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@藤堂side

13.さくらと会えない翌週@藤堂side

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 退屈で長い土日をやり過ごし、月曜日。
 やっとさくらに会える。

 一緒に迎えると思っていた朝、いなくなっていたことを思うと少し不安がよぎるが、俺の腕の中で蕩け、激しいキスに応えたさくら。ずっと憧れていたと言ってくれたさくらだ。

 デスクで仕事をしながら、常に通路の方が気になる。
 さくらが通るんじゃないか、休憩室に入ったら、俺も一緒に休憩しよう。
 午前中、1度くらいコーヒーやお茶を注ぎにきてよいはずだが、現れない。
 お昼、買いに出るのに通るんじゃないかと張っていて、昼休みの半分を過ごしてしまい、あわてて昼食を買いに出た。

 火曜日の午後になって、総務部の主任から、例のさくらのマニュアルが新入社員研修の資料として各部門のトレーナーに配布された。俺はさくらから直接もらえるものと思っていたが、さくらの上司からの一斉送信で受け取った。
 でも、ちゃんと俺のアドバイス聞いてくれたんだな、と嬉しく思う。
 ああ、きっと資料の体裁に整えるのに、忙しかったんだな。

 しかし、結局水曜日まで、さくらの姿を見ることはなかった。
 木曜日も通路をうかがうが、来ない。

 社内でメールを送信しようと思ったが、システム上、一定の権限保有者は社内のメールすべての閲覧ができるようになっている。秘密の漏洩などをチェックするためだ。
 私的な内容を送るわけにはいかない。いや、おれはそこまで厳密に行使の区別をつけなければいけないという方ではないが、さくらが嫌がりそうだ。

 たまりかねて総務部へ行く用事を探す。総務のエリアに入れば、だいたい対応に席を立ってくれるのは、さくらだ。
 申請書を作ってみる。さくらの資料が優秀すぎて、質問に行く余地がない。足りない備品もなければ、壊れた設備もない。さくらがいつもちゃんとチェックしているからだ。
 ああ、そうだ、さくらがそのうち、備品や設備のチェックに回ってくるかもしれない。わずかな可能性にすら光を見出そうとする状況だ。

 なんでだ。さくらは会いたくないのか。

 今日やらなくていい、先の話の申請書まで作成して送信。申請書の受付を行うさくらに自分の存在をアピールする。
 そして無理やりどうでもいい質問を作り、申請書を1通出力して総務部へ向かった。

 総務エリアに入る。あ、さくらがいつもの眼鏡、一つにまとめた髪型、白いシャツに紺のジャケットでモニターに向かっている。
 俺に気付け!

 いつも、総務エリアに入るとすぐ、気付いて飛んでくるさくらが動かない。あれ?

「すみません、申請書で質問なんですが・・・」
 誰に、というのではなく声をかける。
 さくらが
「ケンくん、ごめん、お願い。」
 と、隣の席のコバヤシケンスケに俺を押し付ける。顔も上げずに。

「え~わかりましたあ」
 コバヤシケンスケがやってくる。

 さくら、俺の声、認識したよな?
 俺が来て、嬉しくないの?話したくない?

 俺は用意してきたどうでもいい質問をコバヤシケンスケに投げかけ、
 どうでもよさそうなコバヤシケンスケの説明をぼんやり聞き流した。

 俺が総務エリアを離れると、ちょうど定時だった。
 すれ違いざま、俺の課のアシスタント、西島恵とすれ違った。
「あ、課長、おつかれさまで~す。」
 と、総務部に入っていく。

 おれは立ち止まって聞き耳を立てた。あいつが総務に何の用だ?

「さくらさ~ん」
「あ、恵ちゃん。お疲れ様。」
「あ、今日、さくらさんスカートだあ。やっぱりかわいいですよお」
 え?スカート?おれは総務エリアを覗き込んだ。
 立ち上がって西島と話していさくら、さくらがスカートをはいているのを初めて見た。
 いつも通り、ダークな色合いのスーツだが、スカートだ。

「そうかな?恵ちゃんのアドバイス聞いてみた。」
「絶対かわいい。こんど、もっと春らしいの着ましょう!あ、明日は、かわいいの、着て来てくださいね。」
「うん。頑張る。」
「絶対ですよ。明日は定時に上がってくださいね。」
「うん。明日ね。」

 なんだ、明日の夜は女子会か?
 しかし西島とさくら、親しかったのか?同期?いや。西島は2年目でさくらの2期後輩だ。

「西ちゃん」
 コバヤシケンスケが親し気に話しかける。ああ、こいつら同期か。
「さくらさんのこと、頼むね~。合コン、初めてなんだから」
「ケンくん!しーっ」
 さくらがたしなめる。

 え?合コン?なんで?
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