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69.触れてはいけない
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自宅の周りには枯れた草や落ち葉がたまっている。
午後は外回りを片付けてしまうことにした。雑草がはびこる季節ではないが、普段あまり手入れしない分、今の機会にしっかり掃除しておかねばならない。
「今日は、カフェのお掃除手伝ってくれて、ありがとうございました。」
「どういたしまして。あたりまえのことです。」
「春樹さんは・・。お正月はいつもどうしてたの?」
「とくに何もしないよ?」
「今年、元旦からバイクに乗ってたね。」
「うん。マキノもじゃないか。」
「・・まぁね。」
「オレは、下心あったから。」
「あったの?」
「無自覚だけど、下心だったね。」
「ヒマだから、ってわけじゃなかったんだね。」
手を動かしながら、2人で笑った。
「カフェは、正月三日間は休むんだろ?」
「うん。去年と違って、開けたら周りを巻き込んじゃう・・特に、遊。」
「そうだな。店を開けるとわかったら、アレは確実に実家に帰らないだろうな。」
「あの~。田舎のほうって、お正月の変った行事はないの?初詣みたいなのは?」
「そうだな。子どもの頃は、除夜の鐘が鳴りはじめる頃から家族で近所の神社に行ってた。御芳山の大きな神社じゃなくて、ごく小さいお宮さんだな。回り持ちで当番してて、当たった家が大晦日の日に正月飾りと供え物をして、火を焚いて、お参りする人にお神酒か甘酒をふるまってる。ただそれだけのことだけど。」
「行ってみたいかも。」
「行くの?これと言っておもしろい事はないよ?オレも久しく行ってない。今まで兄貴の家族枠だったから当番も当たらなかったし。そうか・・今年から一世帯として数えられるなぁ・・何年か後に当番あたるかも。」
「元旦は?初詣は?遊びには行ったりした?」
「正月なぁ。・・初詣も興味はないし。一度だけ冬休みに同僚とスキーに行ったことがあるけど。・・・元旦から兄貴の家に呼ばれて雑煮食べて、子ども達と遊んだり・・あとはヒマにしてることが多かったな。」
ぽつぽつと思い出しつつ話す春樹に、マキノは何の気なしに相槌を打った。
「味気ないねえ。若さもないねえ。」
「悪かったね。・・そもそもオレ、若い頃あんまり遊んでないからね。」
「な・・・」
ハッ・・とした。
自分は「なんで?」と、聞こうとしたのだ。
そして、全身の血管がきゅーっと縮んだ気がした。
「遊んでいない」・・ただの一つの単語だけど・・。
春樹さんが大事な人を失くしたのはいつ・・? 大学の時だと言っていた。年上の人だから、まだ二十歳?それ以下??そんな時、普通の学生と一緒にお気楽に遊べるような人だろうか?すぐに忘れてしまえるような人だろうか?・・・イズミさんはしばらくは落ち込んでいたと簡単に言ったけれど、春樹さんからは、その頃ことを詳しく聞いていない。立ち直ったと言っても、長い間引きずったに違いない。
去年だって・・・私が、・・私が事故った時、あんなにパニクっていたのだから、普段表面には見えてなくても、深い傷がまだあるはずなんだ。
・・・そんな傷に、触れたくもなかったし、受け止める自信もなかった。
聞いただけで、想像するだけでも痛いから、目を背けて、忘れるようにしていた。
そのまま、私の脳内では本当になかったことにしそうになっていたの?
触れてはいけないのに。
何も考えずに過去を振り返らせるようなことを聞いてしまった自分を、心の中でののしった。
・・私のバカ!!
味気ない?若さがない?
