。
ライノはすぐに大浴場へと向かった。アリーシャはまだ夜にしては早い時間だったため、街に出かけていった。
モニカは部屋で1人座っていた。

「…。」

宿を探している途中、中央魔導院も見かけた。
外界から隔離されたような建物で、雰囲気からしても良い印象は受けなかった。
そのせいもあって、不安にさらに拍車がかかった。

「魔女裁判、本当にあるのかな…」

モニカは宿の窓から外を見て、小さくため息をついた。

「少し外を歩こうかな…」

いてもたってもいられず、モニカは宿を出てクリスタルパレスの街を歩くことにした。

夕方から夜になるにつれて、クリスタルパレスの街並みは怪しく輝いていた。
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