魔女のCafe

第2部 魔女裁判編

不穏な影

クリスタルパレスの一件は、大々的なニュースとなり、イリアやモニカたちは一躍有名人となった。
どこもかしこもその話で持ちきりだった。

エスタスはと言うと、あの事件後捕まり今は中央魔導院の地下奥深くに収容された。
あそこまでモニカにダメージを与えられてはいたが一命は取り留めた。

「いやぁ、それにしてもあの事件はすごかったなぁ」

「そうだな、被害者の人たちは可哀想だったけど…」

そんな話で今日も酒場ではその話で盛り上がっていた。

「それにしても、あの女の子凄かったよな」

「あぁ、そうだな、なんかみたことない魔法だったな」

「そうそう！あの魔法何だったんだろうな？」

「うーん、なんか闇属性の魔法というか、それよりもドス黒い魔力みたいな感じだったよな…」

そんなモニカに対する会話も聞こえて来る。

「失礼」

そんな会話に、1人の男が声をかけて来る。

「え？」

「その魔法というのは、その女の子が使っていたのですか？」

男の質問に、喋っていた人たちは面食らっていたが、1人がそれに応答する。

「あ、ああ、なんか、属性があるような魔法には見えなかったな」

「そ、そうだな、どっちかって言うとエスタスが使っていた魔法に近い感じがしたかも」

「確かに！」

それを聞いて、その男は怪しい笑いをし…

「そうですか、ありがとうございます」

そのままその場を去っていった。
質問された人たちは不思議そうな顔をしていたが、やがてまた会話をし始めた。



「あの少女、エスタスに似た魔法を使っていたようです」

先程の男は、町から外れた暗い路地で他数人と落合口を開いた。

「そうか、ご苦労だな」

そのうちの1人が答えると、報告をあげた男は深々と頭を下げた。

「やはり、あの少女がそうなのだろうな」

「そうね、似た魔法と言うよりもエスタスよりもかなり純度が高い深淵魔法だったわ」

「ということはあの少女でほぼ確定ですねぇ」

「…意外だな」

何人かが会話を交わす。
あの一件について、どうやらモニカに対して何かあるようだった。

「皆ご苦労だったな、とりあえずやるべきことは見えてきたな」

そのうちのリーダー格の男の言葉に、一同が頷いた。

「あの少女が魔神の血を受け継ぐ者だ」

クリスタルパレスの闇に染まった路地裏で、静かにその計画は動きだした。
ここから、モニカ自身が大きな運命に巻き込まれていく事となる。

ゆっくりではあるが確実に、モニカの運命の歯車は狂い始めていた。
しかしそれはまだ少し先の話。

モニカはそんなことは知らず、今も変わらずの毎日を過ごしているのであった。