私はなんことを・・こともあろうに、こんなところで掘り返してしまうなんて・・・。
マキノは下を向いたままゴミ袋にゴミをかき集めていて、視界の端の春樹さんは、片手には竹ぼうきを持って、クモの巣を払い、片手にはホースで水を撒いてホコリをとばしていた。
そっと春樹の様子をうかがった・・・怒っても笑ってもいない普通の顔だった。
小さな声で、「ごめん・・。」と言った。
春樹はそれが聞こえたらしくキョトンとして、「何が?」と言った。
「・・お水冷たいでしょ?」
「冷たい。もうちょっと水の勢いが欲しいけど指に力が入らないよ。」
そうだった・・それは過去のことだ。春樹さんにとっても、とっくに、過去のことだった。
・・どうして、今、自分の胸が痛いのか・・。
昔のことなんて、聞かなきゃよかった・・と一人でそう思った。
昔の彼女のことだけじゃない。
お父さんとお母さんのことも、あまり聞いていない・・・自分が春樹さんと会った時、すでに他界しておられたから、こういう生活をしてきたのだと、すんなり受け止めてしまっている・・。
次々と、近い人が亡くなって、あたりまえに愛してくれていた人が自分のそばからいなくなっていくことの孤独感は、半端なものではなかったんじゃないのかしら・・・。
想像すると、なんだか泣けてくる。
・・ホントにバカだ私。
人それぞれに、歩んできた過去がある。
知ってる。
分かってる。
頭では理解してる。
自分の父が亡くなった時は・・喪失感はあったけれど、病気で苦しむ本人と、看病に疲れて心身ともにヘトヘトになっている母を見ていているのもつらくて、“人は死ぬもの”と、すぐに父のいない生活を受け入れてしまった。
・・・私って・・冷たい。
・・・心も、狭い。
心の傷のことを考えているのに・・
昔の春樹さんが、他の誰かを愛してたってことを想像したくない自分があった。身勝手な嫉妬だ。
自分が昔付き合った人のことだって、春樹に聞かせたくない。
作業が機械的になってきた。もうお掃除やめたいな・・。
春樹さんが、不意に声をかけて来た。
「あのさマキノ。」
「はい?」
「正月・・、温泉でも行く?」
「それもいいんだけど・・・」
「なに?希望があるの?」
「ええと・・」
マキノは実家の母のために、年末の朝市に出ていた野菜や卵を買ってあって、それを持って帰りたいと思っていた。去年は大晦日に帰って、お料理の手伝いをしたっけ・・今年は元旦は達彦さんイズミさんのお宅にお年始の挨拶に行かなくちゃ・・。
春樹さんは、義理の母親のことをどう思っているんだろう・・。
自分が流産した時、心配して2泊して帰ったけれど、結構仲良くしててたな・・。
「あ・・あの、お兄さんの家にお年始の挨拶したあと、実家に帰りたい。」
「いいよ。・・・オレも?」
「うん。一緒に来て欲しいな。」
「わかった。じゃあ・・スーツ着ていくの?」
「なんでよ。」
「マキノをくださいって、家に挨拶しに行ったのがフラッシュバックした。」
「それ・・時計止まりすぎだよ・・春樹さん。」
「ははは・・・」
春樹はいつもどおり明るかった。
「マキノ、体のほうは、もういいの?」
「うん。平気だよ?元気。」
「自分では平気だと思っても、やっぱり無理しないで、今日もよく動いてたし。」
「うん。わかってる。」
「正月は・・“とにかくゆっくりする” でいいね?」
「うん。ありがとう。」
・・そして、いつもどおり、優しかった。
「じゃああと掃除は、台所は全面的に頼んでいいかな。」
「やりますやります。でも、ヒロトが31日までやるから、明日の午前中は工房で、明後日はカフェを手伝おうと思ってるの。」
「オレは、明日ホームセンターに買い物に行くよ。洗面所のラックの足が一本壊れてるのが気になったから。それで明後日は車とバイク洗う。マキノのもね。」
「うわお、心の底からありがとう!日用品も買っといてくれる?書きだしておくから。」
「いいよ。」
私は・・忘れないことにしよう。
どんなに心を許しても、存在が近くなっても触れてはいけない部分があるってことを。
マキノは話をしながら玄関のポーチをブラシでこすって落とした。
これからは二人で生きていける。この幸せが、ずっと続きますように・・。
そう思いながら、ざざーっとバケツの水を流した。
― ― ― ― ―
12月31日、マキノと遊は、スーパー出しの分から工房に手伝いに入って、その続きでヒロトが料理していたおせちオードブルの品々をカフェの店に運びこんで、盛り付けをした。
昼ご飯も簡単に済ませて、そのまま精力的に頑張ったおかげで、午後3時には全部完成した。
「あーやったねぇ、いい時間に完成した。お正月飾りひとつでグレードがあがった気がするね。色のバランスもいい。」
「必要最低限のお正月の品目は押さえてあるけど、この辺に惣菜風の家庭的なのも入ったし、ちょっと洋風なのも入れて、安くてもしっかり食べられるし見栄えはすると思いますよ。」
材料費はカフェから全部出していたのだが、その分の売り上げ予定の半分をこっそりヒロトに渡して「内緒のボーナスだよ。」と、その労をねぎらった。
だって、ほとんどヒロトが一人でやり遂げたようなものだから、材料費が残ればそれでいい。
遊の分は、有名なデザイナーの名前を書いた小さめの三段重にオードブルと同じものを盛り付けてもらっていた。
「遊はいいの買ってあったんだねぇ。」
「一昨日慌てて買いにいってきた。これ奮発したんですよ。」
風呂敷に包んで帰るのもオツだけれども、どうにかすれば大き目のバッグにも入りそうだ。
「遊・・今からそれ持って帰れば?」
「いやだ。明日で充分。」
「・・・。」
遊の、この頑固さはなんなのか。
でもまぁ、一応帰るって言ってるからよしとしよう。
「ヒロトは12月中、一日も休まなかったんじゃないの?」
「休みの日はありましたよ。結局毎日ここにいたけど、早めに帰らせてもらったり、適当に抜いてます。」
「経験者は語るけど、ちゃんと休まないと電池切れるよ。」
「ぷ・・」横で聞いていた遊が笑った。
「遊は、笑わない!」
「オレ、マキノさんよりは疲れ具合の自覚はあると思いますよ。・・配達はどうします?」
「配達は・・ええと頼まれてる分は私がするわ。取りに来てくれるところが多いの。」
「じゃあ、遊と片付けながら留守番します。」
「うん。お願いしとくね。ヒロトの帰る時間は?」
「5時ぐらいだと思います。」
「じゃあ、私は一旦帰るけど、その時間になったら連絡ちょうだい。取りに来てくれてないとこがあったら私が無理やり配達するわ。」
「了解です。」
「うん。ヒロト君。遊。お疲れさま。まだもう一度会うかもだけど、よいお年を。」
「マキノんさんも。よいお年を。」「よいお年を。」
大晦日というだけの普段と変わらない1日が、もうすぐ終わろうとしていた。
午後は外回りを片付けてしまうことにした。雑草がはびこる季節ではないが、普段あまり手入れしない分、今の機会にしっかり掃除しておかねばならない。
「今日は、カフェのお掃除手伝ってくれて、ありがとうございました。」
「どういたしまして。あたりまえのことです。」
「春樹さんは・・。お正月はいつもどうしてたの?」
「とくに何もしないよ?」
「今年、元旦からバイクに乗ってたね。」
「うん。マキノもじゃないか。」
「・・まぁね。」
「オレは、下心あったから。」
「あったの?」
「無自覚だけど、下心だったね。」
「ヒマだから、ってわけじゃなかったんだね。」
手を動かしながら、2人で笑った。
「カフェは、正月三日間は休むんだろ?」
「うん。去年と違って、開けたら周りを巻き込んじゃう・・特に、遊。」
「そうだな。店を開けるとわかったら、アレは確実に実家に帰らないだろうな。」
「あの~。田舎のほうって、お正月の変った行事はないの?初詣みたいなのは?」
「そうだな。子どもの頃は、除夜の鐘が鳴りはじめる頃から家族で近所の神社に行ってた。御芳山の大きな神社じゃなくて、ごく小さいお宮さんだな。回り持ちで当番してて、当たった家が大晦日の日に正月飾りと供え物をして、火を焚いて、お参りする人にお神酒か甘酒をふるまってる。ただそれだけのことだけど。」
「行ってみたいかも。」
「行くの?これと言っておもしろい事はないよ?オレも久しく行ってない。今まで兄貴の家族枠だったから当番も当たらなかったし。そうか・・今年から一世帯として数えられるなぁ・・何年か後に当番あたるかも。」
「元旦は?初詣は?遊びには行ったりした?」
「正月なぁ。・・初詣も興味はないし。一度だけ冬休みに同僚とスキーに行ったことがあるけど。・・・元旦から兄貴の家に呼ばれて雑煮食べて、子ども達と遊んだり・・あとはヒマにしてることが多かったな。」
ぽつぽつと思い出しつつ話す春樹に、マキノは何の気なしに相槌を打った。
「味気ないねえ。若さもないねえ。」
「悪かったね。・・そもそもオレ、若い頃あんまり遊んでないからね。」
「な・・・」
ハッ・・とした。
自分は「なんで?」と、聞こうとしたのだ。
そして、全身の血管がきゅーっと縮んだ気がした。
「遊んでいない」・・ただの一つの単語だけど・・。
春樹さんが大事な人を失くしたのはいつ・・? 大学の時だと言っていた。年上の人だから、まだ二十歳?それ以下??そんな時、普通の学生と一緒にお気楽に遊べるような人だろうか?すぐに忘れてしまえるような人だろうか?・・・イズミさんはしばらくは落ち込んでいたと簡単に言ったけれど、春樹さんからは、その頃ことを詳しく聞いていない。立ち直ったと言っても、長い間引きずったに違いない。
去年だって・・・私が、・・私が事故った時、あんなにパニクっていたのだから、普段表面には見えてなくても、深い傷がまだあるはずなんだ。
・・・そんな傷に、触れたくもなかったし、受け止める自信もなかった。
聞いただけで、想像するだけでも痛いから、目を背けて、忘れるようにしていた。
そのまま、私の脳内では本当になかったことにしそうになっていたの?
