悪役令嬢なのに、誰にも憎まれなかった

ねことくラゲヨ

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断罪が始まらなかった日

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「――以上の罪により、貴女を断罪する」

そう言われるはずだった。
ここは、そのための場所だった。

私は悪役令嬢。
嫌われ、憎まれ、
石を投げられる役目のはず。

けれど――
誰も、何も言わなかった。

視線はある。
囁きもある。
それなのに、
憎しみだけが、どこにもなかった。

「……違うのか?」

思わず漏れた私の声に、
王子は困ったように目を逸らした。

「君を、悪だと思った者はいない」

その言葉は、
救いではなく、空白だった。

悪役でなければ、私は何なのか。
憎まれなければ、
私はどこへ行けばいいのか。

断罪されなかった令嬢は、
その日、役割だけを失った。

――物語の外に、
静かに放り出されながら。
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