魔女のCafe

ちゃんゆー

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第2部 魔女裁判編

みんなで帰ろう

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あの悪夢のような1日から、早1週間が過ぎようとしていた。
モニカは相変わらず意識を失ったままだった。
イリアは付きっきりでモニカのそばから離れず、ライノとアリーシャは交代で食事などを買ってきていた。

一方、フラウとソナタは惨劇の現場に再び訪れていた。
何度見ても酷い有様だった。
中央魔導院のエントランス部分は破壊され剥き出しになっており、その周りの門扉や塀は跡形もなくなっている。

「結局、モニカちゃんはどうしちゃったんだろう」

「…。」

ソナタの言葉に、フラウは答えなかった。
それはフラウ自身が一番聞きたいことでもある。

あの時のモニカの顔は、既に人の顔ではなかった。
あの顔は昔文献で見たことがある。

そう、あれはまるで…

「魔神、そのもの…」

「え?」

フラウの呟きにソナタは首を傾げる。
ハッとなり、フラウは首を横に振る。

「ううん、そんなわけない、モニカはモニカだよ」

フラウの言葉に、ソナタは小さく笑った。

「本当に、フラウはお人好しだね」

「そんなこと、今に始まったことじゃないでしょ?」

ソナタの言葉にそう返事をして、フラウも笑った。

「さて、モニカのお見舞いにでも行こうか!」

その言葉にソナタは頷き、中央魔導院を後にした。



眠っていたモニカが目を覚ましたのは、ちょうど2週間が経ったくらいだった。
目を覚ましたモニカは、あの時のことはすっかり忘れていた。
ただ、ディーンが自分を庇って死んでしまったということは鮮明に覚えていた。

イリアとモニカ、ライノとアリーシャの4人は、まだ新しいディーンの墓に訪れていた。
弔いにきた人が多いのであろう、墓の周りには無数の花束が備えられていた。

「あんな頑固ジジイでも、こんだけ慕われてたんだね」

イリアは苦笑いを浮かべ、手に持っていた花束をディーンの墓に供えた。
モニカも同じように隣に花を備えた。

「ディーンさん、私さえ、あんな行動をとってなければ、貴方は…」

モニカはディーンの墓を見つめ、罪悪感に駆られてした。

「モニカ」

「…はい?」

イリアの声に、モニカはそちらに顔を向ける。

「あんたはよく頑張ったよ、だからこそディーンもあんたを庇ったんだと思う」

「…でも」

「大丈夫、ディーンはあんたのことを恨んだりなんかしてないよ」

その言葉き、モニカはゆっくりと頷く。そんなモニカをイリアの頭を撫でた。
モニカは肩をふふわせて、泣くのを堪えていた。

そんな2人を見て、ライノもアリーシャもなにも言えずに俯いた。

やがて、4人はディーンの墓を後にし、ラクライールへ帰るためのプラットホームに向かった。

改めて見るとクリスタルパレスの街並みは本当に綺麗だった。
たった3日間だけだったが、モニカたちには壮大な冒険だった。

モニカたちは感慨深い気持ちに浸っていると…

「モニカ」

呼び止められた。
声のした方に視線を向けると、そこにはフラウがいた。

「フラウさん…」

モニカはフラウを見てすぐに目を逸らす。
やった記憶はないものの、フラウに怪我をさせたからこそ、目を合わさることができなかった。

「ん?何で目逸らすの?」

フラウは怪訝そうな顔をしてモニカに近づく。

「だって、フラウさんの怪我は私が…」

モニカの言葉に、フラウはコツンと頭を軽く叩いた。

「なに気にしてんのよ、私はなにも気にしてないよ」

そう言って、フラウは優しく微笑んだ。
それを見て、モニカはさらにいたたまれない気持ちになる。

「でも、私…」

「はい、この話終わり!」

フラウはモニカの言葉を遮って、パンっと両手を合わせた。

「モニカ、貴方が今回全く見知らぬ土地で頑張ってる姿を見て、なんとなく無鉄砲だった昔の私を思い出したよ。
だからこそモニカが必死なのもよくわかったし、助けたいとも思った」

フラウの言葉に、モニカは黙って俯く。
気にせずフラウは言葉を続ける。

「私を攻撃した事を気にしてるのならば、そんな事気にする事じゃない、師匠のために戦った結果じゃない。
それに、私だって死んだわけじゃないじゃない」

「でもっ!!」

フラウの言葉にモニカが口を開いた。

「それでも、助けてくれたフラウさんを傷付けてしまったんです!
それに、その時の記憶が全くないんです!
フラウさんがそう言ってくれたとしても、気にしないなんて、私は無理です…」

涙をぽろぽろと流しながら必死に訴えるモニカを見て、フラウは優しく抱き寄せる。

「モニカ、私が気にするなって言ったら気にしなくていいの」

「でも、でもっ!」

「いいの!気にしないで!」

少し強い口調でフラウは言った。

「会ったばかりだけど、私はモニカのこと好きだよ、それはあの戦いが終わった後の今も変わらないよ」

フラウの言葉に、モニカは泣き出した。
今まで我慢していたものが全て溢れだした。

「おー、よしよし」

そんなモニカの背中をフラウは優しくさすった。



やっとのことで泣き止んだモニカは、申し訳なさそうにではあるが、笑顔を見せた。
それを見たみんなも、安心したように笑った。

「さて、モニカたちはもう帰るんでしょ?」

「はい、ラクライールに帰ります」

フラウはなんとなく寂しそうな顔をして、モニカを見つめた。

「数日間だけだったけど寂しいね、これからも元気でね」

「フラウさん…
フラウさんもお元気で」

モニカもそんなフラウを見て、少し寂しそうな顔になる。
すると、イリアが怪訝そうな顔をして口を開いた。

「なに言ってるの?あんたたち2人も一緒に来るんでしょ?」

その場にいた全員が「は?」と言わんばかりの表情になる。

「暗殺者なんてやめてウチに来なさいよ、人手足りてないし」

更に「は?」となる。

「え、あの、それは本気で言ってますか?」

「本気も何もそうなんでしょ?」

ぽかーんと口を開けるみんなを見て、イリアは笑った。

「なに鳩が豆鉄砲喰らったような顔してんのよ、もう6人分のチケットは買ってあるから行くわよ」

そう言ってイリアは歩き出す。
モニカはハッとしたようにイリアに駆け寄る。

「師匠!私の時と全く違うじゃないですか!」

「なにがよ?」

「私の時はあんなに渋ってたのにっ!!」

「あぁ、そうだっけ?まぁいいじゃない、今は結果弟子になってるんだし」

「そ、そうですけどぉ!」

そんなやりとりを見て、フラウとソナタは顔を見合わせて笑った。

「そうらしいけど、どうする?」

「まぁ、そういう事なら行かないと失礼だね」

そう言って、2人もその後に続いた。

半ば強引な誘いではあったが、2人はその提案(?)を了承した。



こうして、イリアの魔女裁判を通しての一連の事件は幕を閉じた。

イリアとモニカは魔女のCafeに戻り、前と変わらない毎日を過ごしていた。
違う点を挙げるとすれば…

「いらっしゃいませ!魔女のCafeへようこそ!」

看板娘がもう1人増えたこと、そして…

「フラウ、この料理5番テーブルに持っていってー!」

「はいよー!」

厨房での作業員も1人増えた。
前より賑やかになった魔女のCafeは、魔女裁判以前の時よりもお客さんが増えた。

「モニカー!来たぞー!」

「モニカちゃんおはよー!」

そして、ライノとアリーシャも常連客として訪れるようになった。

モニカはあの出来事から落ち込んでいたこともあったが、そんな周りの雰囲気により、徐々に元気も取り戻していった。

「モニカ!今日も笑顔でよろしく!」

「はいっ!今日も頑張ります!」

魔女のCafeは今日も大盛況だ。

「いらっしゃいませー!!」

モニカたちの声は今日もラクライールの森に気持ちよく響いていた。
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