触れてはいけないのに。
何も考えずに過去を振り返らせるようなことを聞いてしまった自分を、心の中でののしった。
・・私のバカ!!
味気ない?若さがない?
私はなんことを・・こともあろうに、こんなところで掘り返してしまうなんて・・・。
マキノは下を向いたままゴミ袋にゴミをかき集めていて、視界の端の春樹さんは、片手には竹ぼうきを持って、クモの巣を払い、片手にはホースで水を撒いてホコリをとばしていた。
そっと春樹の様子をうかがった・・・怒っても笑ってもいない普通の顔だった。
小さな声で、「ごめん・・。」と言った。
春樹はそれが聞こえたらしくキョトンとして、「何が?」と言った。
「・・お水冷たいでしょ?」
「冷たい。もうちょっと水の勢いが欲しいけど指に力が入らないよ。」
そうだった・・それは過去のことだ。春樹さんにとっても、とっくに、過去のことだった。
・・どうして、今、自分の胸が痛いのか・・。
昔のことなんて、聞かなきゃよかった・・と一人でそう思った。
昔の彼女のことだけじゃない。
お父さんとお母さんのことも、あまり聞いていない・・・自分が春樹さんと会った時、すでに他界しておられたから、こういう生活をしてきたのだと、すんなり受け止めてしまっている・・。
次々と、近い人が亡くなって、あたりまえに愛してくれていた人が自分のそばからいなくなっていくことの孤独感は、半端なものではなかったんじゃないのかしら・・・。
想像すると、なんだか泣けてくる。
・・ホントにバカだ私。
人それぞれに、歩んできた過去がある。
知ってる。
分かってる。
頭では理解してる。
自分の父が亡くなった時は・・喪失感はあったけれど、病気で苦しむ本人と、看病に疲れて心身ともにヘトヘトになっている母を見ていているのもつらくて、“人は死ぬもの”と、すぐに父のいない生活を受け入れてしまった。
・・・私って・・冷たい。
・・・心も、狭い。
心の傷のことを考えているのに・・
昔の春樹さんが、他の誰かを愛してたってことを想像したくない自分があった。身勝手な嫉妬だ。
自分が昔付き合った人のことだって、春樹に聞かせたくない。
作業が機械的になってきた。もうお掃除やめたいな・・。
春樹さんが、不意に声をかけて来た。
「あのさマキノ。」
「はい?」
「正月・・、温泉でも行く?」
「それもいいんだけど・・・」
「なに?希望があるの?」
「ええと・・」
マキノは実家の母のために、年末の朝市に出ていた野菜や卵を買ってあって、それを持って帰りたいと思っていた。去年は大晦日に帰って、お料理の手伝いをしたっけ・・今年は元旦は達彦さんイズミさんのお宅にお年始の挨拶に行かなくちゃ・・。
春樹さんは、義理の母親のことをどう思っているんだろう・・。
自分が流産した時、心配して2泊して帰ったけれど、結構仲良くしててたな・・。
「あ・・あの、お兄さんの家にお年始の挨拶したあと、実家に帰りたい。」
「いいよ。・・・オレも?」
「うん。一緒に来て欲しいな。」
「わかった。じゃあ・・スーツ着ていくの?」
「なんでよ。」
「マキノをくださいって、家に挨拶しに行ったのがフラッシュバックした。」
「それ・・時計止まりすぎだよ・・春樹さん。」
「ははは・・・」
春樹はいつもどおり明るかった。
「マキノ、体のほうは、もういいの?」
「うん。平気だよ?元気。」
「自分では平気だと思っても、やっぱり無理しないで、今日もよく動いてたし。」
「うん。わかってる。」
「正月は・・“とにかくゆっくりする” でいいね?」
「うん。ありがとう。」
