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6 -Six-
テオとする初めてのキス ※
しおりを挟むテオの家に着いた。その間もテオは、僕の手を離さなかった。
歩いている時もバスに乗って帰っている間も嬉しそうに、ずっと。時折握った手にキスをしてくれた。すごく好かれてるって、それだけでわかる。このむず痒いような照れくささは、今まで感じたことがない。
「今日、楽しんでくれた?」
「うん。すごく楽しかった。知らなかった景色を見られたのもすごくワクワクしたし、日本のパンが食べられたのも嬉しかったな」
リビングのソファに座り、出された紅茶を飲みながら優しく穏やかな会話をする。
「それはよかった。ただユウリ、俺がパン屋だってこと忘れてない?」
「あっ……」
「ハハっ。もう、可愛いなぁ」
笑いながら抱き着かれて、大きな手で頭を撫でられた。
「ご、ごめん」
「いいんだよ。俺だって新しいパンに出会えて勉強になったから。今度は俺の手でユウリに日本のパン、作ってあげる。それまではフランスのパンで我慢して?」
「我慢だなんてっ……ん」
反論しようとしたら、その口をテオの口に塞がれた。すごく自然に、身構えることなく与えられるキス。唇をそっと離したテオが潤った瞳で優しく微笑むから、僕は少しだけ悔しくなった。
「そうやって優しい言葉をかけて、落すんだ」
「は? こんなふうに口説くのは、ユウリが初めてだよ」
「うそだぁ」
「今までは声を掛けられて流されるままセックスしてたから、ほんとに、恋をしたのもこうして想いが届いたのも、愛しく思ってするキスも、ユウリが初めて」
「やっぱモテるんじゃん……」
わからないように日本語で呟いた。
「あ。今、拗ねたでしょ」
「はあ? 拗ねてないし」
「ウソ。顔に出てた」
頬や口の端、顎に啄むキスをする。
「……じゃあもう一回、口にして?」
「あぁほんと、可愛いんだから」
こんなふうに甘やかしてくれるから、僕も自然と甘えたくなる。虚勢を張って日本から飛び出したのに、出会ってしまったんだ。この人になら甘えても大丈夫、そう思える人に。
彼は僕の頬を両手で包んで、優しく唇を触れ合わせてくれた。感触を確かめるように、何度も。触れ合わせて、チュッと音を立てて離す。それがだんだん楽しくなってきて、二人でクスクス笑いながら、それでもテオはやめようとしない。
「ん、もぉ、いいよ」
「んーん、まだだよ。もっと触れさせて」
彼の手に自分の手を重ねて剥がそうとしてみたけれど、その効果は全然なくて。それどころか今度は、僕の唇を食べるみたいに咥えたり、舌先で丁寧に撫でてくる。
「ん、んぅ……」
「かわいい、ユウリ……」
くすぐったいような、体の奥がしびれるような感覚。こんなにも溺愛されるのなんて初めてで、嬉しいのにもどかしい。これを延々とされていれば、そりゃあ股間も疼いてきちゃうわけでして。
腰をモゾッと動かして薄く唇を開いたら、その隙を狙っていたのか、テオの舌が僕の歯列を割って口の中に入ってきた。舌先が、反応を窺うように僕の舌を撫でてくる。僕がそれに答えるようにテオの舌を絡め取ったら、彼は急に勢いづいて激しいキスに変わった。まるで僕の口腔をおかすような、激しいキス。息をすることを忘れてしまいそうなのに、この息苦しささえきもちいい。
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