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あの後、渚は旦那の顔今度見に来るから!と無地の100均の紙袋を押し付けて帰って行った。
誰だよ旦那。まだ決まってないだろ。
久しぶりの1人の夜で、溜まった本を読みまくろうと思っていたのになんだか疲れて早々に寝てしまった。
因みに、押し付けられた紙袋の中身を確認しようと思ったが、濃い紫のレースのベビードールだった。大事な部分がすっけすけだったからベッド下収納の奥に紙袋ごと仕舞い込んだ。いつ着ろってんだあの野郎。ベビードール自体は好きでこの時期は寝間着代わりに着るが、こんな透け透けなやつは着ない。
日曜日のお出かけはもうなんか本当に、うん。すごかった。大天使の本気舐めてた。
終始エスコート完璧だし、夜ご飯も夜景がきれいな所、みたいな気取った所ではなく隠れ家的な創作料理を出してくれるダイニングバーに連れて行ってもらった。めちゃくちゃ美味しかった。ご飯前には、以前電車の吊り広告を見て行ってみたいと漏らしたミュージアムに行った。今月のチケットは完売、とどこかで見たような気がするが、事前に取ってくれていたそうだ。スパダリか・・・・
夜は、明日月曜だから、と早めに帰してくれた。
帰りに、お弁当のことを聞いてみたらすごく喜んで頷いてくれたから、期待に添えるよう頑張って毎日作っている。
あんな嬉しそうな顔、初めて見た。眩しすぎて目が潰れるところだった。天空の城の王になろうとした大佐になるとこだった。
そして始まった7月最終週。
今週末には先週頑張って準備した会議がある。顧客向けの説明資料に新機能分を追加したのでその説明と、内容に偏りがないかの確認だ。
新機能や機能変更については、私達が書いた方が早いし記載漏れも殆どないけれど、どうしても開発寄りに書いてしまうところが出てくるため、営業や上層部へも確認、指摘があれば持ち帰るか、その場で訂正するのだ。
楠木さんは相変わらず外回りや他課との会議に出て忙しくしているが、私は金曜の会議までは割とのんびりデスクワークだ。当日は説明側に立つため、その下準備や、楠木さんや他班のスケジュール管理をしていく。
「うーみのっ」
「私は花男の主人公じゃないお」
「お、今日そこまでのめり込んでないか。飯食おうぜ」
楠木さんがいない間のお目付け役にされた仲川に呼ばれ、お弁当を持って休憩スペースに向かう。
が、途中でちょうど楠木さんがフロアに戻ってきた。
「楠木さん、おかえりなさい」
「お疲れ様です」
「ああ、ただいま。今から昼か?」
「ええ、楠木さんも一緒にどうですか?」
「荷物置いてくるから、先に休憩スペース行っててくれ」
「はーい」
休憩スペースに行き、テーブルにお弁当を置いてから、備え付けのドリンクコーナーへ。
隣あって置いてある戸棚から自分と楠木さんのマグを取る。
「ヨッシーのどれ?」
「その緑のやつー、アイスコーヒーお願いしていいか?」
「はいはーい」
冷凍庫から氷を出してマグ3つともに入れる。
お茶の機械にほうじ茶の粉末を入れて、水の残量を確認して楠木さんのマグをセットしスイッチを入れる。同時進行で隣のエスプレッソマシンに仲川のマグをセットしてアイスコーヒー用のスイッチを押す。
お茶やコーヒーの粉は予め課の全員からお金を回収し、そこから出している。その管理も私がしている。ほか、飲みたいものは持参しているようだが、皆さん結構この2台を使用しているようだ。機械自体は忘年会で課のメンバーが当てたそうだ。すげぇ。
「あれ、楠木さんもコーヒーじゃねぇの?」
「食後はコーヒーが多いけど、食事中は冷たいお茶か水なのよ。最近ほうじ茶にハマってるみたいだから」
「へぇ・・・・よく知ってんね」
「まぁ、いつも一緒に食べてるから・・・はい、どうぞー」
いれ終わった楠木さんのマグと自分のマグを入れ替えほうじ茶をいれるようにセットし、テーブルにマグ2つを運ぶと、仲川が半笑いで、生温い目で見てきた。
「あんがと」
「・・・・・なによ、その顔」
「べぇっつにー?・・・楠木さん、ご飯中の飲み物はほうじ茶ですか?」
「え?そうだが・・・何かあったか?」
「いーえぇ、何もないですよ」
「あぁ、準備してくれてたんだ、ありがとう」
「いえいえ、では、いただきましょう」
ほうじ茶をいれ終わった自分のマグも持ってきて、弁当包みからお弁当を出して3人で手を合わせる。
お弁当の蓋を開けると、仲川がのぞき込んでくる。
「・・・・包みだけじゃなく弁当箱まで一緒か・・・」
「? なん?」
「なんもねー。お前の母さんもだったけど、お前も料理上手いよな、美味そう」
「美味そうじゃない、美味いんだよ。やらんけど」
「いらんわ。殺す気か」
「え、死ぬほどは美味くないよ?」
「そうじゃねーわ」
「仲いいな、お前達・・・・この豚のゴボウ巻き、美味いな」
「ホントですか?好きな味?」
「ああ、好きだな」
「そーですか、よかった・・・・なに、ヨッシー」
大天使スマイル頂きました好きな味だって好きだって!!
きゃー、と内心はしゃいでいると、仲川がげんなりした顔で、コンビニの袋から取り出したサンドイッチをもそもそ食べている。
「なに、美味しくなかった?」
「いや、俺のこと忘れてないよね?いちゃつくのは他所で、二人っきりのときにしてくれる?」
「いちゃ・・・・・?」
「分かってないとか!!!もう!!!!!」
むしゃあ、と苛立たしげにサンドイッチを咀嚼する仲川。と、それを大天使スマイルで見ながら箸を進める楠木さん。
なんだ、情緒不安定か?
それからは、週末の会議について軽く話し、業務に戻った。
誰だよ旦那。まだ決まってないだろ。
久しぶりの1人の夜で、溜まった本を読みまくろうと思っていたのになんだか疲れて早々に寝てしまった。
因みに、押し付けられた紙袋の中身を確認しようと思ったが、濃い紫のレースのベビードールだった。大事な部分がすっけすけだったからベッド下収納の奥に紙袋ごと仕舞い込んだ。いつ着ろってんだあの野郎。ベビードール自体は好きでこの時期は寝間着代わりに着るが、こんな透け透けなやつは着ない。
日曜日のお出かけはもうなんか本当に、うん。すごかった。大天使の本気舐めてた。
終始エスコート完璧だし、夜ご飯も夜景がきれいな所、みたいな気取った所ではなく隠れ家的な創作料理を出してくれるダイニングバーに連れて行ってもらった。めちゃくちゃ美味しかった。ご飯前には、以前電車の吊り広告を見て行ってみたいと漏らしたミュージアムに行った。今月のチケットは完売、とどこかで見たような気がするが、事前に取ってくれていたそうだ。スパダリか・・・・
夜は、明日月曜だから、と早めに帰してくれた。
帰りに、お弁当のことを聞いてみたらすごく喜んで頷いてくれたから、期待に添えるよう頑張って毎日作っている。
あんな嬉しそうな顔、初めて見た。眩しすぎて目が潰れるところだった。天空の城の王になろうとした大佐になるとこだった。
そして始まった7月最終週。
今週末には先週頑張って準備した会議がある。顧客向けの説明資料に新機能分を追加したのでその説明と、内容に偏りがないかの確認だ。
新機能や機能変更については、私達が書いた方が早いし記載漏れも殆どないけれど、どうしても開発寄りに書いてしまうところが出てくるため、営業や上層部へも確認、指摘があれば持ち帰るか、その場で訂正するのだ。