・・そして、いつもどおり、優しかった。
「じゃああと掃除は、台所は全面的に頼んでいいかな。」
「やりますやります。でも、ヒロトが31日までやるから、明日の午前中は工房で、明後日はカフェを手伝おうと思ってるの。」
「オレは、明日ホームセンターに買い物に行くよ。洗面所のラックの足が一本壊れてるのが気になったから。それで明後日は車とバイク洗う。マキノのもね。」
「うわお、心の底からありがとう!日用品も買っといてくれる?書きだしておくから。」
「いいよ。」
私は・・忘れないことにしよう。
どんなに心を許しても、存在が近くなっても触れてはいけない部分があるってことを。
マキノは話をしながら玄関のポーチをブラシでこすって落とした。
これからは二人で生きていける。この幸せが、ずっと続きますように・・。
そう思いながら、ざざーっとバケツの水を流した。
― ― ― ― ―
12月31日、マキノと遊は、スーパー出しの分から工房に手伝いに入って、その続きでヒロトが料理していたおせちオードブルの品々をカフェの店に運びこんで、盛り付けをした。
昼ご飯も簡単に済ませて、そのまま精力的に頑張ったおかげで、午後3時には全部完成した。
「あーやったねぇ、いい時間に完成した。お正月飾りひとつでグレードがあがった気がするね。色のバランスもいい。」
「必要最低限のお正月の品目は押さえてあるけど、この辺に惣菜風の家庭的なのも入ったし、ちょっと洋風なのも入れて、安くてもしっかり食べられるし見栄えはすると思いますよ。」
材料費はカフェから全部出していたのだが、その分の売り上げ予定の半分をこっそりヒロトに渡して「内緒のボーナスだよ。」と、その労をねぎらった。
だって、ほとんどヒロトが一人でやり遂げたようなものだから、材料費が残ればそれでいい。
遊の分は、有名なデザイナーの名前を書いた小さめの三段重にオードブルと同じものを盛り付けてもらっていた。
「遊はいいの買ってあったんだねぇ。」
「一昨日慌てて買いにいってきた。これ奮発したんですよ。」
風呂敷に包んで帰るのもオツだけれども、どうにかすれば大き目のバッグにも入りそうだ。
「遊・・今からそれ持って帰れば?」
「いやだ。明日で充分。」
「・・・。」
遊の、この頑固さはなんなのか。
でもまぁ、一応帰るって言ってるからよしとしよう。
「ヒロトは12月中、一日も休まなかったんじゃないの?」
「休みの日はありましたよ。結局毎日ここにいたけど、早めに帰らせてもらったり、適当に抜いてます。」
「経験者は語るけど、ちゃんと休まないと電池切れるよ。」
「ぷ・・」横で聞いていた遊が笑った。
「遊は、笑わない!」
「オレ、マキノさんよりは疲れ具合の自覚はあると思いますよ。・・配達はどうします?」
「配達は・・ええと頼まれてる分は私がするわ。取りに来てくれるところが多いの。」
「じゃあ、遊と片付けながら留守番します。」
「うん。お願いしとくね。ヒロトの帰る時間は?」
「5時ぐらいだと思います。」
「じゃあ、私は一旦帰るけど、その時間になったら連絡ちょうだい。取りに来てくれてないとこがあったら私が無理やり配達するわ。」
「了解です。」
「うん。ヒロト君。遊。お疲れさま。まだもう一度会うかもだけど、よいお年を。」
「マキノんさんも。よいお年を。」「よいお年を。」
大晦日というだけの普段と変わらない1日が、もうすぐ終わろうとしていた。
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