ゲームでの「推しキャラ」に召喚されました-ゲーム世界で推しと一緒にクラスチェンジ-

夢月 愁

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 平穏であったエマの村に突如押し寄せた、醜悪なゴブリン達を相手にして、決死の戦闘でクラスが「バーサーカー」になっている僕、秋乃月冬人(あきのつきふゆと)

 さすがに、ゴブリンの返り血まみれの学生服姿のままとはいかないので、自警団の生き残りの青年に、緑色の平服と茶色い革鎧を譲ってもらい、腰には長剣を帯剣した。ちょっとした、流れの剣士のような風体である。

 「似合っていますよ。ところであなたのステータス、興味があります。一度見せて頂けませんか?」

 外は夜の帳が降りたエマの村の教会の談話室で緑色の聖帽子に純白の神官服姿のセシリアが好奇心からかそう聞いてくる。

 「そうだね。それは僕も興味があるかな。出し方は…こうでいいの?」

 この世界でもステータスウィンドウが出せるとセシリアに教わり、僕は早速言われた通りに右手をかざして念じた。半透明なウィンドウボードが出現する。

 :冬人:(バーサーカーLV3)

 :力12:技8:速8:運:7:防:7:魔防5:

 :剣B:槍C:斧B:弓C:聖-:魔-:イレギュラー属性:


 そのステータスを見てみると、LVの割には能力は戦士系としてまずまずのものになっていた。

 …イレギュラー属性というのは気にはなるが、元々はここの住人ではないということだろうと納得をした。

 そしてセシリアの話では、ここにはセーブポイントも死に戻りでの復活もないという。

 (そうなると、さっきのゴブリン戦みたいな無茶はそうそうできないな…)

 そうして、この日はこの教会の空き部屋で休むこととなった。戦闘の疲れがどっと出て、僕はこの部屋の簡素な寝台で、泥のような眠りについた…。

 …次の日の早朝になると、起きた僕らはエマの村に住んでいた村人たちの生き残りを、北のレダの町に護衛しながら誘導する。

 「移り住みたくない」という老人もいたが、村の住人と共に、根気よく説得して応じさせた。

 …ここに残していくのは、怪物の襲撃から見殺しにするようで嫌だったからだ。

 レダの街は、割合と近くであったので、住民を護衛して辿り着くのに数日かかったが、さしたる困難はなかった。

 はぐれのゴブリンと数度遭遇したが、僕の剣技とセシリア雷の魔法で難なく撃退をした。

                    ★

 レダの町は、木造の家屋の多いエマの村と違いその多くがレンガ造りだ。自警団の質も高く、多少強めの怪物がでても軽く撃退できるだろう。治安も良さそうで、ここにならエマの村の人々も大丈夫だと僕は安堵もした。

 「では、この村人たちをよろしくお願いします」

 村の人々を、レダの町の自警団の人達に任せると、僕とセシリアは真昼の陽光の暖かな北の草原で至極安全にスライム相手にLVあげに入った。

 「名作も、入ってみると、デスゲーム」か…。

 「……先に行きますよ。『サンダー』!」

 韻を踏んでみるが、こんな冗談が真面目なセシリアに通じるはずもなく、軽くスルーされると彼女は雷の魔法で草原のスライムを倒し始めた。僕も慌てて長剣でスライム狩りに加わり、その狩りは夕方まで続いた。

 「く~、随分狩ったけど、ブルースライムあいてじゃあ、こんなところか」

 …ブルースライム狩り位で、そうそうLVは上がらない。レダの町の北の草原で昼から夕方まで二人で狩りに狩って、ようやく僕のLVが1つ上がる程度だった。大したダメージもなく、セシリアのヒール1回で僕のHPは全快した。

 セシリアは戦闘でずれた銀縁眼鏡を手で整えると、澄んだ水色の瞳で僕をみつめてそれは穏やかに優しく微笑んだ。
 …彼女が「推し」の僕にとっては、それは天使の微笑みのようにも見えた。

 「大丈夫ですよ。たとえ多少効率が悪くても、継続すれば成果はでます。それに、無理して焦って死んでは何にもならないですから」

 …そう、ここはゲームのような世界。EXPが低くても、塵も積もればで努力が反映される世界だ。

 …だが、同時に死んでも生き返れないデスゲームの世界でもある。
 
 「…そうだね。今日はこの位にしておこうか」

 夕日も落ちようかという切りのいい所で、スライム狩りを終えようとした僕とセシリア。

 …しかし、この世界は、はいそうですかとこの狩りを終わらせる程に甘くはなかった。

 「魔帝の害になりうる者に死を…」

 …魔帝の配下の刺客が、どこからか、僕らの前に現れたのだ。

                    ★

 刺客は、ミイラのように、包帯でぐるぐる巻きの男が長剣を持った姿だった。

 「…魔帝の害になりうる者に死を…」

 繰り返しそういって、やや緩慢な動きで斬りこんでくる。僕はすんでのところで半身でこれを躱す。

 動きは鈍いが、その斬撃には重みがあり、当たるとただでは済まないのは明らかだった。

 (こいつは、確か魔帝の配下のアンデッド「レギオス」だったか…?)

 僕が、長剣を抜いて反撃を試みると、刺客のミイラの赤い眼と目があった。

 (しまった。確かコイツの特殊スキルは…)

 僕がきづいた時には遅く、刺客のミイラの赤い眼が光ると、僕は体中が痺れて動けなくなる。魔族の刺客「レギオス」の「麻痺の眼光」だった。

 「この者に、死を…」

 急な麻痺で片膝をついて動けない僕に、刺客のミイラが剣を振り下ろそうとする。セシリアの雷の魔法も微妙に間に合わない。

 (そんな…こんなに簡単に終わるのか…僕は…)

 「…危ない!」

 カキィン!

 僕が半ば観念したそのときに、その男は鋭い声と共に割って入った。この、どこか聞き覚えのある声は…。

 「大丈夫か、加勢する!」

 割って入って刺客「レギオス」の剣を、柄に宝石の入った光り輝く剣で止めてくれたのは、このゲーム世界の主人公である金髪碧眼の凄腕美剣士、初期能力水準もパーフェクトの「エルオード王子」その人であった…。



                    

 


 
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