青の話

豆腐

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はぁい、こんにちは。
私、元魔法少女現OLの海野柚子うみのゆずこ

「ぁんっ・・・あっやあっ」
「ほら、ここがいいんだ、ろっ」
パンッ パンッ パンッ

こっちは恋人の秦元基はたげんきさんとその浮気相手!

「やあん、もういっちゃううぅぅっ」
「は、・・・・っ」
パンッ パンッ パンッ

お、ぼちぼち終わるか?
そろそろ録画のために構えているスマホを持っている右腕が限界だから、さっさとしてほしい。

そもそも、何で恋人が来る事が分かっているのに、いたしているのか?
秦さんに、今日は残業で少し遅くなる事を連絡したが、
夕飯は和食が食べたいとリクエストが来たため早く終わらせ急いで買い物してきたのだが。
終わったと思ったら、次は布団に潜りこんでイチャついてき始めたので、録画を継続させたままベッドが映るようにスマホを床に置き、物音をたてないように部屋に置いていた私物をまとめる。
持って帰るもの、もう捨てていい物を選別し、持ち帰る分を鞄に余分に入れていたエコバッグに突っ込んでいく。
げ、化粧水と乳液が明らかに減ってる。もう使いたくないし置いてこ・・・
あ、服、寝室にあるわ。いや、部屋入りたくないし浮気おせっせしてる部屋に置かれた衣類なんてもう着たくもないわ。

すべて終わらせ、買い物の荷物と持ち帰り分のエコバッグを下げてスマホを回収し、音をたてずに部屋を後にした。


*******************

「うーん・・・・」

昼休み。
自分の机に弁当を広げ、昨夜の浮気動画チェックをする。

あの後、自分のアパートに戻ると、秦さんから『いつ来る?』とLINEに連絡が来ていた。
いやいやいや、あんた今浮気相手とおったやろ・・・と呆れつつ、『残業遅くなりそうなので行けなさそうです』と返信。
いつもならすみませんと前置きするが、たとえ文字でも謝りたくなかったので打たない。
何やら返信が来ていたが、通知で見える範囲で文句が書いてあったので見ずに早々に寝た。

会社は同じだが、秦さんのいる営業課と私がいる業務課で階そのものが違うため、自分の机から動かなければ向こうから訪ねて来ない限り会うことはない。
入り口からも離れてるので、机下に隠れれば優しい先輩方が察して誤魔化してくれる。
そもそも秦さんから、会社に付き合っている事は照れくさいから言わないでおこう、と決められていた。
だが付き合って3ヶ月くらいの頃に、デート中なところをうっかり上司に見られていたようで、ここ横浜支部業務課内のみで知られてしまっている。
他には広がらないように課内の先輩方にお願いしたが、言わないでおこうとは浮気に不利だからか・・・。
弁当をつつきながら、今更気づいた事実に落ち込みつつ、昨日撮ったものをチェックする。
もちろん、音量はオフだ。
しっかし、この相手の女の人、どっかで見たような・・・・あ、きんぴらいい感じに胡麻の風味ついてる、成功だわ。

「あー・・・・どこだっけ・・・」
「おう、なんや悩んどるん・・・・・って何見よっと!?」

げ、加賀地さんにバレた。
業務課長の加賀地さん。
高校卒業後初めて入った会社では先輩だったが、ここでは上司だ。
友人伝手に引き抜かれ県外に再就職したのは聞いていたが、まさか九州を出て転職し、配属された先で会ったときには本当に驚いた。
同郷で倍近く歳が違う私をよく可愛がってくれる。会議では標準語だが、それ以外で二人で話すときは方言で話すことが多い。

「会社でエロ動画みるなよ・・・彼氏に欲求不満解消さしてもらえよ」
「やや、違います、たしかにエロ動画だけど、これ秦さんの浮気現場撮ったやつなんですよぉ」
「は、・・・・・・・・はぁ!?浮気!?!?」
「ですです」

頷いて動画を見せようと画面を向けると、嫌な顔をして画面を見ないように顔を背けられた。

「いや、見せんでいい見せんで。知っとる野郎の最中の動画なんて見たくもない」
「いや私も見たくはないんですよ。ただ奴と別れたいんで、何か言われたとき用の反論の為にチェックしてたんですけど、相手の女の人が何処かで見た顔なんですよねぇ・・・そっがなかなか思い出さなくて」

動画を一時停止して、スクリーンショットを撮り浮気相手の顔を拡大して見せる。

「・・・ほんとやね、どっかで見たこつあんなぁ」
「そうなんですよー、どこでしょ?」

二人で悩むが分からず、昼休みが終了してしまったためそこで中断し仕事を再開した。


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