楠木さんは相変わらず外回りや他課との会議に出て忙しくしているが、私は金曜の会議までは割とのんびりデスクワークだ。当日は説明側に立つため、その下準備や、楠木さんや他班のスケジュール管理をしていく。
「うーみのっ」
「私は花男の主人公じゃないお」
「お、今日そこまでのめり込んでないか。飯食おうぜ」
楠木さんがいない間のお目付け役にされた仲川に呼ばれ、お弁当を持って休憩スペースに向かう。
が、途中でちょうど楠木さんがフロアに戻ってきた。
「楠木さん、おかえりなさい」
「お疲れ様です」
「ああ、ただいま。今から昼か?」
「ええ、楠木さんも一緒にどうですか?」
「荷物置いてくるから、先に休憩スペース行っててくれ」
「はーい」
休憩スペースに行き、テーブルにお弁当を置いてから、備え付けのドリンクコーナーへ。
隣あって置いてある戸棚から自分と楠木さんのマグを取る。
「ヨッシーのどれ?」
「その緑のやつー、アイスコーヒーお願いしていいか?」
「はいはーい」
冷凍庫から氷を出してマグ3つともに入れる。
お茶の機械にほうじ茶の粉末を入れて、水の残量を確認して楠木さんのマグをセットしスイッチを入れる。同時進行で隣のエスプレッソマシンに仲川のマグをセットしてアイスコーヒー用のスイッチを押す。
お茶やコーヒーの粉は予め課の全員からお金を回収し、そこから出している。その管理も私がしている。ほか、飲みたいものは持参しているようだが、皆さん結構この2台を使用しているようだ。機械自体は忘年会で課のメンバーが当てたそうだ。すげぇ。
「あれ、楠木さんもコーヒーじゃねぇの?」
「食後はコーヒーが多いけど、食事中は冷たいお茶か水なのよ。最近ほうじ茶にハマってるみたいだから」
「へぇ・・・・よく知ってんね」
「まぁ、いつも一緒に食べてるから・・・はい、どうぞー」
いれ終わった楠木さんのマグと自分のマグを入れ替えほうじ茶をいれるようにセットし、テーブルにマグ2つを運ぶと、仲川が半笑いで、生温い目で見てきた。
「あんがと」
「・・・・・なによ、その顔」
「べぇっつにー?・・・楠木さん、ご飯中の飲み物はほうじ茶ですか?」
「え?そうだが・・・何かあったか?」
「いーえぇ、何もないですよ」
「あぁ、準備してくれてたんだ、ありがとう」
「いえいえ、では、いただきましょう」
ほうじ茶をいれ終わった自分のマグも持ってきて、弁当包みからお弁当を出して3人で手を合わせる。
お弁当の蓋を開けると、仲川がのぞき込んでくる。
「・・・・包みだけじゃなく弁当箱まで一緒か・・・」
「? なん?」
「なんもねー。お前の母さんもだったけど、お前も料理上手いよな、美味そう」
「美味そうじゃない、美味いんだよ。やらんけど」
「いらんわ。殺す気か」
「え、死ぬほどは美味くないよ?」
「そうじゃねーわ」
「仲いいな、お前達・・・・この豚のゴボウ巻き、美味いな」
「ホントですか?好きな味?」
「ああ、好きだな」
「そーですか、よかった・・・・なに、ヨッシー」
大天使スマイル頂きました好きな味だって好きだって!!
きゃー、と内心はしゃいでいると、仲川がげんなりした顔で、コンビニの袋から取り出したサンドイッチをもそもそ食べている。
「なに、美味しくなかった?」
「いや、俺のこと忘れてないよね?いちゃつくのは他所で、二人っきりのときにしてくれる?」
「いちゃ・・・・・?」
「分かってないとか!!!もう!!!!!」
むしゃあ、と苛立たしげにサンドイッチを咀嚼する仲川。と、それを大天使スマイルで見ながら箸を進める楠木さん。
なんだ、情緒不安定か?
それからは、週末の会議について軽く話し、業務に戻った。
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