1 / 8
1:
しおりを挟む「くっ!何てことだ…」
曇天のなか、突如村を襲ってきた醜悪なゴブリンの群れ。
対して戦い慣れしていない村の自警団は半壊、エマの村の教会に籠城する村人達。
神像に祈る僕の「推し」である銀髪の神官セシリアを背にかばい、入り口を守る僕。
僕は剣道の心得がある、年の割には長身の、学生服姿を着こんだ高校の3年生の秋乃月冬人(あきのつきふゆと)
戦死した自警団の長剣を拾って僕はゴブリンに応戦する。僕は前の世界では剣道をしていたが、実際に刃の付いた剣を振るうのは初めてだ。
相手の身を剣で斬る嫌な感触と共にゴブリンを3匹も倒すと、返り血にまみれになり、朦朧と立ち眩みを起こす。
(せっかく、念願のゲーム世界にこれたのに「推し」の彼女にも会えたのに、むざむざと死ねるか!)
僕は、無謀にもゴブリンの群れに突撃を敢行した。勝算などない。ただ、このゴブリン達を殺さなければ、僕も推しの彼女も助からない。僕は、狂乱したように縦横に長剣を振るった。
…ザシュッ!ズシャッ!
僕はゴブリンを次々と倒す。その返り血を浴びる僕は、正気を半分失っているが、彼女を守る想いがかろうじて僕を発狂からつなぎとめている。
「この娘は、いずれこの世界での、最強のキャラになるんだ…。こんなところで死なせはしない!」
(:クラスチェンジ:「冬人」は「ノーマル」→「バーサーカー」になりました)
何かシステムボイス風の音声が頭を流れて、僕は赤い光に包まれる。すると斬撃の速度は加速し、剣を握る両手には力が沸き起こる。
(力が、みなぎる…。何故だか分からないけど、これならいける!)
「ウォォォォ!」
僕が雄たけびを挙げつつ朦朧とした狂乱の意識の中で剣を振るい続けると、いつの間にか、20体はいたゴブリンは僕の剣に倒れて壊滅していた…。
★
「ご助勢、感謝します。あなたをこの無情な世界に召喚したのはこの私。それについてはいかなる責任でも負いましょう」
曇天の晴れた後の夕焼けがにじむこの村の教会の前で、銀縁の眼鏡をかけた、銀髪に水色の瞳のこの大人しい知的美人の神官、セシリアが目を伏せて悲し気に僕に言う。
「君のせいでは決してない。この世界に来るのを、心のどこかで待ち望んでいたのもこの僕だ。責任を言うなら、僕と一緒に「魔帝」を倒す旅にでてくれないか」
彼女セシリアは僕のこの誘いに小さくうなずく。この娘は僕のしていたゲーム内での「推しキャラ」だが、彼女はそんなことを知る由もない。
この返事は「異世界の一般人」を、召喚してここの戦乱に巻き込んだ、その義務感から来るものだと、僕には感じられた。
「…分かりました。この『雷の神官』セシリアが、あなたの力になりましょう」
白い教会の扉の前で、さらりとした銀髪をゆるやかな風になびかせる彼女は、純白の神官服を着ていて、パリパリと帯電した銀の杖を持ち、夕焼けの日が差す中、僕に仲間入りを宣言する。
(:仲間編成:セシリアが仲間になりました)
システムボイス風の音声が僕の頭の中に流れる。ここのナビかなにかのようだが、どこの誰のものなのかもはっきりしない。これに関しては、僕は気にしない事にしている。
「これ以上、ここに留まるのは危険だ。翌朝には、警備の厳重な他の街にみんなで移動しよう」
魔物達がまた攻めてくるかもしれないので、僕の言でこのエマの村は翌朝には破棄されることとなり、生き残りの村人達は北のレダの街を目指す事となる。
…ともあれ、僕は村の教会で召喚主である彼女を保護して仲間にして、いずれはこのゲームの目的である「魔帝」を倒す為の旅に出る。
…まずは、ここの村人たちを、きちんと安全な所に送ってからだけどね…。
0
あなたにおすすめの小説
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました
黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」
ブラック企業で過労死した俺、相川大地。
女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!?
右も左もわからない荒野でのサバイバル。
だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに!
美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。
これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。
農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる