こんな破廉恥な悪役令嬢が出てくるゲームって何?!

高瀬ゆみ

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18.アメリと反省文

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 アメリが魔具『ペッタンくん』で引き起こした騒動のせいで、放課後、私とアメリは教室に残り反省文を書かされていた。
 後から聞いた話によると、『ペッタンくん』を発動したときに発生した磁場は学校全域に及び、学校にいた全員がしばらくの間動けなくなるという事態に陥ったらしい。

 ……恐ろしい……彼女の能力が恐ろしすぎる。

 事の首謀者であるアメリは先生方から大いに怒られ、今は反省文作成の真っ最中だ。

 それにしても、何故、被害者である私まで反省文を書かなければならないのか。
 アメリのすぐ近くにいたのにその暴走を止められなかったからだと説明を受けたが、不本意この上ない。

「ジェシカ様……私、今回はとっても反省したんです」
「そう。ならその気持ちを文にしてさっさと反省文を完成させなさいな。わたくしに言わなくて結構よ」
「『ペッタンくん』を使って強制的にくっつけても、仲良くなれるわけじゃないって。世界平和には繋がらないって」

 ――そっちか! 学校全体に迷惑をかけた件じゃないのか!

「ジェシカ様も、ゴーシュ様と体がくっついても仲良しになってなかったですもんね」
「うっ……」

 アメリの言葉で、嫌なことを思い出してしまった。
 あの一件以来、ゴーシュ様とは全く話していない。もともと頻繁に会話をするような関係ではなかったけれど、あれからますます疎遠になってしまった。
 それどころか近くを通るだけで圧がすごい。睨まれているというよりも威嚇されているような感じ。
 よっぽど『結婚』という単語が地雷だったのだろう。

(いくら私に婚約者がいないからって、誰彼構わず結婚を迫る女だと思われているのかしら)

 失礼極まりないので否定したいところだけれど、今の彼に声を掛けるのは得策ではないだろう。

「……そういえば、貴方の方はどうなの? 殿下や側近の方々と親しくしているようだけれど」
「私ですか?」
「ええ。気になる方でもいるのかしら」

 自然を装いながら、アメリがどのルートに進もうとしているのか確認するために話を振る。
 本音を言えば、自分を破滅に陥れる可能性がある相手と積極的に交流を持ちたくはないのだけれど、情報を得るために仕方ないと自分に言い聞かせる。

 よくある乙女ゲームだと、攻略したい相手の好感度を上げていき、辿り着きたいエンドに向けてルートを絞っていくはずだ。
 中にはハーレムエンドなんてものもあるから気が抜けないけれど、アメリが既に相手を選んでいるのなら、関わらないよう注意することができる。間違ってざまあされることのないよう気を付けないと。

「いえいえ、気になっている人なんていませんよ! 皆さんとても良くしてくれますけど、恋愛的なものは全くないです!」

 ……乙女ゲームでここまで否定される攻略対象者たちも珍しいんじゃないかしら。

 公爵令嬢である私からの制裁が怖くて誤魔化しているのかとも思ったけれど、アメリが嘘をついているようには見えない。

「でも、貴方は在学中に婚約者を見つけなければならないのではないの?」
「そう、なんですけど……でも、今は魔法の勉強が楽しいので、婚約者探しはお休みしてます!」

 ここまで潔く言い切るアメリに、心配を通り越して呆れてしまう。

「まあ……貴方がそれで良いならいいのではなくて」
「はい! 私は、私の魔法で皆さんを幸せにできるよう頑張ります!」
「……少なくとも、今、わたくしが幸せでないのは、貴方のせいよ。アメリ・バーナード!」

 人に反省文を書かせておいて、どの口がそれを言うのか。
 椅子から立ち上がりアメリの頬を片手で掴む。

 ……しまった。怒りのあまり淑女らしからぬ行動を取ってしまった。

 我に返ってアメリの反応を伺う。
 さすがにこれだけのことをされたら嫌がっているだろう。そう思いながらアメリを見ると、むぎゅっと頬を挟まれながら「いひゃいです」と笑っていた。
 怒るどころかむしろ嬉しそうだ。

「な、なんで喜んでるのよ⁉」

 奇怪な反応が薄ら怖くて、慌てて手を放す。
 両手で頬をさすりながらアメリは嬉しそうに言った。

「ジェシカ様がお優しいからです~」
「…………貴方、虐められて喜ぶ趣味があって?」

 人の趣味をとやかく言うつもりはないけれど、ちょっと引いてしまう。
 そんな趣味があるのなら、攻略対象者たちに恋愛感情を持てないのも分かる。刺激が足らないのだろう。
 エドワード殿下もゴーシュ様も、アメリに対して紳士的でとても優しい。あの辛辣なレイス様でさえアメリには甘いのだから、苦痛を喜ぶアメリは物足りなく感じるはずだ。

(でも、誰とも結ばれないまま卒業を迎えたら、アメリはバッドエンドになるんじゃないの?)

 その場合、悪役令嬢ポジションの私はどうなるのだろうか。
 どのルートにも入らないのなら断罪の要素はないと思うのだけれど、ヒロインと道連れにバッドエンドを迎える可能性がないとは言い切れない。理不尽にも程がある。
 それならアメリの好みに当てはまりそうな、サドっ気のある男性を紹介した方が良いのかもしれない。

(容赦がなくて、手厳しくて、でも怖いだけじゃなくて虐めの中にもちゃんと愛がある人……。そんな人、いるかしら)

 うんうんと考え込んだ私を、アメリは両手で頬杖をつきながらニコニコと見つめていた。


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