踊るキミを見ていたい

朝賀 悠月

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10・ライブ配信_舞音3

メンバーシップ限定配信① UDさんは見守ってくれている

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 その日の夜、久しぶりにライブ配信の開始ボタンをタップした。
 全体公開じゃなくて、登録メンバーシップ限定公開というかたちで。
 これは、俺のアカウントをフォローしてくれて、尚且つ月額料金をかけて俺を応援してくれるファンの方しか見られない配信。だからきっと、本当に俺を好きでいてくれている人しかいないはず。動画の更新も止まっていたからもしかしたら、気にしてくれている人がいるかもしれない。でも不特定多数の人の前で近況を話すのはまだ怖いから。申し訳ないけど、制限を掛けさせてもらった。

 敢えて告知をせず開始したにもかかわらず、何秒と経たずに入ってきてくれたのは、UDさんだった。

『舞音くん、こんばんは』
「UDさんこんばんは。見に来てくれてありがとうございます」
『元気でしたか?』
「はい、元気でした! すみません、ちょっと色々あって」
『心配してました』
「あ……すみません」
『顔が見られてよかった』

 UDさん、なんて優しい人なんだろう。初見ですといってライブ配信を見に来てくれてから、ほぼ毎回見てくれていて、こうして声を掛けてくれる。UDさんの優しさに触れたら、抑えていた感情の波が押し寄せてきて、喉が詰まる。涙腺を刺激されて、涙が込み上げてくる。

『大丈夫? どうしたの?』
「すみません。なんか……ごめんなさい、おかしいな……久々に顔見せるから、笑顔でいなきゃと思ったのに……へへ」

 目の端に滲んでしまった涙を親指で拭う。震えてしまう声で笑いながら、なけなしの笑顔を作ってみせた。

『無理して笑わなくていいよ。気を遣わないで、君らしくいて』
「っ……はい。ありがとう……」

 視聴人数が、ゆっくり伸びていく。そのうちコメント欄で挨拶をしてくれる人も増えていき、いつものようにUDさんは見る専に回ったみたいだった。

「こんばんは~みんな」
『通知に気付いて飛んできました!』
「あ、ほんと? 気付いてくれてありがとう」
『マオトくん久しぶり!』
「うん、久しぶり。みんなごめんね? こんなに期間空くつもりじゃなかったんだけど」
『何かあったんですか? 目が赤い』
『メン限配信、ありがとう!』
『マオトの顔が見られてうれしい~』
「俺もみんなに会えて嬉しいよ。更新止まっちゃっててごめんね」

 みんなが、スタンプやコメント、アニメーションのギフトでたくさん気持ちを送ってくれる。
 俺、こんなにも優しい人たちに見守ってもらえてるんだ……
 そう思ったら、また目頭が熱くなってきた。

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