踊るキミを見ていたい

朝賀 悠月

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13・雄代くんと地元で過ごした日のこと

雄代くんは友情。俺は、恋。

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「あ……っじゃあさ、そっちで部屋探すよ! そしたら、前みたいになれないかな?」

 俺の提案に、驚いた顔をする。けれどすぐに不服そうな顔をして、口を尖らせた。

「んー。……じゃあせめて、一緒に部屋探しさせてもらってもいい?」
「もちろん。その方が心強い」

 そう言うと雄代くんの表情は一変し、嬉しそうな笑みを浮かべる。

「ありがと」
「俺の方こそ。ありがとう、雄代くん」


 布団に潜って、俺たちはいろんな話をした。
 離れている間のことや、俺が配信で言ってきたこと。雄代くんの話をし過ぎたことについても触れられて「舞音って俺のこと好きだよね」なんて軽い口調で言いながらクスクスと笑われた。

「す、好きだよ? ダンスも振り付けも最高だもん。リスペクトしてる」

 それ以上の気持ちがあることは、言わない。

「雄代くんだって俺のこと好きじゃん。こんな山の中まで会いに来るなんてさ」
「だねー。なんでだろ。俺、今までわりとそういうの平気なタイプでさ、誰かが引っ越すとか卒業のタイミングとかでいなくなっても、『あ、そうなんだ』くらいだったんだけど……なんだろね、めちゃくちゃ焦った」

 俺が出て行った日のことを思い出したのだろうか。
 仰向けで天井を見ながら話す雄代くんを見ていたら、ふいに口元を腕で隠しながら、フッと小さく笑う。

「あとで自分が送ったメッセージ見返したら、どこにいる? とか実家? とか。そうだよ、つってんのにさ」
「うん」
「どうやったら、何をしたら、舞音は帰って来てくれるんだろうってめちゃくちゃ考えたけど、俺と話したくないならとにかく、今は見守るしかできないなって思って。絶対配信は逃さないぞって意気込んでた」

 言われてみればそうだ。こっちに来て久しぶりに配信をした日、一番に来てコメントで話し掛けてくれたのは、UDさんだった。

「そうだよ、俺ほんとビックリしたんだから」
「ごめん。いつかは明かそうと思ってたんだけど……結局あのタイミングになっちゃった」
「俺、知らずにすんごい語ってて、恥ずかしいんですけど」
「ん、でも、俺は嬉しかったよ。めちゃくちゃ」

 ずっと天井を見てたのに、突然俺に顔を向けて微笑む。
 そんな不意を突かれてしまったから、ドキンと心臓が飛び跳ねて、一気に顔が熱くなる。

「……ずるい」

 部屋の電気、豆電球にしといてよかった。

「普段コメントなんかすることないんだけどね。なんでだろ、ほんと。舞音と出会ってから、自分でもビックリするようなことしてる」

 自嘲するようなことを言って、雄代くんが笑う。そう言われて俺は、なんて返したらいいんだろう。正解が思い浮かばない。ただ、鼓動が自分の耳にまで響いてきて、細く息を吐けば無意識に鼻がツンと痛くなる。目頭も、熱い。

「……大好きじゃん、俺のこと」
「はは、そうだね」

 さっきとは違う声色。優しくて、穏やかな。ねぇ今、どんな顔してるの?

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