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18.杉下さん@さくらside
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杉下さんからはSNSでほぼ毎日連絡が来る。
マメな人だな。
短く一言だったり、スタンプだったりなので、こちらも気負いなくやりとりする。お疲れ様、今日は忙しかったよ、暑かったね、雨大丈夫だった…
写真も送られてくる事もある。
期間限定販売のお菓子買った、アスファルトの隙間に花が咲いてた、かわいい犬がいた…
こちらからも、同様のメッセージを送ってみる。
独り暮らしの夜、そんなやりとりできるのはちょっと楽しかったりする。連絡がない日はちょっと気になってしまう。
そんな時は、翌朝、
『昨日は風呂入って寝落ちしてた。ゴメン』
なんてメッセージが来る。
「ゴメン」なんて、毎日メッセージ送る義務があるわけじゃないのに、律儀な人だ。
出会って半月位だけど、『今週早い日ある?』なんて感じでご飯に行く。総務部同士で仕事のやり方比べたり、愚痴ったり、そんな感じ。
気楽で緊張せずに一緒にいられて、優しくて誠実。後輩の賢くんとは違う安心感がある。
* *
ある日の午後、私は恵ちゃんの席で、パーティの招待状の宛先を入力する書式の説明をしていた。なんとなく、藤堂さんの席から視線を感じる。そっちに目線を送らないようにする。
なのに藤堂さんの方から私たちに近付いて来て、私は藤堂さんの席でも入力の説明をする羽目になってしまった。
席を並べて、同じモニターを覗き込む。
近い…
私のガイドで表計算ソフトで作った書式を開いた藤堂さんはセルのひとつに何か打ち込む。早速顧客のデータかと思ったら
『なんで、イメチェン?』
「えっ?」
思わず固まる。
彼氏作ろうと思って頑張ってるなんて、藤堂さんに言いたくない。
「何でもないです。」
「さくらさん、教えて?」
藤堂さんのキーボードに手を伸ばす。
『なんで、そんなこと、きくんですか』
『だって、たいみんぐが。俺として、すぐだったから』
俺として…って、仕事中に共有サーバの中のファイルに!
びっくりして、今の書き込みを消す。
「数式、消えちゃいましたね。直します。」
マウスも使って修正する。
マウスを使う手の、デスクの上に置いた親指が藤堂さんの薬指に捕まる。
藤堂さんが囁く。
「スギシタって?」
「えっ?何で…」
その名前が藤堂さんの口から出るの?
「ね、誰?」
男の人と付き合った事がないって知ったから、見る目無いと思って心配してくれてるのかな?
あの日あんなに泣いたから、また誰かに慰めてもらおうとしてるって思ってるのかな?
あの夜の後、急に着るものとか、変えてみたから、藤堂さん、なんか責任感じてたのかな?
気にしてくれたんだ。っていうか、気づいてくれたんだな。
「あの、もう、大丈夫ですから。」
あの日泣いたのは、藤堂さんに慰めてもらったから、大丈夫だし、藤堂さんを憧れて見てるだけから卒業して、出会いを前向きに探しているのだし、心配しなくて、大丈夫です。
彼氏作るってことじゃなくて、あの日は杉下さんと仲良くなって、美鈴さんとも楽しく話せて、仕事関係以外の人たちと話す機会ができた。
参加して良かったと思ってるけど、この間、処女をもらってくれた藤堂さんに合コン行ったとは知られたくない。
ちゃんと彼氏ができたら、藤堂さんの言動に、いちいちおろおろしないでいられるようになるかもしれない。
彼氏できたって報告したら、私のこと気にしてくれる藤堂さんも肩の荷が下りるのかな。
マメな人だな。
短く一言だったり、スタンプだったりなので、こちらも気負いなくやりとりする。お疲れ様、今日は忙しかったよ、暑かったね、雨大丈夫だった…
写真も送られてくる事もある。
期間限定販売のお菓子買った、アスファルトの隙間に花が咲いてた、かわいい犬がいた…
こちらからも、同様のメッセージを送ってみる。
独り暮らしの夜、そんなやりとりできるのはちょっと楽しかったりする。連絡がない日はちょっと気になってしまう。
そんな時は、翌朝、
『昨日は風呂入って寝落ちしてた。ゴメン』
なんてメッセージが来る。
「ゴメン」なんて、毎日メッセージ送る義務があるわけじゃないのに、律儀な人だ。
出会って半月位だけど、『今週早い日ある?』なんて感じでご飯に行く。総務部同士で仕事のやり方比べたり、愚痴ったり、そんな感じ。
気楽で緊張せずに一緒にいられて、優しくて誠実。後輩の賢くんとは違う安心感がある。
* *
ある日の午後、私は恵ちゃんの席で、パーティの招待状の宛先を入力する書式の説明をしていた。なんとなく、藤堂さんの席から視線を感じる。そっちに目線を送らないようにする。
なのに藤堂さんの方から私たちに近付いて来て、私は藤堂さんの席でも入力の説明をする羽目になってしまった。
席を並べて、同じモニターを覗き込む。
近い…
私のガイドで表計算ソフトで作った書式を開いた藤堂さんはセルのひとつに何か打ち込む。早速顧客のデータかと思ったら
『なんで、イメチェン?』
「えっ?」
思わず固まる。
彼氏作ろうと思って頑張ってるなんて、藤堂さんに言いたくない。
「何でもないです。」
「さくらさん、教えて?」
藤堂さんのキーボードに手を伸ばす。
『なんで、そんなこと、きくんですか』
『だって、たいみんぐが。俺として、すぐだったから』
俺として…って、仕事中に共有サーバの中のファイルに!
びっくりして、今の書き込みを消す。
「数式、消えちゃいましたね。直します。」
マウスも使って修正する。
マウスを使う手の、デスクの上に置いた親指が藤堂さんの薬指に捕まる。
藤堂さんが囁く。
「スギシタって?」
「えっ?何で…」
その名前が藤堂さんの口から出るの?
「ね、誰?」
男の人と付き合った事がないって知ったから、見る目無いと思って心配してくれてるのかな?
あの日あんなに泣いたから、また誰かに慰めてもらおうとしてるって思ってるのかな?
あの夜の後、急に着るものとか、変えてみたから、藤堂さん、なんか責任感じてたのかな?
気にしてくれたんだ。っていうか、気づいてくれたんだな。
「あの、もう、大丈夫ですから。」
あの日泣いたのは、藤堂さんに慰めてもらったから、大丈夫だし、藤堂さんを憧れて見てるだけから卒業して、出会いを前向きに探しているのだし、心配しなくて、大丈夫です。
彼氏作るってことじゃなくて、あの日は杉下さんと仲良くなって、美鈴さんとも楽しく話せて、仕事関係以外の人たちと話す機会ができた。
参加して良かったと思ってるけど、この間、処女をもらってくれた藤堂さんに合コン行ったとは知られたくない。
ちゃんと彼氏ができたら、藤堂さんの言動に、いちいちおろおろしないでいられるようになるかもしれない。
彼氏できたって報告したら、私のこと気にしてくれる藤堂さんも肩の荷が下りるのかな。
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