青の話

豆腐

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「うー・・・・・・・」

喉が乾いた。
昨日お酒飲んだし、辛い系の物も食べたからかなぁ・・・?
お茶飲もう、と体を起こそうとして、違和感に気づく。
腰に重さが・・・・ん?何この腕。というか、背中が何かあったかい。つか、あたし、昨日ベッドで寝たっけ・・・・んんんん??そもそも、楠木さんと話してた気がする、けど、それ以降記憶無くない?

「・・・・・・・・」

そろー、と、後ろを、振り向く。
ボタンが開けられたシャツに、喉仏が色っぽい、男の人の太めな喉。
その上に、大天使の麗しい寝顔。
うわー背後のカーテンの隙間から入ってくる光が後光みたいになっててきれいだなーマジモンの大天使やん睫毛なっがーいチラ見えしてる鎖骨も胸板もなんだかせーくすぃー・・・

「・・・・・・はあああああああああああ!?」
「ん゛ー・・・・・・ゆずこ、うるさい・・・」

なんで!!いっしょに!!!!楠木さんが寝てるの!?!?!?



「で、何で一緒に寝てたんです?」

高速でシャワーを浴びた後、のろのろと起き出した楠木さんをバスルームに突っ込み、パンをトースターに入れ卵とベーコンを焼きながら、千切ったレタスとベビーリーフとコーンでサラダを作って朝食完成。
同時に淹れたコーヒーと、トーストと目玉焼き、ベーコンを乗せたプレートとサラダをダイニングテーブルに並べ、戻ってきた楠木さんと向かい合わせに座り、いただきます、と手を合わせたところで切り出した。
食べながらで行儀悪いかもしれないけど、取り敢えず記憶が飛んでるので聞かねば気がすまない。

柚子ゆずこが話しながら寝落ちたからベッドに運んだんだけど、離してくれなかったからね。起こそうとしたけど起きなかったし」

なんと、私有罪やないかい!!!

「す、すみません」
「いやいや、役得だったよ。好きな子と一緒に寝られたんだし」
「・・・・は?なんて?」

いま、すきなこっていわなかったか、このひと。

「言っただろう?酔ってないって」
「は、ぁ」
「大丈夫、今回は何もしてないよ」
「あ、ありがとう、ございます?」
「まぁ、次はするけど」
「な、なにを」
「知りたい?」

にこ、といい笑顔で言われ、首を精一杯横に振った。
ふふふ、って、こわっ!笑顔が怖い!!

「その様子じゃ、やっと意識してくれたみたいだな・・・・結構あからさまにしてたつもりだったけど」
「う・・・その、楠木さん」
「うん?」
「も、もしかしてー、ですけどー」
「なに?」
「好きな子って、私、だったりします?」
「そうだな、まさか本当に気付かないとは思わなかったなぁ」
「・・・・・・・」
「あぁ、もうこんな時間か。そろそろ行かなきゃなぁ」

にこにこ笑顔のまま、ご馳走様、と手を合わせて、シンクまで皿を下げてくれる。
い、いつの間に食べ終わったの。私まだ半分以上残ってんだけど。
皿を洗って乾燥機の中に並べると、ソファーに乗せたままだった鞄を取り、玄関に向かう背を後ろから着いていく。

「これからも落とすつもりで行くから、ちゃんと意識してね?」
「ぅあ、はい」
「じゃあ、今日はもう行くから。明日の夜・・・夕方から予定は空いてる?」
「あ、空いてます」
「なら、夕方から出掛けよう。準備してて待ってて」
「は、はい」

玄関のポールハンガーからジャケットを取って渡すと、そのまま手を掴まれてぐい、と引っ張られる。

ちゅ。

「じゃ、行ってきます」
「いってら、しゃーい・・・・」

腕を離され、頭を撫でられながら、外出の挨拶に返事を返す。
ぱたん、と閉まる扉を見ながら、軽い音のしていた頬に手を当てる。


・・・・・・・・・き、きすされたあああああああ!?!?!?



****************

「なぁんだ、頬にキスくらいで騒ぐなよなぁ」
「騒ぐよ!騒ぎますとも!!」

どん、と乱暴にグラスをテーブルに置きながら返す。
ランチだから、中身はお酒ではなくコーヒーなんだけど。
それを見ながら、向かいに座る井池渚いちなぎさが一口サイズに切ったサンドイッチをつまんでいる。
誰かと話したくて、ラインの魔法少女グループで呼びかけたところ、渚がコスプレ衣装は無事仕上がって暇だったようで、すぐに来てくれた。
他は何やら予定があるらしく無反応だった。
外に出るのも暑くて面倒だったため、家ランチにした。
いつものメニューでも、ワンプレートにしたり木製食器を使うだけで何となくカフェ風になるから不思議だ。

「にしても、のんとぐれの次がユズとはねぇ・・・大穴だわ」
「いやいや、まだ分からんよ?」
「絶対無理だろ。既に落ちかけてるくせに」
「うっ・・・・」
「気遣いできてー優しくてー、リードしてくれるみたいだしぃ?甘やかしてくれるんでしょ?前の奴とは大違いじゃん。何を躊躇してんの」
「だ、だって、一応この前まで、恋人いたんだし・・・早々に切り替えるのって、なんかやじゃない?」
「そんなん人それぞれじゃない。あんたの場合、相手は浮気してんだし、それ以前に扱いがほぼ家政婦だったでしょ」
「そ、そうか、な?」
「そうよ!毎日残業あろうが無かろうが飯は作らせお風呂掃除に洗濯ゴミ捨て、休みの日には掃除に布団干し。時にはヌいてやるなんざオナホ契約付家政婦じゃん」
「え、そんな酷かったっけ」
「一緒に出掛けるとかも無しなんて、本当にあんたの尽くし体質どうにかした方がいいわ。ダメ人間製造機になりたいの?」

き、今日はなんか虫の居所が悪いのか?すごくボロボロ言ってくるな??
もともと口が悪いってのはあるけど、それ以上にボロボロだな。
考えが顔に出ていたのか、渚がふぅ、と息を吐いてコーヒーを一口飲む。

「・・・・・・あのね。神奈川に就職して来たときは目は死んでるし、精神的にボロボロだったし。彼氏が出来たって報告あったから、ちょっとは元気になったのかと思えばなかなか会えなくなるし、連絡は取れないし。原因は彼氏ダメ男のお世話で忙しいとか。まぁ幸せならいいかって静観してりゃあ今回の浮気騒ぎ。この前の女子会でも言われただろうけど、みんな本当に心配してたんだから」
「うぅ、そんなに心配でしたか・・・・ごめんなさい」

そんなに心配かけてたのか。全然気付いてなかった。
凹んで俯いていると、渚が手を伸ばして頭を撫でてくれる。

「そんな訳で、恋人が出来る出来ないに関わらず、ユズにいい方向に話が落ち着けばいいなって皆思ってる」
「・・・・・うん」
「で、いつ落ちんの?」
「だからまだだよ!!」

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