魔女のCafe

ちゃんゆー

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Break Time Story 伝説の食材を求めて

激戦の行方

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ドラゴンの雄叫びが山に響く。
フラウ以外は全員耳を塞ぐ。

「うるさいっての」

フラウの身体からオーラのようなものが出てくる。

「パワーブースト」

次の瞬間、あっという間に間合いを詰めるフラウ。
そして、肉が柔らかそうな腹に一撃叩き込む。

ほんの一瞬、ドラゴンが苦しそうな呻き声を上げた。

「効かない、わけじゃないみたいね」

フラウはそう言って不敵な笑みを浮かべる。
しかし、いくら柔らかいとは言えそれも知れた程度だった。

他よりはというだけでかなり硬い。
フラウは殴った自分の拳を見つめる。

(ジンジンする、流石にキツイけど)

フラウはもう一度構える。

「さて、まだまだいくよ!」

フラウとドラゴンの攻防は続く。

「おりゃあっ!!」

フラウの拳が何度もドラゴンの腹に突き刺さる。
ドラゴンは抵抗しようと大きい腕を振り回す、しかし的が小さいためなかなか当たらない。

「フ、フラウさん、すごい…」

身のこなしといい反射神経も常人のそれを超えている。

「あれは強化系の魔法だから、僕らなんかよりよっぽど早いよ」

不思議そうに見ている3人にソナタは声をかけた。

「強化系?」

「そう、僕はできないけどフラウはあれが得意なんだ」

「す、すげぇ、かっこいい…」

ライノの言葉にソナタは笑う。

「でも、身体能力を強化してるだけで、打たれ強さが上がってるわけじゃない…」

「え、それって、どういう?」

ソナタはフラウをじっと見つめる。

(フラウ、拳は無事なのかな?)

ソナタの予感は嫌なことに命中していた。

「くっ!」

フラウのグローブの隙間から鮮血が飛び散る。

(くそ、もうやられ始めてる)

攻撃力は向上するが身体的な打たれ強さは変わらない。
つまり、殴っている拳は殴った分その反動もある。

「くー、まだまだ倒れそうもないな…」

フラウはドラゴンを見上げた。
まだピンピンしてる。

「ちくしょう、限界かな…」

深呼吸をする。

「なら、当たって砕けろ、かな…」

フラウの身体が再びオーラを放つ、先ほどよりも強く。
それに気づいたソナタは声を荒げる。

「フラウ!そんな状態で!?」

「いいって!」

フラウはソナタの言葉を遮った。
そして、そのオーラが解き放たれる。

「オーバードライブ!」

フラウの身体から湯気が立ち昇る。
そして、身体は紅く熱を帯びる。

「さて、いくよっ!」

次の瞬間、もうすでに目では追えないスピードでドラゴンに攻撃を叩き込む。
ドラゴンの身体が先ほどよりも大きく揺れる。

確実にダメージを与えている。

「すごいっ!あんなことできるのか!」

ライノは興奮しているが、ソナタは表情が険しい。

「フラウ…!」

しかし、フラウはお構いなしで叩き込む。

(効いてる!)

ついに、ドラゴンが傾く。

「トドメだ!!」

フラウはドラゴンに向かって飛びかかる。
しかし、その拳がドラゴンに届くことはなかった。

「フラウ、さん?」

ドラゴンの目の前で膝をついたフラウ。

「くそっ、何で、あと一発なのに、ゲホッ!?」

フラウの口から血が吐き出される。

「えっ!?」

「フラウさん!!」

アリーシャとモニカはその状況に目を見開く。

「限界だっ!」

ソナタはまだ治りきっていない身体を無理やり起こしてフラウに駆け寄る。

「フラウ!」

しかし、タイミング悪くドラゴンが身体を起こす。

「ち、ちくしょう…」

フラウ目掛けて腕が振り下ろされる。
もう終わった、そう思った一同は目をギュッと閉じる。

しかし、その腕はフラウには当たらなかった。

フラウはゆっくりと目を開く。
そして目の前の状況を見て笑った。

「遅いですよ、イリアさん」

そこにはドラゴンの腕を魔法で受け止めているイリアの姿があった。

「何言ってんの、ベストタイミングでしょ?」

「はは、もう少し早くてもよかったです」

「我儘言わないの」

イリアは魔法でドラゴンの腕を弾く。
ドラゴンはそれでバランスを崩し、後ろに倒れた。

「ソナタ、フラウを安全なとこに」

「はい、了解です」

ソナタも安堵の笑顔を見せて、フラウを抱えて後ろに下がるを

「さてさて、私も登場したことだし…」

イリアの身体に雷が纏われる。

「覚悟はいい?」

その言葉にドラゴンが再び雄叫びを上げた。

「うるさいっての」

その一瞬でイリアはドラゴンの頭の上まで飛び上がる。
呆気にとられたドラゴンは間抜けにも口を開いていた。

「まずはそのうるさい声の出てる口を塞ごうかしら」

イリアの手に雷が集まる。

「サンダースパイク」

目に見えぬ速さで上空からドラゴンの顔目掛けて落ちてくる。
やがて雷の杭がドラゴンの口を上から貫きそのまま地面に叩きつけられた。

叫ぼうにも口が開かず身体だけ暴れている。

「相変わらずすごいね、イリアさんは」

ソナタの言葉にみんなが頷いた。

「さて、身動き取れないだろうし今のうちに…」

イリアの言葉を遮るようにドラゴンは飛び上がる。

「あれま、拘束が弱かったかしらね?」

相変わらず冷静なイリア。
ドラゴンはそんなイリアに飛びかかる。

「めんどくさいわねぇ、ちょっと落ち着きな」

イリアが両手を広げるとドラゴンの周りに細い雷が何本も現れ、そしてドラゴンを中心に円を描くように浮遊する。

「なに、あれ?」

「すげぇ」

「イリアさん、流石…」

3人は口をポカーンと上げて見上げる。

「スパイクショック」

イリアの掛け声と共にその細い雷がドラゴンを襲う。
あれだけ皮膚の硬いドラゴンだったが、イリアの魔法の前には関係ないようだ。

ドラゴンは雷によって身体が痺れ、やがて地面に落ちて低い唸り声を上げて動かなくなった。

「はい、一丁上がり」

相変わらずの強さだった。

5人で立ち向かって返り討ちにされていた敵が、こうも簡単に倒されてしまうと複雑な気持ちになる一同だった。



フラウとソナタの傷もイリアの補助もありすぐに回復した。
そして、御目当ての竜の卵も人数分手に入った。
かなり大きいサイズだがイリアには関係ないようだ。

「はぁ、ここからまたカフェまで戻るのよね」

「行き帰りで1週間くらいかな、結構キツイね」

「そうですね…」

「俺体力持つかな」

「ゆ、ゆっくり帰りましょ?」

フラウ、ソナタ、モニカ、ライノ、アリーシャは、それぞれの不安を漏らした。
しかしその言葉にイリアはキョトンとして…

「え?歩いて帰るつもりなの?」

イリアの言葉にその他がキョトン。

「まぁ、あんた達が歩いて帰りたいならそれでも良いけど、私は嫌だからこっちから帰るわよ?」

イリアが指を鳴らすと空間に穴が広がる。

「え?」

「カフェまで直結してるのよ」

その言葉に一同驚愕。
そんなことなら最初からそれを使えばよかったじゃん…
と思ったのはイリアを覗くメンバー達である。

画して、竜の卵を巡るちょっとした旅は幕を下ろした。
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