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7・雄代くんとの同居生活
雄代くんと初めて踊るカップルダンス
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リビングに三脚を立てて、スマホを設置した。
雄代くんはマスクをしながら動画を見て、振り付けを確認している。
「うーん、これ結構みんなダンス違うな。オリジナルがあるのかと思ったら、そうじゃなかったわ。どうしよ、これちょっと、俺が振り付け考えてもいい?」
「うん」
「触れ合い少ないやつね、ちょっと待ってて」
スマホを操作してサビを繰り返し聴きながら、インスピレーションのままに体を動かしていく。歌を口ずさみ、軽くステップを踏んで手で何かを表現している。何度も、何度も、創作したダンスを体に叩き込むように踊る。
雄代くんのこの作業風景が、すごく好き。ずっと見ていたいくらい好きなんだ。
「おけ、できた。来て? 舞音」
「ん」
ソファーに座って眺めていると、手招きされた。カメラ前に移動して、雄代くんの隣に並ぶ。まずはカウントで振りの確認。
今まで二人でやって来たことを応用して、軽くステップを踏みながらシンクロする手の振り。向かい合って両手を伸ばし、指を絡めて繋いで距離を詰め、前後にステップ。雄代くんに高いところで握られた指先を軸にターンをしたら、手を繫いで一歩引き、雄代くんがその手をグッと引っ張る。それで彼の腕の中に納まるというダンス。
触れ合いは少なく、けれど可愛らしいカップルに見える演出。
曲に合わせて踊ってみると、もっとそれらしくなった。
「すごい、カップルっぽい!」
「おお、よかった。ちょっと機嫌も直ったね?」
顔を覗き込まれて、微笑みながら頬を優しくペチペチされた。
「う……ごめんなさい。急に俺、どうかしてた」
「謝らなくていいから、踊ろう?」
「うん」
映る位置を確認して録画の赤いボタンをタップしたら、雄代くんが曲を流す。
キャップを深く被って立ち位置に戻り、深呼吸。ふぅ……と息を吐いたところで、雄代くんの手がそっと俺の腰に添えられた。振り返ってみると、彼も俺の顔を覗き込む。目が合って、二人で息を吐くように小さく笑い合う。
曲が始まって踊り始めたら、練習の時よりも気持ちが高まって、気付けば笑顔全開で踊っていた。雄代くんと手を繫いでステップを踏むと、胸が温かくなってくる。最後、彼に後ろから抱き締められたら俺は、その手に自分の手を重ねて握っていた。
「ストックあるけど、今編集してアップしてもいいかな?」
「うん、いいんじゃない?」
録画を停止して、三脚からスマホを外す。雄代くんの許可が下りたので早速、ソファーに座って作業開始。編集アプリを開いて動画をダウンロードしたら、編集画面で余分な前後をカットする。俺はこだわりが強いので、いい場面はコンマ何秒も逃したくない。中途半端に「これでいいや」では出したくない。
三脚を畳んでくれた雄代くんが、俺の隣に座る。被りっぱなしだったキャップを外してくれて、ついでに髪まで梳いて直してくれた。
動画の始まりは、雄代くんが俺の腰に手を添える少し手前から。最後は後ろから抱き締められて俺がその手を握るまで。動画の長さは二十秒。あえてエフェクトは掛けなかった。
楽曲をダウンロードして埋め込んで、完成。すごく素敵な動画になったと思う。
「できた! じゃあ、アップするね」
「お願いしますっ」
わざと畏まった声色で言って、雄代くんは頭を下げてくる。俺は笑いながらその後頭部をワシャワシャッと撫でて、ついにその動画を投稿した。
「みんな、楽しんでくれるといいなぁ……」
雄代くんはマスクをしながら動画を見て、振り付けを確認している。
「うーん、これ結構みんなダンス違うな。オリジナルがあるのかと思ったら、そうじゃなかったわ。どうしよ、これちょっと、俺が振り付け考えてもいい?」
「うん」
「触れ合い少ないやつね、ちょっと待ってて」
スマホを操作してサビを繰り返し聴きながら、インスピレーションのままに体を動かしていく。歌を口ずさみ、軽くステップを踏んで手で何かを表現している。何度も、何度も、創作したダンスを体に叩き込むように踊る。
雄代くんのこの作業風景が、すごく好き。ずっと見ていたいくらい好きなんだ。
「おけ、できた。来て? 舞音」
「ん」
ソファーに座って眺めていると、手招きされた。カメラ前に移動して、雄代くんの隣に並ぶ。まずはカウントで振りの確認。
今まで二人でやって来たことを応用して、軽くステップを踏みながらシンクロする手の振り。向かい合って両手を伸ばし、指を絡めて繋いで距離を詰め、前後にステップ。雄代くんに高いところで握られた指先を軸にターンをしたら、手を繫いで一歩引き、雄代くんがその手をグッと引っ張る。それで彼の腕の中に納まるというダンス。
触れ合いは少なく、けれど可愛らしいカップルに見える演出。
曲に合わせて踊ってみると、もっとそれらしくなった。
「すごい、カップルっぽい!」
「おお、よかった。ちょっと機嫌も直ったね?」
顔を覗き込まれて、微笑みながら頬を優しくペチペチされた。
「う……ごめんなさい。急に俺、どうかしてた」
「謝らなくていいから、踊ろう?」
「うん」
映る位置を確認して録画の赤いボタンをタップしたら、雄代くんが曲を流す。
キャップを深く被って立ち位置に戻り、深呼吸。ふぅ……と息を吐いたところで、雄代くんの手がそっと俺の腰に添えられた。振り返ってみると、彼も俺の顔を覗き込む。目が合って、二人で息を吐くように小さく笑い合う。
曲が始まって踊り始めたら、練習の時よりも気持ちが高まって、気付けば笑顔全開で踊っていた。雄代くんと手を繫いでステップを踏むと、胸が温かくなってくる。最後、彼に後ろから抱き締められたら俺は、その手に自分の手を重ねて握っていた。
「ストックあるけど、今編集してアップしてもいいかな?」
「うん、いいんじゃない?」
録画を停止して、三脚からスマホを外す。雄代くんの許可が下りたので早速、ソファーに座って作業開始。編集アプリを開いて動画をダウンロードしたら、編集画面で余分な前後をカットする。俺はこだわりが強いので、いい場面はコンマ何秒も逃したくない。中途半端に「これでいいや」では出したくない。
三脚を畳んでくれた雄代くんが、俺の隣に座る。被りっぱなしだったキャップを外してくれて、ついでに髪まで梳いて直してくれた。
動画の始まりは、雄代くんが俺の腰に手を添える少し手前から。最後は後ろから抱き締められて俺がその手を握るまで。動画の長さは二十秒。あえてエフェクトは掛けなかった。
楽曲をダウンロードして埋め込んで、完成。すごく素敵な動画になったと思う。
「できた! じゃあ、アップするね」
「お願いしますっ」
わざと畏まった声色で言って、雄代くんは頭を下げてくる。俺は笑いながらその後頭部をワシャワシャッと撫でて、ついにその動画を投稿した。
「みんな、楽しんでくれるといいなぁ……」
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